『アルティメットしりとり』を始めて早々、エリシアの心は折れかかっていた。取り敢えずその辺の大きな葉で身を隠しているが、その姿が逆に・・・何でもない。

エリシア

次は私の番や。行くよお兄やん

 必死なところが見ていて可哀想だった。

 次の文字は『く』。彼女は一体どうやってこの現状を打破するのだろうか。

エリシア

クルミ!

 何がしたいんだろうこいつは。叫んで、目の前に出現したクルミに我を忘れてむさぼり付いていた。

エリシア

クルミクルミ、美味しいな

 ゲームの趣旨を間違えていないだろうか。そういえば、細かなルールを聞いていなかったな。

里宮 一真

なあエリシア。これどうやったら負けなんだ?

エリシア

そういえば言ってなかったね。基本は『ん』が最後に付く言葉はダメ。ただし同じ単語を何度言ってもいいの。それから二十秒以内に次の言葉を言えなくても負けだよ。あ、ちなみに今十六秒だから

里宮 一真

何だと!? なら「みかんゼリー」!

 お。本当に出て来た。それに、案外現実世界の物よりも美味いかもしれない。

エリシア

・・・(じゅるり)

里宮 一真

やらないからな

エリシア

くーっ。いいもん。全然羨ましくないから。「リンゴ」

エリシア

うっひょ~! 美味しそう

里宮 一真

ゴリラ

エリシア

むしゃむしゃむしゃ

エリシア

私のリンゴが—。「落花生」

エリシア

バリバリバリ

エリシア

こんのゴリラ――!!

里宮 一真

しょうがないな。「いちご」

エリシア

やった。「ゴリラ」

エリシア

ウホっ、ウホっ、うほうほうほうh

エリシア

これでもう恐れるものは何もなし!

 

里宮 一真

それじゃあエリシア。遊びはここまでにして真面目に行こうか

エリシア

やはり今までのは遊びだったというのね。よし、望むところ

 このゲームの肝は、相手に言葉を出させないこと。いくら頑張っても、相手に『ん』が最後に付く言葉を言わせるのは難しい。

 だけど、二十秒だけ話せない状況をつくるなら?

里宮 一真

雷撃の剣

 例えば、空気を無くす。それだけで言葉を発することはできなくなるだろう。

エリシア

「銀貨」!(ぐへへへへ)

里宮 一真

(欲にまみれた目をしてるな)「神宿しの腕輪」

 例えば、この森を海に沈める。それだけで彼女は何も言えなくなるだろう。

エリシア

「綿菓子」!(甘あま~)

里宮 一真

(まだ食べるのか)「神葬のペンダント」

 それが、勝利への最適解。必勝法と言ってもいい。

エリシア

「トマトジュース」(ちゅー)

里宮 一真

(ただの馬鹿だな)「朱雀の御神酒」

 だから——

エリシア

キャラメル・ラテ(きゃっほーい!!)

里宮 一真

——悪いなエリシア

 ——そんなものに興味はなかった。

エリシア

悪いって、何がやお兄やん

里宮 一真

俺の目的はゲームクリア、つまりは神の撃破だ。正直、お前を倒す理由なんて俺にはないんだよ

 だから、利用した。このお遊びも、あくまで神を倒すため。

エリシア

けどなお兄やん。その神様の住む天空の城に行くには、七つの国の中心にある精霊の塔を使わないかん。その塔を使うには、七人の王の協力が必須なんだよ

里宮 一真

ああ、だからさ——

 そんな事は、はなっから分かっていた。そして、それがどれだけ時間の掛かることかも。

 だから、発想を逆転させた。

エリシア

だから?

里宮 一真

「天空の城」。むこうからこちらに出向いてもらおう

 世界は再び白に染まる。

 そして——

   そして——

そして。

最終目的地である
『天空の城』は、
地上に姿を現した。

里宮 一真

さて、殴り込みだ

Re:2nd.キャッスルフォール

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