彼女の背後には誰もいなかった。感じたのは微かな気配。この気配を、俺は知っている。あの時、あの場所にあった——
カティアーー!!
彼女の背後には誰もいなかった。感じたのは微かな気配。この気配を、俺は知っている。あの時、あの場所にあった——
だけど、彼女の腹部には、後ろから貫くように一本の剣が突き出ていた。赤く、朱く、紅く染まった剣。
それが消える。同時にがくんと、カティアの体は最後の支えを失って崩れ落ちる。
その寸前に。
見えない何かによって、その体が受け止められた。
くっ!?
カティアを取り戻すために、俺は一目散に駆けた。
エリシアも、助けたくノ一のことも気にせず、唯真っ直ぐに突き抜ける。
そんな時に、聞き慣れた音が響く。だけど俺は、そんなものには目もくれず、ただただカティアを目指して走った。
走って、走って、走って、走って。彼女の体まであと三歩。
見えない体からの攻撃など考慮せず、俺は彼女に向けて腕を伸ばす。
あと二歩。
見えない何かから放たれた攻撃魔法を、首を横に動かし避ける。
あと一歩。
届く。もう射程距離だ。
力なく垂れ下がったカティアの細い腕に、力一杯右手を伸ばす。
掴んだ。彼女の力の抜けた腕をしっかりと握った。
よし! 引くぞ
叫んで。右手に力を込め手を思いっきり引く。
直前に。
そんな音とともに、俺の体は虚空へ消える。
右腕に巻かれた時計のようなものには、『ディーゼル・黒前雪弥撃破。八咫鏡使用ポイントへ帰還します』、と表示されていた。
目を開くと、そこは水の王国フレーレだった。
おお! 里宮一真が戻って来た
俺の出現に驚くリリア。こいつはこんな顔も出来るんじゃないか。
どうして俺の名を知っている?
ああ。それは先ほど、私が元々住んでいた水の都フレーレから、ディーゼルが撃破されたという情報を家臣が持ってきたの。その時、あなたの容貌とともに名前を聞いたのよ
家臣? お前は一人じゃないのか?
今までディーゼルに国ごと全て乗っ取られていたのよ。だけど彼女ももういない。だから家臣も元通りってこと。ほら、そこにいるわ
リリアがそう言って指さした方へ視線をやる。そこにいた。
むんゆるっちゃぽんべろめいじゃべるきゃぺぺろんちょん
vhfqhるにぇいろnyしmふぃx、jすb、しhふぃあ;ふcまいふ、ぐ
——怪物だろうか。
これが・・・家臣?
そうよ。兵長と参謀長。どちらも家臣のトップよ
そうなんだ
それ以上の言葉が出てこなかった。分類は、魚人・・・になるのだろうか。
そんなことより、棺桶から出て来たあの女の子はどうしたの? 姿が見えないけど
俺とエリシアとくノ一を見て、彼女は言う。さて、何と言うか。
攫われたよ。これでもう八咫鏡の力も使えない。まあ、無事だとは思うが
俺は正直な人間なので、嘘なんて付けないけれど。だから俺は言った。
当然、取り戻しに行くがな
でも、どこへ行くの? 相手が誰かも分からないのに
いや、相手は分かっているさ。あの気配を、俺は一度感じたことがある。あの時、カティアの傍には神の気配があった
ええ!? じゃあまさか、彼女を攫ったのは、今の神だとでも言うの!?
俺が一周目の世界をぶっ壊した場所に、残った人は四人。くノ一は覚えているか?
ええ。神様は人ではないから。私とあなたと、サルバーレの王とその聖人のイフリートでしょ?
いや違う。イフリートも聖人だ。ただの人ではない。あの場にはもう一人、いたんだよ。俺たちと同じプレイヤーがな
まさか!? いや、だからあいつは知っていたのね・・・
・・・。その気配と同じものが今回もあの場にいた。前回と同じように姿は見えなかったがな。だからまずは、取り敢えず天空の城に行くのが先だろう
水の都フレーレを取り返してくれたお礼。私も精霊の塔を使うときには協力する
助かるよリリア。フレーレの真の女王へ、俺からの餞別だ
言って俺は、ポケットから一つ、取り出してリリアに手渡した。
これは?
なに。ただのアクセサリーだ。あんたの綺麗な髪飾りには及ばないが、良ければ耳にでも付けてくれていたら、その時はお前のピンチに駆けつけよう
感謝する。大切にさせてもらうぞ
国と、何より仲間が戻ってほっとしたのか。彼女は最初に会った時より表情の変化が見られるようになった。
それじゃあ、残りの国王にも協力してもらおうか
続けて俺は、巨人のボロキレから「神宿しの腕輪」を取り出し、右腕にはめる。
雷撃の聖剣に手を掛け、振り向き叫ぶ。
まずは、命知らずの馬鹿どもをぶっ倒してからな!!
・・・
・・・
優利さん、コメントありがとうございます...♪*゚
今回の話で言っていた内容は、砂煙などは関係ないですね(アルティメットしりとりの時は砂煙のせいでしたが笑笑(*^^*))
そうです! ズバリ、神の正体というかゴホゴホ…に直結します!!!(予定では^^;)