鳴宮 颯

どうしてだ? どうして君は神の力を持っているんだ? どうして彼女たちは動ける!? 神の力を以て、立鳥君が殺したはずなのに

 鳴宮颯が狼狽する。俺は紡ぐように言葉を放った。

里宮 一真

ああ。明日奈は神の力を開放した。全力だったさ。だからだろ? そもそもこいつが国王二人に勝てる訳ないじゃないか

鳴宮 颯

だけど、あの時の立鳥君は神だぞ! 全ての頂点に君臨する絶対的な存在だ。国王ごときに劣るはずが・・・

里宮 一真

ああ、そうだった。言ってなかったな

 一旦息をついて。俺は右腕を鳴宮に見せびらかすようにして、告げる。

里宮 一真

その時にはすでに、こいつの神の力の9割は俺の中にあったさ

鳴宮 颯

どういうことだい?

 きらりと、俺の右腕にはめられた、銀色のアクセサリーが輝いた。

里宮 一真

『神宿しの腕輪』この腕輪をはめて触れた神から、力を分け与えてもらうんだよ

明日奈

あの時ね!?

里宮 一真

ああ、そうだ

 あの時。明日奈の名前を聞いた時。俺はこの腕輪をはめて、彼女と握手を交わした。

明日奈

身体の力が抜けたと思ったのは、神の力が吸い取られていたということ・・・

里宮 一真

そしてこの『神葬のネックレス』。これでお前の翼はもがれた。残りの力も、返してもらおうか

鳴宮 颯

く、くっっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!

 俺が砕いて折った翅の残骸を鳴宮が掴む。途端に、それは鋭い剣へと変貌した。

 それを思い切り振り被り、彼は足を踏み出す。俺も応じた。

 神の剣と雷撃の聖剣が交差し、粉々に砕け散る。残されたのは、ボロボロになった神二人。

鳴宮 颯

実は僕はプレイヤーとしてのスキルはさっきの物質変換しか持っていない。だから、ここからは僕の意地だ。君だってもうスキルはないだろう?

里宮 一真

哀れだな鳴宮。生憎とこちらには仲間がいる。顔も名前も知らないが、俺を支えてくれる大切な『読者』っていう存在が。その重みを、自分の体で思い知れよ!!

 機会に表示された文字を読みながら、俺は突き進む。

里宮 一真

ギャグスキル発動! 『トイレに行っトイレ』!!

鳴宮 颯

うっ。何だ? 急にお腹が!?

 駆ける。うずくまる鳴宮の元に、一目散に。

 辿り着き、拳を握り。力を込めて振り切った。

里宮 一真

覚悟しろ、鳴宮颯。お前は一人の女の子の人生を弄んだ。その意味を、重みを、現実の世界でたっぷりと見つめなおすんだな!!

 いっそそんな盛大な音を立てて、鳴宮の体は吹き飛ぶ。残った片翼も粉々に砕け散った。衝撃で、俺の右腕から『神宿しの腕輪』外れ、ころころと転がって行く。

鳴宮 颯

許さない。君も、立鳥君も、この世界も。全部全部消してやる

里宮 一真

明日奈

明日奈

ええ

 目の前に転がったそれを彼女はしっかりと腕にはめる。ゆっくりと立ち上がった。

鳴宮 颯

『神スキル』を3つ宿した僕にだけ発生するこの『神白(かみしろ)』で、全てをリセッ・・・

明日奈

鳴宮颯!!

 彼女は、叫ぶ。

 俺の右腕を握りながら。

明日奈

私はもう逃げない。自分の運命と向き合って、そして乗り越えていくわ。だから、これはその第一歩。あんたを倒して、弱い私が生み出した幻想を、ここで全部ぶっ壊す!!

 一筋。ただ一筋だけ、真っ白な光が彼に刺さる。それだけで、彼の体は完全に消滅した。

 直後に、世界は色を変える。

里宮 一真

ここは、どこだ?

明日奈

そうね。ゴール、と言えばいいのかしら。ゲームクリア者と神だけが入れる、ゲームと現実の狭間みたいなものよ

里宮 一真

俺はお前を倒さなくてもいいのか?

明日奈

もう負けてるわよ。あなたの言葉は全部私の胸の奥深くに刺さった。痛感させられたの。意志の強さで、この人には勝てないって。だから、いいの

里宮 一真

そうか。それで? これから俺はどうすればいいんだ?

明日奈

それが、私にも分からなくて・・・

カティア

はいはーい。二周目ではてんで出番のなかったカティアだよー。ここではね、神様に叶えて欲しい願いを云えばいいんだよ。そしたら後は、自動的に現実に戻される

里宮 一真

じゃあ、俺が明日奈にいえばいいのか?

カティア

それがどうも違うんだよ。そもそもこれは試作プレイであって、一回きりの特別版の予定だったから、神が変わるなんて予想してなかったんだよ。だから、元々の神である私に言うらしいよ

明日奈

試作ぷれい? それじゃあ

里宮 一真

何だ? お前説明書読んでなかったのか? プレイは一回きり、ちなみに脳への負担を考慮して、このゲーム内の記憶は現実では引き継がれないって。赤い太文字で書いてたぞ

明日奈

私、実際にやって慣れていく方だから

カティア

あ、ほら! もうそろそろこの空間も崩れてきそうだよ。ルーキーくん。早く願いを言ってくれ

里宮 一真

そうかおい明日奈。記憶はなくとも心に残ったものは中々消えはしない。現実に戻って例え病気の体だったとして、最後まで諦めるんじゃないぞ

明日奈

うん。当たり前よ。絶対に忘れないわ。そして、生き続けて、いつかきっとあなたを見つけてみせる。だから、それまでのお別れ。バイバイ

 一粒の雫と、飛び切りの笑顔を残して、明日奈の体は虚空へ消えた。

カティア

勝者でも神でもなくなった彼女は少し早めに離脱したようだ。きみも急いで。早くしないと願いすら叶えられないぞ

里宮 一真

そうだな。楽しかったよカティア。いつかお前とも闘ってみたかったけど。まあそれは言わないでおこう。じゃあ、またな

 一旦そこで区切り、俺は言った。

里宮 一真

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カティア

里宮一真の願い、確かに聞き受けました。それじゃあね、バイバイ

『空と大地のラグナロク』。魔法や超能力が当たり前に使える世界へ意識を落とし、実際にプレイできる理想の『リアルダイブ』ゲームだ。

 数か月前にデモンストレーションとして、限定的に試作プレイを行って、その結果を集計し、大幅な改善を経てようやく先週発売となった。

 売れ行きは順調だった。わずか一週間で興収三千万円の売り上げ。こぞってプレイヤーが天空の城を目指し、神の元へ行く。

 まだ、辿り着いたものはいないそうだ。何でも、精霊の塔の攻略で、中腹にかなりの強敵が道を阻んでいるらしい。

 そこでゲームオーバーとなりまたプレイしなおす前衛たちの間で、話題となる人物がいた。

 名前は知らない。だけど、情報収集組が塔を外から観察していると、ある男が塔のてっぺんから落下してくるらしい。

 地面にぶつかる寸前で、失速し加齢に着地する事六回。つまり、発売から昨日まで毎日塔のてっぺんに到達していることになる。

 そんな凄腕プレイヤーに、ある人が聞いたそうだ。『何故あなたはいつもクリア寸前でここに落ちてくるのですか?』と。

 すると男は、笑って答えたという。

「それがさあ。神だからどんなに強いのかと思って一日目に勝負を申し込んだら、『君とは戦いたくない』って、突き落とされたんだよ。それからは俺の顔を見るたび問答無用で突き落としにかかるんだ」

 五回も突き落とされる少年を見たプレイヤー達は、彼をある愛称で読み始めた。ものすごく強い、それこそこの世界で一番のはずなのに、神様だけには嫌われている。

 そんな意味を込めた名で。

 こういう内容の話を村で聞いたのを思い出しながら空を見上げていると、後ろから私を呼ぶ声がした。

 振り返る。

 彼だった。

「今日もまた行くの?」

「ああ」

 彼は答えた。

 人は、彼をこう呼ぶ——

里宮 一真

今日こそはカティアの奴と勝負をして来るさ

神に見捨てられた
異世界の王。

 そんな彼を見おくり、私は大空の下を思い切り駆ける。風が私の髪を揺らす。それがまた気持ちいい。

 ドクンドクンと高鳴る心臓の鼓動に胸を躍らせながら、私は呆れたように呟いた。

明日奈

やっぱり君は、どこまでも真っ直ぐだね

最後まで読んでくれた皆さん。里宮一真くんを応援し、時には助けてくれた皆さん。

本当にありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ

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