校庭にメガネをかけ制服を着崩した彼女はスマホの真っ黒な画面を見て、金髪に染った髪をなでる。髪型を直した彼女はバットを手に持ってテレビで観た野球のホールラン予告のポーズをした。
校庭にメガネをかけ制服を着崩した彼女はスマホの真っ黒な画面を見て、金髪に染った髪をなでる。髪型を直した彼女はバットを手に持ってテレビで観た野球のホールラン予告のポーズをした。
ウシ、今日も生き残りますか!
太陽に向けたバットが光に反射して目に映る。
うっ
ハハッ、眩しいな、オイ!
彼女はバットを下ろし、校庭を出て行った。
彼女は街を歩き回る。最近、これが日課になっている。自分が住み慣れた街をこうして見直すと新しい発見もあったりする。
今日も街を歩いていると、遠くにアンノンの姿が見えた。
ちっ
……
バットを強く握りしめ、アンノンと目が合わないように近づく。
オラ
アンノンの後頭部にバットが当たり、アンノンの頭だった部分が煙のようになった。
シャ、オラ
……
アンノンはその場から立ったままで動かなくなる。
まぁ、こんなもんよ
彼女がこの場から立ち去ろうとしたとき、家と家の隙間から物音がした。
ちっ、もう一体いやがったか
バットを両手で握り、物音がした隙間をにらむ。
待て、俺は化け物じゃない
……
隙間から出てきたのは、同じ制服を着た二人の学生だった。彼女はバットを下ろして、愛想良く話す。
何だ、ビックリさせるなよな! てっきり、化け物かと思ったじゃないか
いや、ビックリしたのはコッチなんだが
いやー、すまんすまん。それであんたの名前は? 私はアケ高二年A組、久賀秋斗(クガアキト)よろしく!
ああ、俺は藤松紅。俺達もアケ校で二年B組だ
おかげで助かりました。僕は凪佐新吾。藤松くんと同じクラスだよ
マジで! タメじゃん、良かった先輩だったら気使ちゃうもんね
三人の軽く自己紹介が終わった。久賀は気軽に話し続けた。
これも運命の出会いって奴か!
運命の出会い?
何じゃそりゃ?
細かいこと、気にするなって!
んな事より。やっとまともに話せる人と会えて、超嬉しいんですけど、所でアンタ達はここから出れる方法知らない?
ごめん、僕たちも知らないだ
あーウチこそごめん。そうだよね。うんうん、なら良いんだ
もしかして、久賀も廃墟に入ったのか?
そうそう、友達の仕事を手伝おうと思って、廃墟に行ったんだけど、急に頭が痛くなって気付いたらそっくりな街にいたわけ、あっ実は私の友達、探偵をやってて、めっちゃ頭が良くて——
まてまて、友達の話はいい
えー、フッジーノリ悪い
フ、フッジー?
ふふっ、フッジーだって
凪佐
ナギサちゃんはフッジーと仲が良いんだね
……うん
凪佐は寂しそうな顔をした。
おいおい、どうした?
実は僕達以外にも、友達が二人居たんだけど別れちゃって……
うん、そっか
久賀は凪佐の頭を撫でる。凪佐は照れくさくなって顔が赤くなる。
…………
赤くなっちゃって、カワイイなー
も、もう、やめてください
いやー、カワイイですなー
遊んでいるところ悪いが、アレは何なんだ
藤松は指でアンノンを指した。アンノンは顔の部分が徐々に元通りになろうとしていた。
あー、再生しちゃうか
再生?
完全に再生する前に移動しちゃおうか、いろいろと面倒だし
……
そうしよう
だな
じゃ、私に付いてきて良い場所知ってるんだ! 行こう
久賀は急に走り出した。藤松と凪佐は後を追いかけ走った。
おい、急に走るな
二人とも待ってよ
ハハッ、早く
久賀の後を追って、何処かへ向った。久賀は久し振りに人と会えて嬉しかった。もっと長く話したい、今はその思いでいっぱいだった。