人で混雑し始めた、K・S記念病院は日常、そのままだった。フロントには老人や咳をしている人達、受付の人が患者の対応をしている。
騒がしくなった病院に鮫野木は動揺していた。
人で混雑し始めた、K・S記念病院は日常、そのままだった。フロントには老人や咳をしている人達、受付の人が患者の対応をしている。
騒がしくなった病院に鮫野木は動揺していた。
これが、NPC? 本物ですよね?
だったら、話しかけたら
俺は近くに居た看護婦に話しかけた。
あの、すみません
……
無視なのか、そうじゃない。聞こえてないだけかも……。
あの! すみません。聞きたいことが
……
看護婦は鮫野木に一切反応せず、何処かへ行ってしまった。本当に俺の声が聞こえてない用だ。
ゲームのNPCでも何か話すぜ
これで分かった、この裏の世界は何者かの意思で出来たゲームみたいな世界
彼らは、そう教えてくれたわ
ゲームみたいなか……とんだクソゲーだな。自由に動けるが目的もクリア条件すら教えないでプレイヤーに丸投げ、しまいに倒せない敵キャラときた、現実の方がましだぜ。
場所を移動しましょう、外の方が落ち着いて話せるわ
ですね
ああ、そうだな
三人は病院から出て、六十部に着いていく形で歩きながら話した。
これから、君達はどうするの?
……友達を探します
友達? 探すって事は、はぐれたの?
まぁ、途中で分かれて
あの、同じ制服を着た二人組の男子、藤松くんと凪佐くん何ですけど、知りませんか?
小斗が心配そうに六十部に質問をした。六十部は頭を横に振った。
ごめんなさい。昨日は中学校で調べ事をして、鮫野木くんぐらいしか、その制服を着た人に合ってないわ
そうですか
中学校で何を調べてたんですか?
野沢心について
ノザワココロ? どっかで聞いたことがあるような……。そうだ、あの廃墟に住んでるみたいな僕っ子か、思い出した。あの人を見下した態度、思い出しただけで、怒りが湧き出てきた。
あの僕っ子、じゃないくって野沢心がどかしました?
もしかしたら、彼女がこの世界から脱出するための手掛かりかもしれないわ
あいつが
そう、あなたも理由はどうあれ廃墟に入って、この世界に来た。その廃墟が、この世界の入り口としたら?
裏の世界の入り口、そこに住む野沢心、彼女は俺が話しかけても返事をした、病院にいるただのNPCとは違う。もしかして、彼女は……。
ちなみに彼女は喋るNPCですか? それとも俺達と同じですか?
そこ答えは、喋るNPCよ
重要キャラってか、僕っ子
重要キャラ? そうね、彼女こそ、この世界の唯一の手がかり
マジかよ
俺は頭を抱えた。野沢心が裏の世界から脱出するためのヒントかもしれないとは、まぁ希望が見えただけでの良しとするか。
そういえば、六十部さんはどうして、廃墟に入ったんですか?
それは今、あなたに関係ある?
えーと、気になっただけです
私も気になるな、真面目そうな六十部さんが廃墟に入った理由
あら、そんなに気になるなら教えてあげるわ
……
六十部は笑顔で答えた。
俺の時の対応と小斗ちゃんの対応の違いは何なんだ。うわ、涙が出そう。
小斗さん、私のこと、呼び捨てても良いわよ
えっ、良いんですか?
ええ、気軽に紗良と呼んで
はい、じゃ私のこと、ユキちゃんって呼んでください
ええ、分かったわ
何この差、しまいには泣くぞ!
落ち込んでいる俺に六十部は話しかけた。
おや、どうしたの? 鮫野木くん、まるで落ち込んでいるみたいよ
実際に落ち込んでいるんですが
あら、そうなの
うわー、本当に泣きそうだ。俺は涙を堪える。
ふふ、冗談は置いて、私が廃墟に入った理由ね
はあ
冗談にしてはきつすぎるぜ
理由は単純よ、私も友達を探して廃墟に入ったら、ここにいた。それだけ
心配ですよね
ええ。とても心配
六十部は笑っていたが、どことなく悲しそうだった。気持ちは分かる、俺もアイツらと別れて後悔している。
どうしてあの時、俺は逃げてしまったんだ。