【29】真実の扉

















剣持 朱梨

数独は、縦・横・太枠の四角にはそれぞれダブらないで入れるのがルールだから

剣持 朱梨

まず左上のマス。
1番上の横1列と1番左の縦1列とを見比べて入る数字を探すと
横1列で入っていないのは6と7。
縦1列で入っていないのは2と6。
ってことから「6」が入る

剣持 朱梨

すると必然的に左下のマスには残った「2」が入る。
同じようにして右下のマスには「8」が、
右上のマスには「7」が入ってくる。

剣持 朱梨

そうやって埋めていくと

剣持 朱梨

こうなる。
赤は「2」、青は「1」、緑は「7」、
これが正解だ

小鳥遊 杏子

これをどうしたらいいのかな

剣持 朱梨

この暗号と一緒に扉が出て来ただろ?
この数字の扉を開ければ進めるってことじゃないのか?

小鳥遊 杏子

ってことは「2」って書かれた赤い扉、「1」の青い扉、「7」の緑の扉を開ければいいってこと?



杏子は
俺たちを取り囲むように並んでいる
3色の扉を見回した。



剣持 朱梨

同じ色の鍵もある。
間違いない

小鳥遊 杏子

……でも3つあるよ?
正解って今までひとつだけだったよね?


開けた途端に
化け物が飛び出してくる事態を
想像しているのだろう。

彼女は随分と慎重だ。













その声に答えるように、

ふふふ、よく気がついたね。
そうさ。
その中のどれかひとつが正解だ

突然、ノイズの混じった音が
響き渡った。


剣持 朱梨

誰だ!?

正しい答えは正しい道に
間違った答えは間違った道に

当ててごらん。偽善者さんたち



歌うように
嗤(わら)うように
その声は続ける。

運命の歯車は、どこまでお前らの味方をしてくれるだろうねぇ

腹をすかせたフェンリルが
お前らが来るのを待ってるよ







言いたいことだけ言うと
その声は唐突に途切れた。

剣持 朱梨

……

小鳥遊 杏子

……

耳を澄ませても
もうなにも聞こえない。















今の声はなんだったのだろう。




「正しい答えは正しい道に」
と言うのは
ここに来てから何度も見聞きして
きたことだけれども


「間違った答え」は
精霊の時計の呪いで
元の時間に戻されるんじゃ
なかったのか?


本にはそう書いてあったはずだ。








それが、











……フェンリル!?


















剣持 朱梨

……ヒント、は?




今までの暗号なら
助言のような――

――いや、助言なんて
親切なものじゃなかったけれど
2枚目の暗号が
添えられていたものだった。






剣持 朱梨

何か、



しかし、それらしいものは
なにもない。

剣持 朱梨

杏子、

小鳥遊 杏子

ごめんね、あたしにもわからない

杏子はただ首を振る。

剣持 朱梨

オッサンは?

来栖 康青

ない。
と言うよりこれは運を試されているような気がする


美登里さんを置いてきたのが
余程こたえているのだろうか、

気力がない。

来栖 康青

奴は「当ててごらん」と言っただろう

「考えるのも面倒だ」

そんな顔をしている。







剣持 朱梨

3つにひとつ……ここにきて運任せってか!?



確かに、
運も実力のうちと言うけれど。


でもこれは
ただの謎解きじゃない。

あんな化け物を見た後に
当てずっぽうで
答えを出すなんて





そんな、





綺羅星 うさぎ

赤よ! 昔っから正義は赤だったじゃない

来栖 康青

俺はなんでもいいよ

小鳥遊 杏子

こんな難しいこと……選べないよ










さあどうする?

A:2と書かれた赤い扉を開ける。



B:1と書かれた青い扉を開ける。



C:7と書かれた緑の扉を開ける。

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