「初めまして。こんにちは。私はずっと前からあなたのことが大嫌いです」交通事故現場で出くわした少女に、開口一番そんな言葉を浴びせられた大学生の都大樹(みやこ たいき)。続けて彼女は、数本の花を差し出しこう告げる。「被害者を救いたければ、この花を供えてください」少女の言葉通り花を供えた途端、視界に紫色の花びらが舞い……気付けばそこは、数分前の事故現場だった。ひとりの少女と花をめぐる、救済と別れの物語。こんにちは! 初めまして。前回『赤と銀のリード』を書かせてもらい、今回で二作目となります。前作は一気に完結まで書いてしまったので、今回は連載形式を取ろうと思いました。皆さんの関心を少しでも得ることができればうれしいなと思います。それでは、どうぞよろしくお願いします。
中学校では誰もが噂する女の子だった。高校生の頃は地域で一番の美少女になった。大学では4年間で90人から告白された。そんな私は、今。「…………」駅からもコンビニからも遠いアパートで、グータラとフリーターをやっている。顔で評価される世間に嫌気が差し部屋に引きこもった私を両親は許さず、家から追い出され泣く泣く一人暮らし。深夜のドーナツ屋でバイトをしているおかげで目覚めるのはいつも夕暮れ時。過ぎ去る日々はひたすらぐーたら。これはこれでいいかも、と、思っていた。「初めましてっ。隣に越してきました、紀田 健太郎です!」そんな私は、出会ってしまった。コミュニケーション能力と男子力と女子力を限界値まで極振りした最強のお人好しと。彼と、彼を取り巻く不思議なわかもの達との出会いは、私の人生を、ささやかに、ゆっくりと、変化させていく。