一度は諦めた光術士への道を再び目指し、

美咲と共に再び秋野実神社を訪れた敬介。

先生まだいるかなー?
せんせー!

境内まで戻ってくると、

男は姿を消していたようだったので、

美咲が呼びかける。

もしかしたら、

もう姿を現さないのではないかとも思っていたのだが、

敬介自身も男を呼び始めた。

おーい!!

しかし、

二人の声と静かな風が

絵馬掛けの絵馬を微かに揺らす音だけしか聞こえない。

まさか、もう帰っちゃったのかなぁ?

だとしたら、俺はここで待つ!
決めたんだ。
絶対に光術士になるって。


そういって拝殿の10段程ある石段に座った。

美咲も一緒に石段に座ろうと思って近づいてくる。

あれ、先生。
そんな所にいたんですか!?

またもや、自分の背後にいるような展開になった。

しかし、

先ほど尻餅を着かされていたことを覚えていた敬介は、

まず俺が振り返り、

いないと思い込ませ、

正面に向き直った時にいる。

そういう流れだと悟った。

そうはいかないよ。

よっ!!

わぁぁぁぁ!!!

予想が外れた。

後ろにいた、ただそれだけ。

いないと思っていたものがいたのだから、

先程よりも驚いた。

しかし、

座ったまま首だけで振り返っていたので、

体制は崩さずに済んだ。

先生!
だからそういう悪戯は……。

美咲は今度ばかしは最初から怒っているようだった。

分かってる分かってる。
それより小僧。
よく戻ってきたな。
諦めたと思ったんだがな。
ほれっ。

笑みを浮かべた男が敬介に何かを放り投げた。

何だこれ?

光術士になりたいんだろう?
誰かを守るために。
そのための超初級の修行からやってもらう。

敬介は知らないが、

男だからという理由で追い払われたのに、

修行をつけてもらえることになった。

先生。

さっきとは打って変わって嬉しそうな美咲。

教えてくれるのか?

ああ。
さっきは悪かったな。
ただ、やるからにはしっかりやれよ。

わかった、ありがとう。
それでこの球?で何をすれば……。

さっき渡されたピンポン球くらいの大きさの球。

重さはそれよりも少し重いくらいだ。

それを少しでもいいから、
手のひらの上で浮かしてみろ!

浮かしてみろ!?
できるわけないだろ!!
コツとかは?


顔に手を当てため息をつく男。

あのなぁ。
ほんと今時の若者は……。

若者ったって、
あんたも20後半くらいだろ?

そう、

この男は20後半くらいの見た目で、

特徴といえば着物を着ていることだろうか。

年のことはどうだっていいんだ。
まず自分で考えてみろ。
お前、普通じゃ見えない、触れない影石を拾ったんだろ。
ならその時のことを思い出してみるんだな。
明日またここに来い。
美咲、あとは頼んだ。

な……。

それから、

何か言おうとしている敬介の言葉を聞かずに、

立ち去った。

美咲は頷き、敬介に近づく。

形山君。
これが光術士への第一歩だよ!
頑張ってね。

自分で決めたことなのだ。

美咲も応援してくれてる。

今はただ与えられたことを少しずつこなしていくんだ。

そう心に誓った敬介は叫んだ。

よっしゃー!!
やってやる!!

お互い顔を見合わせて笑い、修行を開始した。

第1章-力の目覚め編-(13話)-最初の一歩-

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