光術士への修行をつけてもらえることになった敬介。

超初級と言われた最初の修行方法は、

"球を浮かせること"である。

これがどういう力に繋がっていくのかは分からないが、

未知の世界への第一歩になったことは

間違いないといえるだろう。

神社に残り美咲と修行を開始するが、

なかなか思うようにはいかない。

それもそのはず、

手のひらに乗せた球をいきなり浮かせることなんて、

普通じゃできない。

しかし、自らが望んだこと。

やらねばならない、誰かを守るために。

天野さんも、この修行やったの?

少しだけ休憩ということで、

拝殿前の石段に腰掛けながら言った。

うん、私もやったよ。
最初は形山君と同じように、
まったくできなくて落ち込んじゃった。

先輩が後輩にアドバイスするような雰囲気で話す美咲。

だんだんと辺りも暗くなり、

カラスの鳴く声が聞こえ始めた。

そっかぁ。
よくクリアできたね。

この神社で修行していて、
"ある物"を見つけたんだ。
それからコツが分かったの。

ある物、ね……。
ちょっと探してみっかな。

座ったばかりだったが、

美咲のいう"ある物"が気になったので、

探すことにした。

境内にある茂みの中、

絵馬掛けの周り、

手水舎、

色々見てはみたものの、

これだろうという物はなかった

この神社自体がどこにでもありそうな神社なため、

特別な物はなさそうである。

しかし、

知りたいという気持ち、

早く力を手に入れたいという気持ちが強いため、

あちこち探した。

あとは、この裏だけか……

敬介が見ているのは拝殿。

美咲は敬介がある物を探し始めてから、

石段に座ったままだったのだが、

戻ってきた途端にニコニコしだした。

ふふっ。

もうその表情が正解はそこにあると

言っている様なものだった。

拝殿の裏手に進んでいくと、

大きな岩や細長い木の板が散乱して、

その中に一つだけ墓のような石碑が立っている。

何か書いてあるようなのだが、

よく見えないため石碑まで近づいた。

そこにはこう書いてあった。

『光は影 影は光 どちらにもなりうる 
 己だけがその道を選択し 我が物とする
  その源は 探究心 それが力となる』

どこにでもあるような石碑なのだが、

書かれている内容から、

なぜそこにあるのだろうと思った。

探究心か……。
知りたいという気持ちが、
力の源になるってことをいってるんだよな?
それに、光は影、影は光、どちらにもなりうる
ってどういうことなんだ?

一つ疑問が解決しそうになったら、

また一つ疑問が生まれる。

そのくらいの時に、美咲もやってきた。

相変わらず、ニコニコしている。

形山君、"ある物"見つかった?

敬介の隣まで来た美咲はそう聞いたのだが、

どこか浮かない顔をしているのに気づいた。

うん。
天野さんはこの石碑の意味分かった?

石碑を見つめながら、

問いかける敬介に首をかしげる美咲。

石碑?
そんなのここにあったっけ?

一緒になってその石碑を見始めた美咲。

そして、夕日が二人と石碑を照らし出す。

うーん。
なんか深い内容だね。
まるで私達光術士にいってるみたい。

読み終えた美咲も、

その石碑の内容から何かしらを感じとっていた。

うん。
なんかコツが掴めた様な気がした。

敬介は大きく喜ぶわけではなく、

ただ、真剣に石碑を見つめていた。

良かったね。
でも、私の言ってた"ある物"って、
それじゃないんだよね……

え?
違うの?!

てっきり、

石碑を見ればコツが分かるのかと思ったのだが、

まったく違ったようだ。

どこか申し訳なさそうに苦笑いし始めた美咲は、

拝殿裏の軒下に近づいていった。

私の言ってたのは、これなんだ。

そういって、軒下に手を伸ばした。

出てきたのは一匹の猫。

その猫を抱きかかえ、敬介の元に戻ってくる。

ね、ねこ?

うん。
ちょうど私が修行で悩んでる時に、
気晴らしでうろうろしてたら、
この拝殿裏の軒下でこの子を見つけたの。
その時はまだ赤ちゃんで小さかったのよ。
なんか見てたら癒されちゃって、
そのまま修行に戻ったら成功したんだ。
リラックス効果かな。

美咲がいうからには、

かなり自分の手助けになると思ったのだが、

そうではなくリラックスさせるためだったようだ。

なんだ。
猫のことだったのかー。

そういって、


さっきまで真剣だった敬介の表情も和らぎ、


美咲と一緒に猫を愛で始めた。

第1章-力の目覚め編-(14話)-探究心-

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