亀の恩返し

18.太郎に帰ろうと言う。






















私は太郎さんの説得を試みた。



太郎さんが喜んでくれるのは嬉しい。

ここにいれば
何年でも何十年でも
面白おかしく暮らしていられる。



朝から晩まで働く必要もない。



でも

太郎さん、母君が心配なさっています
もう1年も帰っていないので行方不明扱いになっています



村人たちの間で
「太郎は行方不明になった」ことに
なっていることを知った。


太郎の年老いた母が
弱った足腰で毎日浜まで
探しに来ていると聞いた。

帰りましょう! 太郎さん

帰るってぇ~
連れて来たのはお前さんだろぉ


毎日、毎日、浴びるように酒を飲み
好きな時に食べ、好きな時に眠る
そして傍らには美女


太郎はすっかり
府抜けてしまっていた。

勝手に連れて来といて気が済んだから帰れってぇのは酷いんじゃねぇの?

ほほ、そうですわよね
太郎様

へっへ~
乙姫ちゃんの膝枕~

あら太郎様ったら、お休みになるなら閨(ねや)に……

真っ昼間っからえっちだなぁ

太郎さん!

太郎さん! 待ってください!

……





































これではいけない。

私はぼんやりと空を見上げた。






太郎さんが喜んでくれるのは
嬉しい。


太郎さんには
楽しく暮らしてもらいたい。


竜宮城にいれば
そのどちらも叶う。










……なのに



私は……太郎さんの幸せを喜んでいない

何故……
















そんなのきまってるじゃない。妬いてるんでしょ

妬く?


突然聞こえた声に
私はあたりを見回した。


鏡のように静かな海のとある一ヶ所から
ポコポコと白い泡が見える。




それは徐々に大きくなると

 と音を立てて噴き上がった。








で、魔女の薬の出番ってわけ。そう思わない?


何時から見ていたのだろう。
私は魔女を見上げた。

……魔女さん

世界にたったひとつ、ただ1度だけ願いを叶えてくれる魔女の秘薬。
使うのは? 今でしょ!

そのかわり……わかってるでしょうけどお代はカメの齢(よわい)


月を背に魔女は笑う。














A.魔女の薬を持っていますか?
  使いますか?

B.魔女の薬を持っていますか?
  使いませんか?

C.魔女の薬を持っていない。

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