黒前 雪弥

ふん。レベル382か。そこそこやるようだが、400を超える俺には敵うまい

 黒前は剣を抜く。背中に貫いた、一本の刀。それを引き抜き、構える。


















里宮 一真

でもお前、一周目でイフリートに惨敗したんだろ? そんな奴に、負ける気なんてしないが

黒前 雪弥

あくまでそれはあの時の俺だ。今の俺は、もはや精霊を凌駕するぞ。そもそもその精霊の一体もこちらが有しているのだ。万に一つもお前に勝ち目は——

里宮 一真

お! ハートカウンターの通知が来たぞ。今度はどんなスキルが・・・

 言って、開いて、確認して。そこにはこんな一文が。

ハートカウンターに
よる、新スキル獲得
のお知らせ。

里宮 一真

よっしよっし。早速確認ッと

 完全に意識から黒前を消し、俺は画面をタッチした。

獲得したオリジナルスキル

アクションスキル
『強奪』

相手のスキルから一文字を奪って十分間自分のスキルにその文字を使える。(例えば相手の「渦巻く神風」というスキルから神の字を奪って「渦巻く風」にしてしまい、自分の「雷の光」スキルを「神雷の光」スキルに出来ちゃう)

里宮 一真

・・・うん。今回も当たりか。面白そうだな。早速あいつで試してみたいな

エリシア

ね、ねえ。それなんだけど。何かあの人怒ってない?

里宮 一真

あん?

 エリシアの言葉に黒前の方を向けば、なるほど。確かに怒っているかもな。

黒前 雪弥

無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された無視された

カティア

うわー。レベルの高いチート勢は、変な人が多いんだねー

 カティアがそんな風に漏らした。・・・いや待て、それって俺も入ってるのか?

 だけど確かに、俺から見てもあいつはどこかおかしい気がした。何かむしゃくしゃする。『ハートカウンター』のせいじゃなくて、これはきっとあいつのせいだ。















里宮 一真

よし。ぼっこぼこだ!

 勢いよく足を踏み込む。体重を右足に預けた。

 ——それと同時だった。
















黒前 雪弥

穿て、雷撃の槍!!

 言葉と同時に、一直線に雷の槍が放たれる。反応は出来ない。すでに前に足を踏み出していた俺に、その雷は直撃した。

 『詠唱短縮』。基本魔法の発動には詠唱が必要となるが、黒前のそれは、究極まで短縮された完成系だった。速度は、従来のそれの五倍以上。見て動いては間に合わない。

 そんな音が響く。

















里宮 一真

悪いけど、俺には傷一つ付けられねーよ?

 オートスキル『反射』が機能し、雷の槍が明後日の方向に弾かれた音だった。



















黒前 雪弥

なるほど・・・

 黒前は静かに呟く。右手に掴んだ剣の切っ先をこちらに向け、腰を落とす。

黒前 雪弥

菊一文字——閃!

 それ自体が一つの斬撃となり、襲いかかる。

 その斬撃は再び俺の見えないバリアのようなものに当たる。















































 ——そのまま貫通して俺に今度こそ直撃した。

























里宮 一真

くっ。何が起きた!?

 ——嫌な予感がした。それでも俺は画面を確認して。
 そしてやっぱり舌打ちをした。

初めてのスキル発動の説明。

今回初めて『不幸ランダム』が発動しました。このスキルのおかげで、あなた様の『反射』もランダムで機能しなくなるのでご注意を。

里宮 一真

この怒りを、俺はどこにぶちまければいい?

 すぐに返事があった。





















黒前 雪弥

俺にぶつけて来い。全て受け止め、返り討ちにしてやろう

 再び剣を振るう。それだけには収まらなかった。























黒前 雪弥

沸き立て、泡沫の光! 轟け、炎の閃光! 砕け、風の咆哮!

 火、水、風。それぞれの属性魔法が詠唱短縮で放たれる。












黒前 雪弥

本来一人に一つの三属性に加え、ランダムで備わる五つの属性の一つである雷。俺は合わせて四つの属性を持つ。諦めろ、お前には万に一つも勝ち目はないぞ

 加えての詠唱短縮だった。これだけで、独りで一国を相手に圧勝できる戦力。

 迫りくる魔法を前に、しかし俺は右手を差し出す。





















里宮 一真

いちいち語ってないで全力で来いよ。退屈だ

 音が消え、色が消え、気配も消え。『それ』は黒前の魔法も一瞬でかき消した。

 世界は何度白に染まるのか。




















黒前 雪弥

な、何が!? 俺の魔法がどうして・・・貴様、一体何をした!?

里宮 一真

詠唱短縮? 四属性を操る? 何をくだらねーこと言ってんだ

 ——つまらない。そんなことを口にするのさえ面倒だった。端的に、黒前の心に直接ダメージを与えるように、俺は歌うように囁く。











































里宮 一真

俺は全八属性に加え、さらに俺だけの二属性を兼ね備えた『オーバーエレメント』。それを詠唱破棄で使えるから

黒前 雪弥

馬鹿な!? 何故貴様がそんなことを・・・!?

 予想通りに動揺する黒前に向け、俺はいつものように嘲笑った。






































里宮 一真

そりゃあ——俺が天才だからだ!

Re:8th.新スキル・・・果たして!?

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