既に黒猫は、身動きひとつ取る事は出来なくなっていた。意識は朦朧とし、感覚は遠くなっていた。恨む余裕もなく、また悲しむ暇もなく、黒猫は目を閉じた。次に目が覚めたのは、自分が元居た場所だった。傍らには、死んだ自分の遺体が転がっていた。そうして、知る。ああ、自分は死んだのだ、と。ところが、黒猫には身体があった。それも、今までの猫のそれとは違う身体。人間のものだった。訳も分からず歩いていると、黒猫はある人と出会う。黒猫が夢現のうちに関わっていた青年だった。
暴走すると止まらない母、レベッカ。性格がロンパリ気味の娘、ジェニファー。のんびり屋でいつも姉より賢い息子のクリス、ちょっぴり毒舌で悪戯好きな父、ジョージ。アレン家の食卓はいつも元気です。くだらないけれど、一生懸命生きている。五分で読める、『エセ』・アメリカン・ホームコメディー。今日も彼女らは、ニューヨークの『どこか』に住んでいるかもしれません。
そこは、とあるオーロラで観光地として有名な街、『ノルマンスィ』。特別美しいと言われる『クレスィーヴ』と呼ばれるオーロラを観測しに写真家が向かったが、それきり帰って来なくなってしまった。普段は北部地方の救助隊が駆け付けるのだが、その日はたまたま別の救助隊が現れることに。現れた救助隊を名乗る男は、どうにもとびきり変な奴で……
仕事をクビになった帰り道。彼女は、『星を数えている』と話す、不思議な少年と夜の海で出会う。少年は当たり前のようにそこに居るが、何故居るのか、いつから居るのか、細かい事情を何も語らない。そこには、隠された理由があって……
ある時、クラスの男の子から『昔、飼っていた猫に雰囲気が似ている』と言われた。すごいことを言う人だなと内心では思ったけれど、彼の周りに流れている空気はとても穏やかで、ふとすると眠ってしまいそうな心地良さの中に、きっとその猫はいたんだろうということが分かって。こんな場所にずっといられたら良いのに、なんて思うあたしは、やっぱりその猫に似ていたんじゃないかと思った。
廃墟の街で少女は一人、目を覚ました。でも、そこにはもう、誰もいなくて……
全国の幼馴染に憧れる同士よ、聞いてくれ!本当の幼馴染は毎日目覚まし前に起こしになんて来ない、朝食も作りに来ない、病気になっても看病なんてしてくれない、二人きりの時に良いカンジにもならなければ周囲から『夫婦漫才』なんて言われる程会話もない!そんな、ツンデレ風味なのにちっともデレてくれない茎だけの薔薇みたいな幼馴染を持つ俺の所に『神の使い』を名乗る奴から手紙が届いて、意味不明な試練を与えて来やがった!!【一週間後までに、あなたの幼馴染に『べ、別にあんたの為じゃないんだからねっ!』と言わせて下さい。さもなくば……あなたが、豚になります】どうやら神の使いって奴は、余程あいつをツンデレにしたいらしい。今や赤の他人より遠い存在の俺に、一体どうしろと……!!
どうにも最近、この帝国には霊が出没すると噂されているらしい。深夜になると、城門と城とを結ぶ大通りから木組みの家が建ち並ぶ細道までを、硬い牛革のブーツが踵を鳴らす音が聞こえて来ると言うのだ。民家の明かりも消える時間帯、靴音に眠りから覚めた御老人が蝋燭を持って外を確認するが、何時もそこには誰も居ないのだという。英雄と呼ばれた騎士は、夜警中に物音を聞き、駆けつけるが……