亀の恩返し

7.薬を使わない。


























薬。
魔女の秘薬。

なんでも願いをひとつだけ
叶えてくれると言う。


その薬は今、私の手の中にある。





でも










それは本当に効くのかい?

誰も使っていないからここにあるんだろう?





太郎さんの言葉が耳によみがえる。


そう。
この薬は本当に魔女が言うほど
良いものなのだろうか。



効果があるのなら、
この魔女が
量産して売りさばかないはずがない。

自分で使わないはずもない。


薬は……使いません

……

愚かな……


魔女はそう言い捨てると

波間に消えて行った。


















これでよかったんだ。
私は月に思う。







あんな効果のほどもわからない薬に
命をかけるなんて馬鹿げてる。




魔女も太郎さんの言葉を
憶えていたのだろう。

ああは言ったけれど
私が薬を使わないとわかって
いたのかもしれない。











でも





これで本当によかったのだろうか。




事態は全く進展していない。
私はどうしたらいいのだろう。















私は




私は











だから見栄を張らずに使えるものは使えって言うのよ


私の前に、また魔女が現れた。

あなたには関係ないことです。何度来たって薬は、

薬を売りに来たんじゃないわ

別の提案を持って来たの。現状を打破する提案を









































その日、地響きのような大音響が
竜宮城を揺るがした。

敵襲――っ!!


鳴り止まぬ銃声。
崩れていく天井や壁。

突然の来襲に、誰もが
慌てふためいて逃げ惑うしかできない。


なにごとじゃ!!

お逃げ下さい乙姫様! この城はもう、落ち……

ぐはっ!!

そこまでだ!!








な、なんと……


それは見たこともない巨大な
ロボットだった。



1機のロボットは乙姫に
照準を合わせている。

そして残り2機は竜宮城を
破壊している。

なにをするのじゃ! わらわの城が!!

ふん、あんたの独裁政治は終わったのよ! 強いものこそが王に相応しい!!

その声は! 海の魔女!!

ほほほ、さらば!


























































こうして乙姫を倒した海の魔女は
新たな海の王となった。

さすがね! 私が見込んだことはあるわ

怒り、憎しみ、命を捨てる覚悟。そんなものは上手く使えば素晴らしいパワーになる


私たちは魔女が密かに開発した
ODR(※)と呼ばれるロボットに乗って
竜宮城を制圧したのだ。

  ※ODR
    OTOHIME(乙姫)DATOU(打倒)
    ROBOT(ロボット)の頭文字を取ったもの。
    対竜宮城戦略兵器。     
    零号機、初号機、弐号機が実戦配備されている。



     

あんたならやれる、そう思ったわ!

で、これからどうするの?

……


騒ぎに乗じて太郎さんは地上へ返した。





私があのロボットに乗っていたことは
太郎さんは知らないけれど


乙姫様を倒したロボットたちを
最後まで敵だと言っていたらしい
太郎さんに

私は、会わせる顔などない。

あたしと一緒に来ない? まだ乙姫派の残党は残ってる

……ええ

行きましょう



さようなら太郎さん。





私はこれから
私の道を歩いていきます――。


















- おわり -

もう1度読む?

pagetop