限られた赤き命はこの蝋燭。ほぼ間違いないと思っていた面々は、赤の魔導士の反応のなさに面食らっていた。何かが足りないのだろうか。



 沈黙で座して待つ赤の魔導士に答えを出せないでいる四人。もう一度様々な手掛かりを考え直し、何よりも赤の魔導士の問い、限りある命――この言葉に着目した。しばらくするとヤマノが目の覚める一言を洩らす。


「限られた赤き命とは蝋燭じゃなくて、火そのものじゃないか?」

 言葉を聞くなり、全員が間違いないと感心したが、今ここに居る誰も点火する物を所持していなかった。

 階段から現れたのは河岡とリンと竜喜だった。
 河岡の手には、目を疑うような青き炎が立ち上がり燃え盛っている。直前の話が聞こえていたのか、その青き炎で赤き蝋燭に火を灯した。

 赤き蝋燭から力強く火が立った。



 赤の魔導士は玉座から立ち上がり、火の点いた赤き蝋燭を両手で受け取った。そして振り返り、背を向けながら言った。



「ふっ。命の灯し方も一葉でないな……。それに終わりに行き着くまでにも、燃え、揺らぎ、瞬く。それは美しくも醜いそなた等人間そのもの。最後の選択に応える権利ある者ということ」



 赤の魔導士がそう言い終えると、優の目の前の空間に突然鍵束が現れて、手の中に落下した。

 ⇒ ●鉄格子の鍵束を入手した。



 赤の魔導士はやおら玉座に座り、誰に言うでもなく呟いた。

「この館を出る者の命も、犠牲になる者の命も、儚いもの。我はこの座でそれを見守るとしよう」

 四つ目の鐘の音が鳴る中、赤の魔導士に背を向ける。この鍵はもはやあの鉄格子に使う以外ない。

 不安がないわけではい。
 しかし兎にも角にも行き先が明確になった。おそらくは脱出口があるのだろう。全員で情報を共有し、脱出の手掛かりを調査し協力してきた結果だ。
 あの最奥の牢獄の先へ向け足取りを合わせ進んだ。

 ジャラ。優は三本重なった鍵の束を取り出した。1本目の鍵は、そもそも鍵穴に入らない。鍵穴に入った2本目だが、左右どちらにも回らなかった。

 まだ一本の鍵があるのに、少し不穏な空気が流れる。アスカは大丈夫だと声を出し、はやる心を落ち着かせようとしている。そして最後の1本。

バチン!

 鍵穴に吸い込まれるように入った途端、殆ど力を入れていない筈なのにバチンと半回転した。



 中に入るとやはり外から見えたように、人間一人が入れるほどの穴が開けられていた。ドウサンは視界の利かないその穴に少し足がすくんだ。この牢屋ではろくでもないことばかり起こっているから仕方がないだろう。

 夜目の利くリンがしゃがみ込んで覗いて見ても先は全く見えない。だが早くこの館から脱出しなければ命の保障はないのだ。

 竜喜は大きく息を吸い込み、そして吐く。皆の顔を見回してから、最初に行くと意を決め、冷たい床に膝をつき、手の平をつき、肘をついた。

 ここを抜ければ脱出できる。そう信じて竜喜は進んだ。穴はそれほど長いものではなく、ものの30秒も進んだところで向こう側に着いた。



 転がり込むように入ったがリンと同じく夜目の利く竜喜でも殆ど何も見えない。不安が胸の内を支配しそうになる。しかし目が暗闇に慣れてきたようだ。僅かに部屋の中の構造が見えてきた。





 人間の慎重以上の何かが壁際に屹立している。

「人か!?」

 次に入ってきたリンがそう言うが、すぐにそうでないと竜喜は知った。屹立するその最上部には、人間の頭を形どっていたのだ。だが完全に慣れぬ目に写ったのは、翼を広げたような姿だ。そして部屋のどこからか僅かな生暖かい風が首筋を掠めた。その風に乗ってきたのか、鼻をくすぐったのは冷たい鉄の香りだった。

 完全に慣れてきた目がとらえたのは、血をしたためたアイアンメイデン――鉄の乙女だった。




「何も見えねぇ。おい出口はあったか?」

 次々とこの暗闇の部屋へ入ってきているようだが、今、鉄の乙女が見えているのは、リンと竜喜だけだった。



「見付けた……」
「ああ……誰かが言ってた最後の選択の方だけどな」

 全員がこの鉄の乙女の部屋に集まった。

 僅かな光がどこからかあるのか、目が慣れるとお互いの顔が視認出来るし、状況もわかる。どうやらこの部屋にはこの鉄の乙女しかないようだ。だが脱出の為の手掛かりは必ずある。

 今迄そうしてきたように、全員で協力すれば必ず脱出は出来る。その思いで、今迄の手掛かりを整理する事にした。

青の邪神
『そして選ばなければならぬ』
『善悪に悩む必要はない』

赤の魔導士
『この館を出る者の命も、
犠牲になる者の命も、儚いもの』

黒の司祭
『最後の選択に出会いし時、
乙女と結ばれる者に渡しなさい』

白の処刑人
『自分は無情にもその友人を手に掛けた。
間に合わなかった。
善悪に迷い苦しみ抜いた末、
その道を選んだ』

 青の邪神が言う『選ばなければならない』はこの鉄の乙女に入る者のこと。赤の魔導士が言い残した『犠牲になる者』という言葉がそれを示唆している。そしてその者に『乙女と結ばれる者に渡しなさい』だ。黒の司祭から渡された鉄の指輪を、犠牲になる者に渡せってこと。

 その犠牲者を皆で選べってことか…………
 ついでに言うと、その選択は『善悪に悩む必要はない』ってことだ。白の処刑人の友人はその善悪に悩み、結局、何か――おそらく時間に間に合わず友人に殺される事を選んだという事。


 誰もその推測を否定することは出来なかった。だが本当にそんな事をして脱出できるのだろうか……

 五つの鐘だ。
 もう全員分かっていた。鐘は等間隔で鳴っているものではない。明らかにその間隔を短くしている。つまり最後を知らせる次の鐘はもういつ鳴ってもおかしくないということだ。

 その意味を知る全員の額に汗が走る。血の香りが鼻を突き上げてきて鼓動が速くなる。目の前に屹立する鉄の乙女の恐ろしさに身がすくむ。



 その時!!



 最初からこの場にいたかのように白の処刑人が立っていたことに気付く。

「時間がない。既に察しておろうが一人選べ。どうしても選べぬのなら賽でも振って決めろ」

 これほどサイコロが似つかわしくないシュチュエーションがあるだろうか。いや、遊び道具でなく、我が身を賭けるギャンブルの道具と考えればその逆だ。これほど相応しい物はない。


 だが、これは話し合いで決着がつかなかった場合の選択肢。話し合い如何によっては、一人を選ばないという選択もあるだろう。


 そして白の処刑人の言葉は、先ほど全員で推測した内容が正しいものと裏付けるものだ。この館は不可解なことも沢山あったが、それらしいヒントや道筋は裏切ることなく、言い換えれば公正というイメージがある。今、裏付けられた『一人を選ぶ』という行為に嘘もないだろう。

 全員に出来ることは、話合って何かを決めるしか出来ないのだ。

 さて、本文のまま、今からコメント欄にて
『乙女と一緒になるのは誰か?』
という名の部外者に言えば、完璧勘違いされる議題の話合いを行います。


 本文にあるように、
 ・一人選ぶ
 ・選ばない
 ・サイコロを振って一人を選ぶ


 など、もちろんそれ以外の自由な選択もO.K.。サイコロを選択する場合だけ、各自がそのコメントで振ったことが分かる発言をお願いします(幾つ振るかも、どうゆう選ばれ方をするのかも自由。高い人? 低い人?)。
 なんにせよ、ここからの行動を自分達で決めてもらいます。そして一人を任意に選ぶ場合は、どこかで、ヤマノが鉄の指輪をその者に渡すと宣言してください。


 最低限選べない内容は
 ・隠し牢の方へ出る事は不可
 ・壁を削るなど
 ・センス・アイテムの使用禁止
 ・白の処刑人に話し掛けたり、襲い掛かったりする行動
 ・あとは、物語の雰囲気を壊したり、突拍子もない意見などは、ナンチャイが粉砕しますw


 あれ? それなら上の三つしかなくね? って感じですが、一応自由形式です(考えればまだあるはずです)。



 一応、恥ずかしいかもしれませんが、自キャラになりきってやる方が楽しいかもしれません(これは非強要。今迄、ナンチャイが勝手に口調とか書いてますが、無視して頂いても結構です)。しかし、雰囲気は緊迫していると考えてください。あまりにもチャラいと興が削がれます。



 そしてこの話し合いを盛り上げる為、コメントしまくって欲しいのですが、時間を合わせてやれば盛り上がりそうと考えました。

 リアルの時間が噛み合わないこともあるでしょうから、取り敢えずはナンチャイが勝手に決めた時間を報告します。

  2/23(火) 21時 及び 23時
  2/24(水) 22時
  2/25(木) 22時

 もちろんそれ以外のコメントもありで、最終期限は2/24の24時とします。

 途中で、自分達で追加してもいいですし、満場一致なら途中で答えを出して頂いても結構です。






 それではこのお話のラストシーンと言える話合いをお楽しみください。

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