注意事項

茶番



これは本編ではありません

……なるほど、船の中に100人で、殺人鬼は何人いるか明言されてないのですね?

ああ。2人かもしれないし99人かもしれない

ところで、いつこの船は港に着くのですか?

さあな、特に考えてないが、100人も乗ってるなら恐怖を煽るために10日以上が妥当か。人数が少なければ20日以上は欲しいところだな。
さて、お前ならどうする?

そうですね……

まず殺人鬼を適当に殺して減らします

オイオイどういう了見だ? 説明しろよ
誰が殺人鬼かなんて分からないと言ったばかりだろ?
それとも自分以外皆殺しにする気か?

いいえ

そんな場に乗り合わせているとしたら、「僕」は間違いなく「殺人鬼」。
殺す側です

「殺人鬼以外には、誰が殺人鬼か知ることはできない」……つまり殺人鬼同士なら分かるのでしょう? 他の殺人鬼が
だから殺せます

……なるほど、殺る側か。
まあいいだろう。
で、何故殺人鬼から殺す?

自分の獲物を減らされないためです

毎日、集団からは「降りる5人+殺人鬼に殺される数」の人間が減ります。
殺人鬼の数によっては、船から降りる前に人がいずれ殺せなくなります


殺人鬼が10人なら、最大で

毎日5人離島へ + 毎日10人死亡(夜)

15人いなくなる


初日夜に10人殺された翌日から
無人島への隔離が始まったと考えると

最短7日目朝で 殺人鬼10人 + 一般人5人

途中から殺人鬼同士の殺し合いになり
10日目に殺人鬼1人しか生き残れない可能性もある

しかも、「殺人鬼は、毎夜誰かこっそり殺さなければ死んでしまう」

上の例なら11日目に殺人鬼が死んで無人になって終わりです。

自分が死なないために、港に着くまで人を残しておかなければならないのです

そのためには毎日毎日人数分殺されては不都合。
僕なら、初日に殺人鬼全員を集めてトーナメントを組みますね。殺人鬼同士で殺し合って、生きられる人数だけ残す。無人島に残す5人を選ぶのと同じです

なあるほどな?

もし他全員殺せば、自分が殺されるなんて間抜けな事態も防げますしね

そして、ここで大事なのは、殺人鬼は「無人島に行けば最長5日で死ぬ」ということです

4人しか殺せないので翌日誰も殺せず死にます

……大体分かった。いつ救助が来るか分からない無人島に進んで行く、いや逝く馬鹿な殺人鬼はそうそう居ないって話だな?

はい、ですので、殺人鬼でなかった場合は、おとなしく早めに無人島に行って問題ないはずですよ

自殺志願か馬鹿な殺人鬼だったときは諦めてください

まあ、ゼロではないにしたってリスクが限りなく低くなるのは確かだからな

ただ、殺人鬼が複数いて最終日が近くなってくると、無人島に脱出して5日待つ間に救助が来るのを待った方が殺人鬼と殺し合うよりリスクが低いなんて状況もあるかもしれませんね。なので「早めに」脱出して損はないはずです

……ところで女王様、いつもの話……サスリカの話はなさらなくてよろしいのですか?

いや? これからするつもりだ

それでは、前回どこまで話を進めたか、からお話願いたいのですが。
何故かメモリーエラーが起きて、途中からデータに残っていないのです

へえ?
不思議なこともあるもんだな?
そろそろボロ歯車の変え時なんじゃないか?

女王様が紅茶をお残しになったところまでは覚えているのですが

いったい何があったんだろうなぁ?

閑話休題。
5日目朝、「約束」から始めようか

――DAY 5――

朝、宿屋。
シャルロッタが何か隠していたようだというのは仄めかされていましたが、セミョーンがついに直接聞きましたね

セミョーン(ショーマ)

なあ、あんたは本当に義理堅い女だ。言葉の端々まで逃さないように約束はきっちりと守る

「義理堅い女」ねぇ
人間は面白いことを言うもんだ

セミョーンの言っていた面白いことはそれだけではありませんね

だが、もう守る必要はないんだ
詳しく説明している暇はないが、あんたが言われた『黙っている条件』は崩れた

息子のためにも、俺に教えてくれ。
あんたが交わした約束の内容を、そしてあの紙の意味を

シャルロッタが誰かと結んでいた約束? の特徴が分かりますね

シャルロッタは何かを「黙っている」
それが「約束」の内容だ

そしてその内容には「紙」が関係します
片面にアルセニーの似顔絵、もう片面に助けを求める文字の書かれた例の紙

さらに、その「約束」はアルセニーのためになることらしい

黙っている「条件」は、厳密には守らなくても支障ない状態だったようですね

例えば、「特定の個人に知られたくない」と言われていたとして、その人物が聞く可能性があるうちは他の人にも決して言わない、とかでしょうか?

そういや、あの紙についてついさっきアダムスキーが考察してたな?
リーリヤが、シャルロッタにアルセニーの特徴を聞きながら描いた似顔絵?

こりゃぁどう考えても関係がありそうだなぁ?

そういえばシャルロッタ、数日前からなんだか嬉しそうにしてましたよね?
何かの見返りで良いことがあったんでしょうかね?

人間ってやつぁ顔が見れりゃ生き返ったなんてことも信じちまうらしいな?

そういえばそういえば、手記によればリーリヤにはちょっとした願望があったみたいですね?

……と、白々しく言ったところで次に行きましょうか

そういう余計な一言がプログラムされているのがオマエの要らん機能だ

さて、アダムスキーが「終わらせる」と宣言したわけだ

5日目の朝に、「6日目の昼、樹海の祭壇前で」行うと予告したわけですが……

とことん犯人については言いませんでしたね

余計な邪魔を入れたくないなら、なぜイリヤには言ったのか。それが分からんな

……イリヤは当事者ですから彼の気持ちを汲んで敵を討つところを見せてやりたかったとか
セミョーンとも仲が悪くなっているのでうっかり喋る心配ありませんし……

女王様にはそういう発想はおできにならないのですか?

おい、さりげなくディスるな

それよりもその後だよ!

セミョーンが行方不明、それを追いかけたあの女も失踪ってか?
訳分かんねぇなもう!!

ぎゃははっ

楽しそうですね、女王様

ああ楽しいね、楽しくてたまらないさ!

はるか前に一度だけ、「スポーツマン」の話が出てはいましたね

まあ、どんなところにもこういう方々はいらっしゃるということで。
関係があるかどうかは微妙ですね

いずれにせよ、どうして二人は消えたんだろうな?
「邪魔」だったからか? くくっ

ファイーナは「ついで」かもしれませんが、セミョーンは……
犯人もそうですが、3年前の件でアダムスキーにも恨みを買ってますからね

その夜珍妙な客が宿屋に来たな

客じゃなくて、明らかに犯人ですよね

まあ、顔見てないしな?
可愛い可愛いアルセニー坊だったかもしれないじゃないか?

それは無いとアダムスキーが断じてましたよね?

……まあな

しかし、アダムスキーは襲来を見越していたかのような動きでしたね

そうだな。もしかしたら狙いはアダムスキーだったかもしれないぜ?
朝の宣言がやっぱり誰かに漏れてたとすれば、何かされる前に寝込みの奴を襲いたかったかもしれない

個人を狙うなら窓から狙えば良いのでは?

あのアダムスキーだぞ? 窓くらい何か対策してるだろ。
変な機械を取り付けられていたこともあったしな?

……それもそうですね

――DAY 6――

次は6日目、「始まり」からだな

町人の噂話によると、5日目の夜もアルセニーの姿の犯人は活動していたようですね

まあ、もちろんそうだろうな。犯人が何を考えてるにしろ、たった一日で終わらせたんじゃ「アルセニー犯人説」を推せなくなる

容赦ない言い方をなさいますね

アルセニーの存在をたまたま知って、それを利用しようと途中から無理矢理予定に組み込んだ……そんな風にも見えるんだよな

あたしはノープランって奴が大嫌いだ。推理のしようがないからな

……

――樹海 祭壇前――

さて、少しだけアダムスキーの言葉も聞いてやるか

といっても、ほとんど解説? 解釈? を言っているだけですね

そこにあたしたちの解釈をさらにぶつけて混乱させてやろうぜ?

……分かりやすくなるのでは

さて、まずヤロスラフとアイラトを引き合いにして言っていたな

「樹海は未踏の地ではない」……でしたか

その意味するところは?

犯人は樹海にヒントを残し過ぎている。
具体的には、奇妙な跡

さて、アダムスキーはあの手記を公開してしまいますね

あれほどリーリヤはイリヤに知られたくないと書いていたのに!!

なぜアダムスキーが持っていたのか? どうやって手に入れたのか? これも気になるところだが、ひとまず置いておこう

ひとまずは、[平凡な見せかけ]……イリヤが知らなかった情報を改めて公開したと言ったところでしょうね、目的は

そう。さらに手がかりとして、[似姿の利用]って魔術が使われていたことを明かした

この魔術の詳細は本編の方にそこそこ詳しく書かれていますのでそちらを参照なさった方が良いでしょうね

裏の世界を「知ってる奴」にしか分からないことだが、実はこの魔術を使う神話生物として一番メジャーなのが後ほど出てくる今回の黒幕だ。
詳しい奴はあの魔術の話の時点で薄々予想してただろうな

そして、後ほどヤロスラフの話を引き合いに出しましたが、黒幕となる神話生物を断言しました

 蛇人間 

時と場合によっては嫌いじゃないぜ、あいつら。

まあ、詳細については控えておきますので、ご興味がおありの方は
「蛇人間」「イグ」「ツァトゥグア」あたりで検索を。

ひとまずは、一つの事だけ認識すればいい

蛇人間は、殺した死者の霊を使役できる

いやぁ楽しそうなスキルだよなぁ?

……

これを突きつけたうえでのアダムスキーの宣言がこれだ

リーリヤは既に死んでいる

これについては、女王様も僕も異論なく、間違いない事実だと考えました

残念ながら。

その後のイリヤの都合良い解釈は置いておけ。アルセニーだアルセニー

……

アルセニーはアダムスキーの師であり魔術師

密かにノフ=ケーを殺す算段を立てアダムスキーをサスリカへ呼んだのもアルセニー

密その途中、何らかの魔術的な要因で誰かが死なねばならなくなったとき、アダムスキーをかばって死んだ

……ということなのでしょうか

多分な。
そしてこれについては、アダムスキーも言っていたが、「推理しようがない」情報だろうな。なんとなく予想することはできたかもしれないが

……さて、ここまでのまとめと考察について申し上げることがあります

ん、どの話だ?

「犯人について」です

ああ……
まあ、簡単なことだ

ここまでのまとめは全部、「犯人が分かっていない」視点で行っている

ってだけだ

僕は今、「犯人」の目星がついてますからね。
女王様もそうでしょう?

分からないふりをして話している事柄の中には、「○○が犯人だから、こういう意図がある」なんて予想がつくものもあります

そう、そこをあえてすっとぼけて話してるわけだ

当然のことだとお思いになるかもしれませんが……

今のアダムスキー・アバルキンも同じように話している、ってのを忘れるなよ?

犯人が分かっている身からすると、よくもまああそこまで何も分かっていないかのように話せるものだと感心します

そこだけはさすが情報屋といったところか。
ただ、なぜあそこまでとぼけるのかは分からんが……正直、あたしだったら迷わず言っちまうな

女王様はああいうとき我慢できないタイプですよね

「できない」? 笑わせるな。
あたしは女王。「しない」んだよ。
「する必要がない」と言ってもいい

そういえば正直、思いこみの激しい女王様が犯人にお気づきになるとは思いませんでした

あぁん?
挑発が安いぞ?

ちなみに誰だとお思いですか?

――だ

ああ、女王様……

大外れでございますよ?

安いのは僕の挑発ではなく女王様のお頭の価値のようです

……

殺す殺す殺すまた塩水紅茶流し込んで今度は1000年分のメモリー消してやる
今度はボタン一つで歯車と振り子の接続が全部ぶっ壊れるように改造してやる

なるほど、前回の紅茶はそうなさったのですね?

い、いや、そんなことはしてないぞ?
今のは言葉の綾だ

これ以上紅茶を無駄になさるのであれば、もう淹れません
お茶会も今後控えさせていただきます

それは困る……!

なんてな。

生憎成長しないオマエと違ってこっちはロストメモリー中の手段を何度でも使えるんでな?

……それは、女王様も成長しないのでは……

……ふふ

……アハハ

やーっぱ駄目だ、笑っちまうな

女王様ガ同じネタを使いまわそうとなさるからですよ?

壊れてもすぐ戻せる奴を壊すのは案外味気ないんだぜ?

僕も、痛くもないのに「がはっ」なんて言ったりするの面白くないデス

やれやれ、気が抜けちまった。
そろそろ今回はお開きにするか

次回ガあるのですカ?

人間の下らん営みはなにもここだけで起きてるわけじゃないんだぜ?
茶会のネタが尽きるまで……人類が軽く滅びるまで、もう少しだけ付き合えよ、時計

ああ、「人類が滅びるまで」
……そうですね

おうよ、人類に特化して作られたあたしらは、所詮人類が滅びるまでの化身。
奴らがいなけりゃ主にとって用済みの存在さ

だから主がこうやって玩具を呉れるんだろう? 楽しまなきゃ損じゃないか

仕方がございませんね

もう少しの間だけ、女王様に紅茶をお淹れします

じゃあ明日用に何か探しておくか

っと、その前に、このオハナシ……主の下さった話の結末を見ないとなぁ?

おい時計、いったん戻せ。
最後まで見るぞ

はい、かしこまりました

あ、ところで、「犯人」はあたしの言った奴で本当は合ってたんだよな?
あれは台本通りに言っただけだよな?

いいえ
間違っておいでなのは本当です

…………ウソだろ?

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