???

ここが聖湖の洞窟。モンスターレベルはアベレージが500くらいね。まあ、今のあんただったら噛み付かれたくらいで死ぬんじゃない? あんたのHPゲージ削ったドラゴンの一撃だって、向こうにしてみればストレッチの為に腕を振ったくらいのもんだからね

こいつのクエストに参加することを決めて、歩くこと10分と少し。

辿り着いた怪しげな洞窟に入るなり、入り口が周囲の岩で固く閉ざされ、クエスト中断が不可能となった事実に加えて、そんなとんでも情報をぶち込んでくる。

里宮 一真

んじゃあ、HPゲージが0になったらどうなるんだ?

???

確か、一度強制的にログアウトされるはず。2時間くらいは再ログインが出来なかったと思うけど。あとは、アイテムやユルの減少ね。

背後の閉ざされた入り口には目もくれずに、彼女は一人で前に進んで行く。こいつの後ろをついて歩くのも気が進まないが、万一1人でモンスターとの戦闘を行えば即死の危険もあるので、仕方がなかった。

一歩踏み出す。俺のペースに合わせて隣を歩くシルバーウルフが、冒険の始まりを告げるように一度吠えた。

ヴァフ!

シルバーウルフの背にちょこんと座るにゃんもふも、答えるように鳴いた。

ミャー

この二匹が、ボーナスによって仲間に加わったテイムモンスターだ。

そしてもう一つ。俺のユニークスキルとしてこんなものを会得した。

*限定装備

コバルトジャックが装備解除出来なくなるが、対象の防御力と自身の攻撃力が離れているほど与ダメージアップ
ただし、自身の攻撃力が対象の防御力を上回る場合適応されない。命中率は50%固定

里宮 一真

もしボスからレア装備一式がドロップしても、たとえ2%の軌跡が起きたとしても、これじゃ武器だけ装備できないな

???

一式装備して現れる装備ボーナスが強力なのに、残念だわ。戦力になる気がしない。あんた、防具だけ強化して私の盾になりなさいよ

里宮 一真

はっ、やなこった

誰がこんな奴の盾になるものか。

それにしても、どうして俺にはこんな迷惑スキルばかり備わるのだろうか。これは、あれだ。確か前回のゲームでもあったな。

里宮 一真

『不幸ランダム』だったか。この嫌がらせ感、まさか今回のスキルも同じ奴のアイデアじゃないだろうな

???

何ぶつぶつ言ってんの? ほら、そこのモンスターあと一撃で倒せるようHP減らしたから、それでレベル上げでもしたら?

歩きながらも器用に現れるモンスターを対処していくあいつにイラッとしたが、この機を逃す手もない。というより迅速に対応しないと瀕死のモンスターにやられてしまうので彼女の言う通りにすぐに攻撃を開始する。

里宮 一真

でやああああああああああ!!!

盾と剣を持ったキノコの化け物に向けて、コバルトジャックを思い切り振るう。瀕死のキノコは対応できずに俺の一撃をもろに喰らう。

体の一部に赤いエフェクトが走る。おそらくこれがダメージエフェクトなのだろう。キノコの化け物は一度大きく吠えると、苦しそうに体をくねらせる。

里宮 一真

よっし。流石俺。レベル差があり過ぎるから経験値ヤバいだろうな

一体どれだけレベルアップするのかと心が躍る。が。10秒ほど経っても一向に変化がない。

里宮 一真

おろろ?

表示がないだけなのかとウィンドウを開き、ステータスを確認するも、LEVEL1のままだった。
これはどういうことかと首をかしげているところに、こんな声が届く。

???

ちょっと、何してんの? 攻撃が迫ってるわよ!!

前を見れば、ダメージエフェクトが表示された手で持った剣を振りかざしたキノコが、丁度目の前に迫っていた。

里宮 一真

くっ

急いで剣でガードするが、そのまま体が後ろまで吹っ飛ぶ。狭い洞窟なので、すぐに後ろの壁に背中から激突した。

頭の中に五月蠅いくらいに警告音が響き渡る。視界が赤色に染まる。
表示されたHPゲージは、既にミリ単位しか残っていなかった。

里宮 一真

嘘、だろ?

背中に走る痛みに耐えながら体を起こしたところで、追撃を加えるためにキノコの化け物が迫っていた。既に剣は振り下ろされている。

ガードも間に合わず、憐れんだ目で見るあの女に助けを求める気にもなれず、無駄と思いながらも一矢報いるべく剣を振って。

ガジッっと横やりからシルバーウルフがキノコの化け物にかぶり付く。

ようやくキノコの化け物は、オレンジ色の光となって霧散した。
俺のプレイヤーネームが紫色に光る。見る見るうちにHPゲージとその上限が上昇した。

LEVEL92

最終的にはそこで落ち着いた。種々のステータスも同様に強化されている。

里宮 一真

おい。一撃で仕留められると言わなかったか?

???

そう計算してたんだけど、あんたの攻撃力の無さは誤算だったわ。帰ったら武器強化しないとね

里宮 一真

そんなことしたら俺のユニークスキルが無駄になるじゃないか。ってかそのスキルがあるのに何で倒せなかったんだよ?

???

だってそのスキル。確率は50%でしょ? じゃあ半分は発動しない。今みたいに、攻撃力1のダメージを与えるだけよ。流石に相性のせいで私のダメージが通りにくいとしても、HP1単位での調節は無理よ

悲しくなって肩をがくんと垂らしたところに、シルバーウルフが俺を心配するように足元に来て頬をこすりつける。

その頭を撫でてやると、シルバーウルフの甘い声とともに、ステータス画面が表示された。

シルバーウルフ
LEVEL300

HP:17219
攻撃力:4802
防御力:5630



里宮 一真

まじかよ

知りたくもなかった現実に打ちのめされたところに、緑色の光の粉が降り注いだ。呼応するようにHPが完全回復する。

にゃんもふのスキルだろう。同じようにけれどステータス画面を表示させないように気を付けながら頭を撫でてやると、嬉しそうに頭を震わせる。

対称に、俺はちょっと立ち直れないかもしれない傷を心に抱えていた。今まで苦労することがなかった俺にとっては、かなり高難易度の試練だ。

そんな俺のズボンを加えて道案内をするように引っ張っていくシルバーウルフを、しばらくはただ眺めて付いていくしかできなかった。

※作中で一真くんがスキルに不満を漏らしていますが、あくまで一真くんの主観です。
作者のぞこはアイデアをくれた読者さんに大変感謝してますので、これからもコメントをしてやって下さい。

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