藤峰 明人

一緒にミヤコワスレを手にしていたのに、何故都だけいないんだ!?

黒須 美幸

先輩、それを言っても始まりませんよ

涼紘 夏美

てか何であんたがここにいるのよ?

羽鳥 宇美

私たちに関係ないでしょ

白石 未筝

何か訳ありな感じなのかな?

綾瀬 咲月

まあそう言うなみんな。ゆっきーにもゆっきーなりの考えがあるんだろう

青葉 桐斗

大方、俺たちをここに揃えてくれたことに協力でもしてくれたんだろうさ

桐谷 シルク

ねえ、そんな事より大樹たちは? 私たちがここにいるように、何かこっちからできないの?

出来ないことは、ないですよ

綾瀬 咲月

何!? それは本当か!?

ええ。この木五倍子(キブシ)を使えば、指定した人本人にしか見えない体としてあちらの世界に行けます。生きている人に限る上に、その方の偽物を生み出してしまいますが。三枝美樹という方もそれを使いましたよ

青葉 桐斗

あいつ、じっとしてろって言ったのに勝手に行動したな

藤峰 明人

だから都の偽物がいたのか!?

桐谷 シルク

じゃあ、私が行きたい。大樹と美樹を助けに!

それは、構いませんが、帰るにはミヤコワスレが必要です。でも、もう残っていないですよね。だから彼らもここにいないのでは?

黒須 美幸

それは、どういうことですか?

都大樹くんには、他の皆さんには見えていない、第三者の姿が見えていたはずです。もしそれが、三枝美樹だと気付き、そしてミヤコワスレがないと帰ることが出来ないと知ったら? もしそのためのミヤコワスレが揃っていなければ、彼は帰っては来れないでしょう

藤峰 明人

なるほど、あの直前にあいつはそのことに気付いて…

涼紘 夏美

でも、だったらどうすれば

青葉 桐斗

なあ、ミヤコワスレって花、もしかして都が持っていた紫色の花か?

藤峰 明人

!? それだ! 青葉、お前一体どこでそれを!?

青葉 桐斗

あの世界であいつに別れを告げられた時、あいつは俺の膝の上に紫色の花を置いた。眠っていたはずなの➁、今ではそのことを覚えている。でも、その時は何なのかが分からず、花瓶に刺したんだよ。一本だけ

羽鳥 宇美

ねえ、こっちの花をあっちに持って行くことは?

黒須 美幸

できます! だって都先輩も、この人も何本か持ってきていたはずですから!

藤峰 明人

ああ。できる。だったら桐谷、青葉の家にいけと、都に伝えてくれるか?

桐谷 シルク

任せて。そうと決まれば、早く行かないと!!

白石 未筝

待って。それじゃあ根本的な解決にはなってないよ。だって青葉くんが花瓶に刺した花は一本だけ。大樹が持ってる一本とその一本で二本。だけど、必要なのは三本でしょ?

桐谷 シルク

それは大丈夫。もう一本は私に心当たりがあるから!

分かりました。では、最後の木五倍子を。どうかご無事で

桐谷 シルク

みんな、行って来るね

光に包まれた桐谷の体が、消えた。

都 大樹

くそ。これじゃ手詰まりだよ

やっぱり大樹くんが一人で帰るしか

都 大樹

それは絶対に駄目だって言ってるじゃないか

でも・・・

桐谷 シルク

た、大樹…会えた!

都 大樹

き、君は誰だ!?

な、何? 誰かいるの?

桐谷 シルク

私、桐谷シルクよ。美樹はいる? 私も木五倍子を使ってきたの

都 大樹

桐谷!? もしかしてお前も皆を?

桐谷 シルク

ううん。大樹たちのおかげでみんなは無事。あとは大樹と美樹だけなの。だから、私が来た

都 大樹

でも、一体どうすれば?

桐谷 シルク

あのね、青葉が大樹と最後に会った時に、ミヤコワスレって花を一本、花瓶に刺したんだって。だから、それを探しに行って!

都 大樹

でも、桐谷もミヤコワスレが必要なんだろ? それじゃ足りない…

心配して聞いた僕に、少し間を置いて桐谷は言った。

桐谷 シルク

大丈夫。私は、ちゃんと一本持ってるから...

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