「ナギのアホっ!起こしたげるとか言ってナギも寝ちゃったんでしょ!」「寝とらん!起きてたが!」「なら何でこんな山ん中に来ちゃってるんよ!」「携帯のゲームが面白ぉてな。そいで気がついたら…」「ドアホーっ!おまけにそれ私の携帯な!勝手に使うな!」「落としたの拾ったげたんよ!『ありがとう』は?」「……………」 真冬の夜、津山の街までボランティアに行った帰りの汽車。ナギにすすめられるまま一眠りして、揺り起こされたら見たこともない山の中だった。 とりあえず次の駅で降りて家に電話しようとしたら、ナギがゲームやったせいで電池切れ。まわりに何もない山奥の無人駅は、ナギが待合室のドアを壊したせいで氷のように寒い。そして戻る汽車は来る気配すらない…。「なあ!山の向こうまで線路歩いて、おばあちゃん家に行こ!」「はぁ?!」 ナギが言うには、一つ先の駅…長いトンネルで山を越えた向こうに祖母の家があるという。 けどだからって、なんでそんなムチャな… でも、たしかにココにいても凍え死ぬばかりで、そして他にアテはない…。 大冒険、疑惑、衝撃、そして静かな感動が待つ、幼なじみの少女二人のドタバタ珍道中。
「ホンマにウチだけ、受かっちゃってええん?」。高三の秋。大学のAO入試を控えたウチは面接練習に励むも、大事な質問でヘマを繰り返す。思い浮かぶ深雪ちゃんの顔や足音が、ウチの調子を狂わせていた。 まわりが推薦やAO入試などで簡単に進学先を決めていく中、一人ぼっちで一般入試の勉強を続ける深雪ちゃん。そんな深雪ちゃんを置いて、ウチまでサッサと大学を決めちゃってええん? …聞きたいけど、恐くて聞けない。そして、その彼女をめぐって生じる新たな疑惑…今時の受験事情を背景に、今時の「友達との距離」を笑い&腐女子ネタとともに描く短編。