第3章

そして王子はプリンとなる

王子

ここが図書室です!
何か手伝いま……

エルカ

一人の方が集中できるから、あとは良いよ

王子

わかりました

エルカ

さてと………

エルカ

……ダメだ、何もわからない

エルカ

他の本を読んでみよう……ん?






 ふと、足を止める。


エルカ

……………この本棚?

 この本を見つけた時と同じように、無意識に本棚に近づく。


 そこは古い本がギッシリと詰まった本棚。

 “そこ”じゃない。

エルカ

 視線を動かす。

エルカ

こんなところに、隠し部屋が

本棚と本棚の間にテーブルが収まっていた。

何の変哲もない、ただのテーブルだ。




そこにあるのは、違和感。

本棚の中に、そこだけテーブルがあるのは変な感じがする。



私はそのテーブルを動かす。

エルカ

あった

テーブルが収まっていた場所、
そこの壁だけ色が違う。







それを、そっと押す。

エルカ

……よし

壁が外れた。


それは人一人が入れるような大きさの入り口だった。

私の体系ならば、簡単に入れる

エルカ

失礼します

そこは殺風景な個室。

テーブルがひとつ、


その上には意味深に開かれた本が一冊。
 

その本を手に取る。

くそ、どうなっているんだよ

本の中から声が聞こえてくる。
その聞き覚えのある声に思わず声を上げていた。

エルカ

ソル?

……っ

本の向こう側で誰かが息を飲んだ。

エルカ

ソルだよね

ソル

エルカ? おまえ、どうして

やっぱりソルだった。

エルカ

私ね………あの男の子が主役の本を見つけたの

ソル

マジかよ

エルカ

うん。でも、その本を開いたら本の中に入っちゃった。今はね……その本の中。ソルはどこにいるの?

ソル

……………

エルカ

あれ、怒っている?


ソルはイライラすると、怒鳴ってしまう。そういう男の人だった。

目の前にいるわけでもないのに、目をギュッと瞑って警戒する。

だけど、

思っていた以上にソルの声は冷静だった。

ソル

そうだったのか。俺はお前が本を開いて……そこまでは覚えている。次に………気づいたら何処かの個室にいた

エルカ

え? コレットは一緒じゃないの?

ソル

壁しかない。天井も床も、四方を囲む壁も黒だ………ここは扉もない部屋だ。俺以外誰もいない

彼の言葉から察するに、ソルの置かれている状況はあまりよくないだろう。

エルカ

大丈夫なの?

ソル

俺が言った言葉に不安になるのも分かるけど……

ソル

俺の心配の前に自分の心配をしろって

エルカ

え?

ソル

そっちも、十分におかしな状況に思えるぞ

エルカ

そ、そうだね……本の中にいるのも変だよね。
ここって空の色が鮮やかな青で何だか目が痛くなるよ

ソル

それは最悪だな

状況だけ見れば、私もソルも閉じ込められているようだった。

だけど、私の側には王子もいるし。ナイトもいる。一人じゃないだけ良い。

ソルは一人で不安なはずだ。


それなのに、どうして優しいのだろう。

いつもはあんなに意地悪なのに調子が狂う。

エルカ

(………私はソルが怖かった……はず………どうして、怖かったんだっけ……)

ソル

実はさ………コレットとも一度だけ話をしていたんだよ。あー、お前とこうして話しているみたいに……な

エルカ

そうだったんだ。コレットは何て言っていたの?

ソル

物語が完結されないと、俺は部屋から出られないって話だ

エルカ

…………

ソル

これは罰だな。俺が………罪を犯したから

エルカ

諦めないで。私がどうにかするから!

ソル

どうにかって……

エルカ

ソル………諦めようとしてない?

ソル

……っ

エルカ

物語を完結させないと、私も元の場所に戻れないの

ソル

………

エルカ

だから帰る為に協力して欲しいの。私の為に諦めないで、私もソルの為に諦めないから

ソル

え? お前帰りたいのかよ

エルカ

え?

ソル

あ、何でもない

第3章 そして王子はプリンとなる1

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