校庭にメガネをかけ制服を着崩した彼女はスマホの真っ黒な画面を見て、金髪に染った髪をなでる。髪型を直した彼女はバットを手に持ってテレビで観た野球のホールラン予告のポーズをした。

久賀秋斗

ウシ、今日も生き残りますか!


 太陽に向けたバットが光に反射して目に映る。

久賀秋斗

うっ

久賀秋斗

ハハッ、眩しいな、オイ!

 彼女はバットを下ろし、校庭を出て行った。

 彼女は街を歩き回る。最近、これが日課になっている。自分が住み慣れた街をこうして見直すと新しい発見もあったりする。
 今日も街を歩いていると、遠くにアンノンの姿が見えた。

久賀秋斗

ちっ

アンノン

……

 バットを強く握りしめ、アンノンと目が合わないように近づく。

久賀秋斗

オラ


 アンノンの後頭部にバットが当たり、アンノンの頭だった部分が煙のようになった。

久賀秋斗

シャ、オラ

アンノン

……


 アンノンはその場から立ったままで動かなくなる。

久賀秋斗

まぁ、こんなもんよ


 彼女がこの場から立ち去ろうとしたとき、家と家の隙間から物音がした。

久賀秋斗

ちっ、もう一体いやがったか


 バットを両手で握り、物音がした隙間をにらむ。

藤松紅

待て、俺は化け物じゃない

凪佐新吾

……


 隙間から出てきたのは、同じ制服を着た二人の学生だった。彼女はバットを下ろして、愛想良く話す。

久賀秋斗

何だ、ビックリさせるなよな! てっきり、化け物かと思ったじゃないか

藤松紅

いや、ビックリしたのはコッチなんだが

久賀秋斗

いやー、すまんすまん。それであんたの名前は? 私はアケ高二年A組、久賀秋斗(クガアキト)よろしく!

藤松紅

ああ、俺は藤松紅。俺達もアケ校で二年B組だ

凪佐新吾

おかげで助かりました。僕は凪佐新吾。藤松くんと同じクラスだよ

久賀秋斗

マジで! タメじゃん、良かった先輩だったら気使ちゃうもんね

 三人の軽く自己紹介が終わった。久賀は気軽に話し続けた。

久賀秋斗

これも運命の出会いって奴か!

凪佐新吾

運命の出会い?

藤松紅

何じゃそりゃ?

久賀秋斗

細かいこと、気にするなって!

久賀秋斗

んな事より。やっとまともに話せる人と会えて、超嬉しいんですけど、所でアンタ達はここから出れる方法知らない?

凪佐新吾

ごめん、僕たちも知らないだ

久賀秋斗

あーウチこそごめん。そうだよね。うんうん、なら良いんだ

藤松紅

もしかして、久賀も廃墟に入ったのか?

久賀秋斗

そうそう、友達の仕事を手伝おうと思って、廃墟に行ったんだけど、急に頭が痛くなって気付いたらそっくりな街にいたわけ、あっ実は私の友達、探偵をやってて、めっちゃ頭が良くて——

藤松紅

まてまて、友達の話はいい

久賀秋斗

えー、フッジーノリ悪い

藤松紅

フ、フッジー?

凪佐新吾

ふふっ、フッジーだって

藤松紅

凪佐

久賀秋斗

ナギサちゃんはフッジーと仲が良いんだね

凪佐新吾

……うん


 凪佐は寂しそうな顔をした。

久賀秋斗

おいおい、どうした?

凪佐新吾

実は僕達以外にも、友達が二人居たんだけど別れちゃって……

久賀秋斗

うん、そっか


 久賀は凪佐の頭を撫でる。凪佐は照れくさくなって顔が赤くなる。

凪佐新吾

…………

久賀秋斗

赤くなっちゃって、カワイイなー

凪佐新吾

も、もう、やめてください

久賀秋斗

いやー、カワイイですなー

藤松紅

遊んでいるところ悪いが、アレは何なんだ


 藤松は指でアンノンを指した。アンノンは顔の部分が徐々に元通りになろうとしていた。

久賀秋斗

あー、再生しちゃうか

凪佐新吾

再生?

久賀秋斗

完全に再生する前に移動しちゃおうか、いろいろと面倒だし

アンノン

……

凪佐新吾

そうしよう

藤松紅

だな

久賀秋斗

じゃ、私に付いてきて良い場所知ってるんだ! 行こう

 久賀は急に走り出した。藤松と凪佐は後を追いかけ走った。

藤松紅

おい、急に走るな

凪佐新吾

二人とも待ってよ

久賀秋斗

ハハッ、早く


 久賀の後を追って、何処かへ向った。久賀は久し振りに人と会えて嬉しかった。もっと長く話したい、今はその思いでいっぱいだった。

エピソード9.5 これも運命の出会いって奴か!

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