里宮 一真

このっ、このっ。このっ!!

???

ふんっ。ふんっ! ふんっ!!

里宮 一真

お前……顔がマジだぞ

???

しょうがないじゃない。あんたの攻撃が微塵も効いていないんだから、その分私の負担が増えるのよ

その言葉に何も言い返すことが出来ない。俺の装備しているコバルトジャックは攻撃力1の固定ダメージだ。こんなものじゃ到底倒すことは出来ない。

この圧倒的不利な状況を打破するためのスキル「限定装備」があるのに、何度攻撃してもそのスキルが発動する気配もない。

里宮 一真

確率は50%固定のはずなんだが

???

ただ単にあんたがついていないだけでしょ

言いながら、この女は器用にもボスモンスターに確実なダメージを与えていた。剣の攻撃だけではない。

起爆性の黑い霧を逆に利用して、ゼロ距離で炎属性の武具スキルを発動し、わざと発生させた爆発をぶつけている。

そのおかげでボスモンスターのHPも半分を切ったところだ。ちなみに、俺が貢献したのは1%にも満たないだろう。

???

それにしても、あんたのお荷物棺桶がこんなところで役に立つなんてね

里宮 一真

だろ? 活躍のほとんどは俺にあると言っても過言ではないよない

???

いや、役に立ったのはその棺桶であんたじゃないわよ。あんたはせいぜいおまけして1%ね

ボスを倒した暁にはこの女を葬ってやろうか。

一瞬そんな考えが頭をよぎったが、結局俺がやられるビジョンしか見えなかったので、心の広さで許してやる。

里宮 一真

あの海よりも広い俺の心に感謝するんだな

???

なにぶつぶつ言ってんのよ役立たず。よし、これで最後よ

ボスのHPゲージがレッドゾーンに到達したのを確認して、女は今までで一番大きな溜を作った。おそらくこれで決めるつもりだろう。

最後までいいところを持ってかれるのも癪だったが、どうせ俺が足掻いたところで何も変わらないので、これで最後と軽くコバルトジャックをボスの胸元に突き立てた。

里宮 一真

へ?

???

え? 何? 鎧が砕けたと思ったらHPが一瞬で零になった?

視界の隅にメッセージが現れる。

里宮 一真

うん。どうやらようやく『限定装備』が発動したようだな。よしよし。最終討伐者は俺みたいだぞ

???

そんな馬鹿な。討伐ボーナスが全てあんたの手に……納得できない!!

霧も晴れた。

そんな事を言われたって知ったこっちゃない。喚く女を無視して、豪華な討伐者ボーナスを確認するためにアイテムボックスを開く。

背後で、そんな音が響いた。

何が起きたか分からなかった。

ギチギチと、ぜんまい仕掛けのロボットのように、さびた鉄の様な音が聞こえると錯覚してしまうほど不自然に、首を回す。

そこには、蓋の開いた墓標があった。

蓋が開いた、というよりは、壁に激突した衝撃で蓋がはじけ飛び、粉砕したと言った方が正しいかもしれない。

ただ、それを見ても状況が理解できない。唐突に頭に浮かんだ疑問を、俺は口にしていた。

里宮 一真

どうして、墓標が背後に……?

その答えはすぐに示される。

ドッ、と。まるで忘れていたかのように世界の理が今さらながら姿を現す。

俺と女の間を縫うように、烈風が生じた。空を切り、水を割き、一直線に弾けた。

頬を伝う、赤い液体。

そして、視界の隅にこんなメッセージが表示される。

コバルトジャックのスキルが発動しました。被ダメージが二倍になります。

俺のHPゲージは、既にレッドゾーンに到達していた。

頬を墓標が掠めただけの、たったの一撃。

里宮 一真

こんな時だけ、スキル発動しやがって……

???

あんた、どんだけ運が悪いのよ。前、見なさい

言われて、回した首を元に戻す。

絶望が広がっていた。

ダークナイト・オルタLEVEL900

狂戦士バーバリアンLEVEL900

イーグルライダーLEVEL900

里宮 一真

面白い。全て相手してやるよ

???

何言ってんの!? 無理よ。あんたの攻撃は全く届かない上に、HPゲージはほとんど空じゃない。もう諦めましょう

里宮 一真

馬鹿言うな。俺の人生に、勝利以外の文字は無い

???

強がっている場合じゃない。だって、あんた……

キュガガガガッ!!

それ以上の言葉を発する前に、イーグルライダーの羽の羽ばたきだけで、地面ごと抉り取られ女の体は吹き飛んだ。

バギドゴボグッ!!

疾風の様な勢いで、バーバリアンの閃光の様な連打が、二匹のテイムモンスターを押し潰した。彼らが光となって消える。

未だに立っているのは、俺だけだ。

そして、相対するダークナイト・オルタは、漆黒のオーラをその刃だけに集約した。

租界が揺れた。現実を塗り替えた電子映像が歪み、大きなノイズが走る。

水は荒れ狂い、空気は金切り声を上げ、洞窟に空いた穴から覗く空は、純黒の太陽が染めていた。

つまりは。

世界(それ)がボスの一太刀だった。

刃を、振るう。

直後に、全てが爆発した。

キエエエエエーーー

グオオオオオオオオオ

里宮 一真

なん、だ? 一体何が起きた?

全てが消えた世界で、二体のモンスターが呻き声を上げて消滅する。

ぽつりと呟いた俺の言葉に、だからこの破壊を生み出した当の人物が答える。

甘いもんぎょーさん食わせてもらいましたからなぁ。その分のお礼はしまへんと、割に合いませんやろ?

その手のひらに、空間そのものを掴んだまま、彼女は心の底から笑っていた。

ピコン

お気に入り数90突破記念。
新キャラの彼女に名前を付けてあげよう!

加えて、ボス討伐の、ボーナスアイテムを提案しよう(^^♪

お気に入り数90突破記念!!!!

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