第3章
そして王子はプリンとなる
ここが図書室です!
何か手伝いま……
一人の方が集中できるから、あとは良いよ
わかりました
さてと………
……ダメだ、何もわからない
他の本を読んでみよう……ん?
ふと、足を止める。
……………この本棚?
この本を見つけた時と同じように、無意識に本棚に近づく。
そこは古い本がギッシリと詰まった本棚。
“そこ”じゃない。
?
視線を動かす。
こんなところに、隠し部屋が
本棚と本棚の間にテーブルが収まっていた。
何の変哲もない、ただのテーブルだ。
そこにあるのは、違和感。
本棚の中に、そこだけテーブルがあるのは変な感じがする。
私はそのテーブルを動かす。
あった
テーブルが収まっていた場所、
そこの壁だけ色が違う。
それを、そっと押す。
……よし
壁が外れた。
それは人一人が入れるような大きさの入り口だった。
私の体系ならば、簡単に入れる
失礼します
そこは殺風景な個室。
テーブルがひとつ、
その上には意味深に開かれた本が一冊。
その本を手に取る。
くそ、どうなっているんだよ
本の中から声が聞こえてくる。
その聞き覚えのある声に思わず声を上げていた。
ソル?
……っ
本の向こう側で誰かが息を飲んだ。
ソルだよね
エルカ? おまえ、どうして
やっぱりソルだった。
私ね………あの男の子が主役の本を見つけたの
マジかよ
うん。でも、その本を開いたら本の中に入っちゃった。今はね……その本の中。ソルはどこにいるの?
……………
あれ、怒っている?
ソルはイライラすると、怒鳴ってしまう。そういう男の人だった。
目の前にいるわけでもないのに、目をギュッと瞑って警戒する。
だけど、
思っていた以上にソルの声は冷静だった。
そうだったのか。俺はお前が本を開いて……そこまでは覚えている。次に………気づいたら何処かの個室にいた
え? コレットは一緒じゃないの?
壁しかない。天井も床も、四方を囲む壁も黒だ………ここは扉もない部屋だ。俺以外誰もいない
彼の言葉から察するに、ソルの置かれている状況はあまりよくないだろう。
大丈夫なの?
俺が言った言葉に不安になるのも分かるけど……
俺の心配の前に自分の心配をしろって
え?
そっちも、十分におかしな状況に思えるぞ
そ、そうだね……本の中にいるのも変だよね。
ここって空の色が鮮やかな青で何だか目が痛くなるよ
それは最悪だな
状況だけ見れば、私もソルも閉じ込められているようだった。
だけど、私の側には王子もいるし。ナイトもいる。一人じゃないだけ良い。
ソルは一人で不安なはずだ。
それなのに、どうして優しいのだろう。
いつもはあんなに意地悪なのに調子が狂う。
(………私はソルが怖かった……はず………どうして、怖かったんだっけ……)
実はさ………コレットとも一度だけ話をしていたんだよ。あー、お前とこうして話しているみたいに……な
そうだったんだ。コレットは何て言っていたの?
物語が完結されないと、俺は部屋から出られないって話だ
…………
これは罰だな。俺が………罪を犯したから
諦めないで。私がどうにかするから!
どうにかって……
ソル………諦めようとしてない?
……っ
物語を完結させないと、私も元の場所に戻れないの
………
だから帰る為に協力して欲しいの。私の為に諦めないで、私もソルの為に諦めないから
え? お前帰りたいのかよ
え?
あ、何でもない