廃墟は人の気配を感じさせない。人工物が朽ち果てて家としての機能を果たしていない。
俺は何故、ここに来てしまったのだろう? 少し時間をさかのぼろう。あれは確か放課後の教室――
廃墟は人の気配を感じさせない。人工物が朽ち果てて家としての機能を果たしていない。
俺は何故、ここに来てしまったのだろう? 少し時間をさかのぼろう。あれは確か放課後の教室――
さて、帰ってアニメでも観るか
俺が帰ろうとした時、藤松が凪佐を連れて話しかけてきた。
オッス、鮫野木。凪佐をあの店に連れて行こうと思ってな
ほう。そう言えば、あの店に凪佐と行ったこと無ったな。テストも終わったし、ちょうど良いか
凪佐はおどおどしながら話す。
鮫野木くん、僕はカフェに行くんだよね?
そうだよ
カフェだぜ
本当に?
本当さ、騙されたと思って来いよ。面白いぜ
面白い?
そうして、俺達はカフェに向かったんだ。
お帰りなさいませ、ご主人様!
······!?
よっ、ミミタン。ただいま
オッス、ミミタン
鮫野木様に藤松様、お久しぶりです。そちらのご主人様はお友達ですか?
おう、凪佐って言うんだ。この人はミミタン。ここのカフェ止まり木のメイドさんだ
はじめまして、凪佐様! ミミタンと申します
は、はじめまして
席にご案内します、ご主人様
鮫野木達は案内された席に座る。店の中は落ち着いていて、コーヒーの良い臭いが漂う。レトロの感じが男心をくすぐる。
ご注文はお決まりましたか?
そしてこのメイドである
······? 鮫野木様、ミミタンはメニューではありません
おっと、失敬。コーヒーをたのます
俺もコーヒーにするか
僕はカプチーノで
かしこまりました。コーヒー二つにカプチーノ一つですね
ミミタンはメニューを確認した後、厨房に向かう。厨房にはダンディズムという言葉が似合う男性がコーヒーミルでコーヒー豆を潰していた。
······
鮫野木くん、あの人は?
あの人はこの店のマスターだよ
そうなんだ、あの一つ聞いて良い?
何だ?
ここって、メイドカフェなの?
嫌、ミミタンが特殊なだけさ。コーヒーは別格においしいぜ
そうなんだ
俺と凪佐が話していると、突然、藤松が話に割って入ってきた。
ところでさ、お二人さん。これ気にならないか?
藤松が取り出したのは、今朝、配分されたプリントだ。藤松はプリントをテーブルに置いた。
このプリントがどうかしたの?
プリントじゃなくて、廃墟だよ
それがどうかしたの?
行ってみないか、三人で
えー、嫌だよ。怖いし、それに鬼灯先生が行くなって言ってたじゃないか
まだまだ、子供だな凪佐は、行くなと言われたら行きたくなるだろ? なぁ鮫野木!
えっ! そ、そうだぜ。漢なな廃墟の一つや二つ、探索するのが普通。ああ、好奇心が廃墟に行けって行ってるぜ
おいおい、俺は何を言っているんだ
その通り、ここで乗らなきゃ漢が廃るぜ
わかったよ······僕も行くよ
ハハッ、そうこなくちゃな
何で聞く前提に話が進んでいるんだよ?
すると、ミミタンが注文した飲み物を持ってきた。
お待たせしました、ご主人様。コーヒー二つにカプチーノ一つです
テーブルに注文した飲み物を置いた。
ごゆっくりどうぞ
サンキュー
ミミタンは伝票を置いて、厨房へと戻る。
さて、これを飲んだら、早速行くぜ
やっぱり僕は行きたくないよ~
何だ、凪佐。怖いのか?
藤松くん、鮫野木くんは怖くないの?
――っ
そんな訳ないだろ、なぁ鮫野木!
あ、当たり前だろ
俺だって行きたくなかった。この時、上手に断っていれば、あんな事にならずにすんだのだろう。見栄なんか張らずに正直にいれたら、どんなに良かったか······。