都 大樹

ねえ。青葉の家まで来たはいいけど。どうやって入るの?

桐斗くんのお家…桐斗君のお家…

ああ。それなら大丈夫。青葉から鍵をもらってるからね。花を持ってこれるなら鍵もって思ったけど、思った通り持って来れて良かったよ

都 大樹

なるほど。じゃあ早速開けようか

ええ!? 大樹くん、今その鍵をどこから取り出したの!? 鍵を預かってる…まさか。そういう関係!?

都 大樹

何を考えているか分からないけど、多分違うよ。僕にしか見えないって何かと不便だな

呆れつつも、鍵を開けて家の中に入る。

美樹ちゃんの姿も声も認識できない桐谷が、今は少しだけ羨ましい。

うわー! これが桐斗君の家。いいのかなあ、まだ私たち付き合ってもいないのに…ふふふ

都 大樹

よ、よし。早く花を探そう

あ、ねえ大樹。あれじゃない? あのカウンターの上の花瓶に刺さってるやつ。私は本物を見たことないけど

都 大樹

え? …ああうん、これだこれだ。よし、解決だよ。これでみんな一緒に帰れる

ね、ねえ大樹くん。このミヤコワスレは、私が使っていい?

都 大樹

あ、ああいいよ。僕は持ってるから。先に帰って青葉にお礼を言ってきた方がいいよ。僕はその後タイミングを見計らって行くから

ごめんね。すぐ終わらせるから。ありがと、じゃあ先に行くね

都 大樹

うん、また後で

そう言って美樹ちゃんは、目を閉じたまま光に包まれて、消えた。

残ったのは、僕と桐谷の二人だけ。

都 大樹

桐谷はまだ帰らないの?

美樹の邪魔はしないわよ。それに、大樹がまた藤峰達を残したみたいに、一人でここに残ったら困るしね。私は大樹が帰るのを見届けたら行くよ

都 大樹

そうか、分かった。でも、美樹ちゃんはほんと、一途で格好いいよな

そうね。好きな人がいることを誇りに思って。前に進もうと努力してる

都 大樹

美樹ちゃんのそういうところは、素直に憧れるよ

私も。…ねえ大樹。最後に一つ、聞いてくれる?

都 大樹

最期って、もうすぐ僕たちも帰るんだから、またいつでも会えるじゃないか

うん。そう、そうだね。…でも。今言わないと、私は多分二度と大樹に伝えることは出来ないと思う…

都 大樹

それは、どうして?

どうしてだろうね? だけど、多分そう。今しかない。だから、聞いてくれる?

都 大樹

分かった、聞くよ

ありがと。じゃあ、言うね。私、みんなと過ごした時間はとっても楽しかった。今まで音楽しか楽しみのなかった私に、機械を通さない温かな声を与えてくれたのは大樹たちなんだ。だから、すっごい感謝してるんだ

都 大樹

僕だって、友達って呼べる人がいなかった日々から、僕を救い上げてくれた桐谷達には感謝してるんだ

知ってる。だから、最初は同じ痛みを知る仲間だって思って、人一倍親近感を感じてた。今まで友達を知らなかった分かは分からないけど、大樹の笑顔は誰よりも輝いてたの。その笑顔に、私はだんだん惹かれていったわ

都 大樹

それは、僕も同じ。どこか懐かしい雰囲気を持つ桐谷を、僕はいつも目で追っていたよ。だから多分、僕たちが抱くこの気持ちは、一緒なんじゃないかな? 僕はさ桐谷、みんなの中でも特に桐谷が、

だめ! 待って。私に言わせて、じゃないと私、一緒後悔すると思う

都 大樹

ああ。分かったよ

ありがと大樹。そんな優しさも含めて、私は大樹に惹かれていった。だからね大樹、私は。私は大樹のことが…

僕と同じ気持ち。他人と触れ合う温かさを知らなかった僕たちが、同じ温かさに触れて、同じように抱いたこの感情。

もう一度その気持ちを確かめながら、僕は耳だけに神経を集中させた。

そして、その声が、彼女より先に発してしまった僕の声が、唐突に僕の耳に届いた。

都 大樹

大事なところ悪いけど、お前たち二人とも返す気はないよ?

こんにちは。ご覧頂きありがとうございます。

本当はきりのいい40話で終わらせたかったのですが、収まらなかったです。多分、次回最終回です。

やっぱり一人渡航者がいると偽物も現れるわけで、またまた自分の偽物に出くわしてしまいましたね。

そして桐谷の言葉にも、何やら不穏な空気が。二人とも無事に帰ることは出来るのでしょうか!

それでは、今回はこの辺りで失礼します
(*- -)(*_ _)ペコリ

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