その言葉に何も言い返すことが出来ない。俺の装備しているコバルトジャックは攻撃力1の固定ダメージだ。こんなものじゃ到底倒すことは出来ない。
このっ、このっ。このっ!!
ふんっ。ふんっ! ふんっ!!
お前……顔がマジだぞ
しょうがないじゃない。あんたの攻撃が微塵も効いていないんだから、その分私の負担が増えるのよ
その言葉に何も言い返すことが出来ない。俺の装備しているコバルトジャックは攻撃力1の固定ダメージだ。こんなものじゃ到底倒すことは出来ない。
この圧倒的不利な状況を打破するためのスキル「限定装備」があるのに、何度攻撃してもそのスキルが発動する気配もない。
確率は50%固定のはずなんだが
ただ単にあんたがついていないだけでしょ
言いながら、この女は器用にもボスモンスターに確実なダメージを与えていた。剣の攻撃だけではない。
起爆性の黑い霧を逆に利用して、ゼロ距離で炎属性の武具スキルを発動し、わざと発生させた爆発をぶつけている。
そのおかげでボスモンスターのHPも半分を切ったところだ。ちなみに、俺が貢献したのは1%にも満たないだろう。
それにしても、あんたのお荷物棺桶がこんなところで役に立つなんてね
だろ? 活躍のほとんどは俺にあると言っても過言ではないよない
いや、役に立ったのはその棺桶であんたじゃないわよ。あんたはせいぜいおまけして1%ね
ボスを倒した暁にはこの女を葬ってやろうか。
一瞬そんな考えが頭をよぎったが、結局俺がやられるビジョンしか見えなかったので、心の広さで許してやる。
あの海よりも広い俺の心に感謝するんだな
なにぶつぶつ言ってんのよ役立たず。よし、これで最後よ
ボスのHPゲージがレッドゾーンに到達したのを確認して、女は今までで一番大きな溜を作った。おそらくこれで決めるつもりだろう。
最後までいいところを持ってかれるのも癪だったが、どうせ俺が足掻いたところで何も変わらないので、これで最後と軽くコバルトジャックをボスの胸元に突き立てた。
へ?
え? 何? 鎧が砕けたと思ったらHPが一瞬で零になった?
視界の隅にメッセージが現れる。
うん。どうやらようやく『限定装備』が発動したようだな。よしよし。最終討伐者は俺みたいだぞ
そんな馬鹿な。討伐ボーナスが全てあんたの手に……納得できない!!
霧も晴れた。
そんな事を言われたって知ったこっちゃない。喚く女を無視して、豪華な討伐者ボーナスを確認するためにアイテムボックスを開く。
背後で、そんな音が響いた。
何が起きたか分からなかった。
ギチギチと、ぜんまい仕掛けのロボットのように、さびた鉄の様な音が聞こえると錯覚してしまうほど不自然に、首を回す。
そこには、蓋の開いた墓標があった。
蓋が開いた、というよりは、壁に激突した衝撃で蓋がはじけ飛び、粉砕したと言った方が正しいかもしれない。
ただ、それを見ても状況が理解できない。唐突に頭に浮かんだ疑問を、俺は口にしていた。
どうして、墓標が背後に……?
その答えはすぐに示される。
ドッ、と。まるで忘れていたかのように世界の理が今さらながら姿を現す。
俺と女の間を縫うように、烈風が生じた。空を切り、水を割き、一直線に弾けた。
頬を伝う、赤い液体。
そして、視界の隅にこんなメッセージが表示される。
コバルトジャックのスキルが発動しました。被ダメージが二倍になります。
俺のHPゲージは、既にレッドゾーンに到達していた。
頬を墓標が掠めただけの、たったの一撃。
こんな時だけ、スキル発動しやがって……
あんた、どんだけ運が悪いのよ。前、見なさい
言われて、回した首を元に戻す。
絶望が広がっていた。
ダークナイト・オルタLEVEL900
狂戦士バーバリアンLEVEL900
イーグルライダーLEVEL900
面白い。全て相手してやるよ
何言ってんの!? 無理よ。あんたの攻撃は全く届かない上に、HPゲージはほとんど空じゃない。もう諦めましょう
馬鹿言うな。俺の人生に、勝利以外の文字は無い
強がっている場合じゃない。だって、あんた……
キュガガガガッ!!
それ以上の言葉を発する前に、イーグルライダーの羽の羽ばたきだけで、地面ごと抉り取られ女の体は吹き飛んだ。
バギドゴボグッ!!
疾風の様な勢いで、バーバリアンの閃光の様な連打が、二匹のテイムモンスターを押し潰した。彼らが光となって消える。
未だに立っているのは、俺だけだ。
そして、相対するダークナイト・オルタは、漆黒のオーラをその刃だけに集約した。
租界が揺れた。現実を塗り替えた電子映像が歪み、大きなノイズが走る。
水は荒れ狂い、空気は金切り声を上げ、洞窟に空いた穴から覗く空は、純黒の太陽が染めていた。
つまりは。
世界(それ)がボスの一太刀だった。
刃を、振るう。
直後に、全てが爆発した。
キエエエエエーーー
グオオオオオオオオオ
なん、だ? 一体何が起きた?
全てが消えた世界で、二体のモンスターが呻き声を上げて消滅する。
ぽつりと呟いた俺の言葉に、だからこの破壊を生み出した当の人物が答える。
甘いもんぎょーさん食わせてもらいましたからなぁ。その分のお礼はしまへんと、割に合いませんやろ?
その手のひらに、空間そのものを掴んだまま、彼女は心の底から笑っていた。
ピコン
お気に入り数90突破記念。
新キャラの彼女に名前を付けてあげよう!
加えて、ボス討伐の、ボーナスアイテムを提案しよう(^^♪
ボスドロップ「魅了クリーム(5回分)」このクリームを顔に塗ると、「最初に出会った相手」から見て理想の顔に変化する。水溶性なので汗や水で落ちてしまう
シン・アスカセラさん、コメントありがとうございます!!!
全くバトルと関係がないアイテム!?Σ(´□`;)
だけどそれが面白い!
ただ、彼が使うと狙い通りの人物に効果が表れるか不安ですね笑笑(*^^*)
天才なのに……
ボーナスアイテム
手(腕)装備
相手の攻撃やスキルにタイミングよく自身の攻撃を合わせると無効化する事が出来る(相手の武器攻撃は武器で受け止め、火炎等のスキルや斬撃は粉砕する)タイミングは、自身の攻撃力が低いほどシビアになる(笑)
なるほど、コバルトジャックしか装備できない一真くんに敢えて装備アイテムを。更に嫌がらせのように高性能。
一真くんの反応が面白そうですね笑笑(*^^*)