鮫野木淳(サメノギジュン)が住んでいる街には廃墟がある。丘の頂上、木々に囲まれ一軒家が朽ち果てている。
 子供の頃は魔女が住んでいると我ながら、カワイイ勘違いをしていた。流石にもう高2だ、おとぎ話は信じちゃいない。今では廃墟に興味を持っている。元々人が住んでいた生活感が残っている感じが好きだ。
 かといって、廃墟に入りたいとは思わない。理由? 理由は2つある。

 1つ、効率的ではない。
 俺は世間的にオタクだ。アニメや漫画、日本が産んだサブカルチャーを愛している。故に俺は廃墟とか、非日常な場所は大好物だ。しかし、わざわざ廃墟に行いかなくても画像、動画で十分楽しめている。
 確かに、現場じゃないと味わえない臨場感があるかも知れないけれど、現実、交通費とかかかるし、法律的にどうなのよ。

 2つ、ビビリ······だから。
 正直に言うぞ、俺はビビリだ。俺は臆病者だ。自分を偽って生活する······。おっと今は関係ないか、忘れてくれ。完結に言おう。怖いか行きたくないだけさ。

 最後に1つ、こんな噂を知っているか?

モブ

知ってます? ××市××町のとある廃墟の噂

モブ

ああ、人が消える廃墟でしたけ? ようつべにうPされてるww

モブ

その廃墟について、新情報GET。なんと、女の子の幽霊が現れるらしい

モブ

女の子キター

モブ

その女の子に案内されると、二度と帰ってこれなくなるらしいですよ

モブ

一体どこに連れて行かれるんでしょうね?

モブ

それが、分かれば噂になりませんよw

  あくまで噂だけどな。

鮫野木淳

イヤー、今週の魔装少女リンカは神回だなぁ

小斗雪音

あのね。私にアニメの事、言われてもユキちゃんは分からないよ

鮫野木淳

ユキちゃん。人がせっかくアニメを進める口実を作ったんだからさ

小斗雪音

そうなの?

 俺と話している彼女は唯一の女友達の小斗雪音(オトユキネ)さんだ。ちなみに彼女はオタクではない。俺にとって彼女は命の恩人だ。あの日を境に俺と彼女の関係は変わった。おっと、この事は今は関係ないか。とにかく彼女は俺の友達だ。

藤松紅

そんなに良かったのか? 鮫野木

鮫野木淳

そうなんだよ、マジ神回だったぜ

藤松紅

鮫野木がそこまで言うんだ。さどかし良かったんだな

 俺に話し掛けて来たのは藤松紅(フジマツクレナイ)くん。あまりアニメは見てないが俺の数少ない友達の一人だ。藤松はゲーム、ボーカロイドなどの曲が好きな、俺と違うタイプのオタクだ。
 ちなみに、魔装少女リンカ。略して魔リカは俺、一押しの神アニメである。

凪佐新吾

おはよう。鮫野木くん、今週の魔リカ面白かっね

鮫野木淳

おお、同士よ。分かるぜ作画も良かったし、文句の付けようがない

藤松紅

原作の頃から、好きって言ってたからな。お前

凪佐新吾

へーそうなんだ。すごいな、名作を見つけるのが上手いんだ

鮫野木淳

おいよせよ。照れるぜ

凪佐新吾

僕は尊敬するよ。鮫野木くん

 笑顔がカワイイ彼は凪佐新吾(ナギサシンゴ)彼はコスプレイヤーだ。手先が器用で自分で衣装を作れるぐらい腕がある。凪佐は去年、転校してきた時、こんな感じに息があって友達になった。加えとっても良い奴だ。

鮫野木淳

へっへっ、凪佐。俺はアニメの為なら、学校を休むぜ

凪佐新吾

それは、どうかな?

小斗雪音

そんなこと言って、怒られても知らないから

鬼灯先生

そうだぞ。私だって貯まってるアニメ見たいぞ。鮫野木、私に変わって授業してくれよ

鮫野木淳

変わる? 鬼灯先生! いつから居たんですか?

 いつの間にか担任の鬼灯先生(ホオズキセンセイ)が話に加わっていた。話を聞いていたらしく、優しい口調で話しかけてきた。

鬼灯先生

休む辺りかな、それでどこまで本気なんだ?

鮫野木淳

嫌だなー先生。全部冗談ですよ冗談

藤松紅

先生。こいつ割りと本気で考えてますよ

 藤松は鬼灯先生に陰口を言った。

鮫野木淳

Why藤松くん? 君はなに言ってるんだ?

鬼灯先生

まぁ、それぐらいにして、お前ら席につけ。ホームルームホームルーム

 そう言うと鬼灯先生は教壇に向った。しばらくして、生徒達が静かになり鬼灯先生は話し出した。

鬼灯先生

えーと、今日は最初に伝えないと、いけない内容があってな

 鬼灯先生はプリントを見ながら話す。

鬼灯先生

えー、近所にある廃墟、お前ら知っているな

男子

はい、知ってます

 生徒の一人が元気良く答えた。その声は教室中に響いた。

鬼灯先生

おう、そうかそうか、知ってるのは良いが黙ってろ

鬼灯先生

さて、最近。廃墟に不法侵入している奴らが居るらしい。まぁ詳しい話は今から配るプリントを観るように、お前らはそんなバカな事しないと先生信じてるからな

 そう言うと、鬼灯先生はプリントを配り始めた。
 プリントには、主に廃墟の侵入の禁止などといった注意事項が書かれていた。

鮫野木淳

そんな事言われなくても俺は廃墟には行かないよ

 夕暮れのせいか、この場所は肌寒く感じる。鮫野木は後悔していた。

鮫野木淳

廃墟に行かない······そんな事を考えた時期が俺にもありました

 今······俺は廃墟の中に居る。

エピソード1 廃墟の中は······。(1)

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