優樹龍真(ユウキリュウマ)は普通の高校生だった。普通の家庭で育ち、変化のない日常を送る毎日だった。こんな平凡すぎる世界では力(ギフト)を使うことは無いのだろうと心の何処かでくすぶっていた。

 力(ギフト)とは俺が物心つく頃に使えるようになった超能力みたいなもので、使いこなせるのに十年もかかった。力(ギフト)を使えるようになるまで手を貸してくれた爺さんには感謝しないとな。

 しかし、神様とは理不尽だ。普通に過ごしていた俺はあっけなく死んでしまった。でも悔いはない。クラスメイトをテロリストから守れたからな。

 力(ギフト)を使ったことを爺さんに謝れないことが心に刺さる。それと、好きだった女子に告白も出来てない事も、本当に神様は理不尽だ。

 薄れゆく意識の中で声が囁く。

謎の男

悔しいか

優樹龍真

誰だ

謎の男

その力(ギフト)はこの世界には適さない

優樹龍真

何故、それを知っている

省略

 目覚めると俺はスマートフォンになっていた。

優樹龍真

やれやれ、俺はスマホになっているのか

優樹龍真

やれやれ転生ならもっとましな物があるだろう

リリナ

ゴミが喋ってる


 声からして女の子だった。助かった拾ってもらおう。しかし、ゴミとは酷いな。

優樹龍真

ゴミとは何だ。俺には優樹龍真と言う名前があるんだぞ

リリナ

ひぃ、ごめんなさい

優樹龍真

ん? 酷く怯えているな

優樹龍真

すまん、言い過ぎた。すまないが俺を拾って、顔を見せてくれ

リリナ

はい


 拾われて女の子の顔がカメラ越しに写った。外見は人間だがその子には獣の耳が付いていた。獣人だったのか、それにしては服がボロボロだが。

優樹龍真

おお!! 可愛い。獣人なのか? 名前は何て言うんだ?

リリナ

えっ、可愛いなんて、名前はありません。奴隷なので

優樹龍真

……奴隷ね

 許せないな。この国の価値観って奴は――

省略

優樹龍真

ふう、こんなもんか

ララン

強い、もしかして、この方なら

 モンスターに襲われていた女性が俺を鋭い目つきで――

省略

優樹龍真

美味いな、このキノコと魚介のスープ

ティーナ

ふふ、この土地で取れたバケキノコとウルトラフィッシュだからな

省略

グラール国王

お願いだ。この国を救ってくれ

優樹龍真

いいけど、俺の作戦にケチをつけるなよ

グラール国王

……わかった

省略

 キンキン カンカン
 キンキン カンカン

 ブン ザックッッッ!!

 龍真が振り下ろした最後の一撃が七界魔王の一人、アザテールを倒した。

優樹龍真

まるで将棋みたいだったよ。アザテール

 しかし、俺が勝てたのはナポレオンや織田信長といった英雄が立てた戦術をスマホで調べてパックただけだ。

 俺に才能があったわけではない。

リリナ

やりましたね。ご主人様

ティーナ

流石、私が見込んだ男だね

ララン

すごいてす。龍真様、あの七界魔王の将軍と呼ばれるアザテールを倒すなんて

兵士

龍真様バンザーイ

兵士

龍真様がアザテールを倒したぞ!

 後ろで俺のことをたたえる大勢の声が聞こえる。やれやれ、俺は大したことはしていないのに、アイツらときたら。まあ、今は喜んでおこう。

 バッテリーが切れたのか龍真はスマートフォンの姿に戻る。やはり人型を維持するのはかなりのバッテリーを使うらしい。

 これは改善しないと残りの魔王との闘いで敗れるかもしれないな。

 地面に落ちた俺の体を拾おうとリリナとティーナとラランが駆けつけてきた。

ララン

大丈夫ですか龍真様

ティーナ

ちょと、コイツを持って帰るのは妻である私の役目だ

リリナ

駄目。ご主人様を持って帰るのはメイドの私の仕事!

優樹龍真

やれやれ、いい加減にしてくれよ。俺の体は壊れやすいんだ

 誰が持つかでもめ始めた。三人を見て戦いが終わったことを実感した。

省略

省略

省略

男子生徒A

どうよ、俺が書いた小説

男子生徒B

……えっ?

男子生徒A

えっ?

男子生徒A

いやいや、キョトンとされてもよ。感想は感想

男子生徒B

ハッ、感想だと、あるか、そんな物

男子生徒B

お前が書いた小説は小説だが、ゲロを吐きそうだった

男子生徒B

褒めるところが最後まで小説を書いた事だ。しかし、あまりにも酷すぎる。許されるのなら、今すぐにでもお前を殺したい

男子生徒A

おい、言いすぎじゃね。あと、殺さないで下さい

男子生徒A

そんなに駄目か、俺の小説?

男子生徒B

駄目ではない。ただ、テンプレすぎるんだ。全部!

男子生徒A

そうかな?

男子生徒B

お前、これを小説サイトとかに投稿するなよ

男子生徒A

……そうか


 彼は数日後、力作の異世界転生小説を小説サイトに上げたのでした。

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