亀の恩返し

11.竜宮城へ。
























竜宮城に着くと
乙姫様が出迎えてくれた。

太郎様、この度はうちのカメを助けて下さって感謝致しますわ

いやあ、大したことはやってないっすよ

むしろこんな城に呼んで下さって、お礼を言わにゃならんのは俺のほうですわ

ほほ、謙虚な方

ささ、奥へ





























奥座敷には
世界の海から集められた食材と
それを贅沢に使った料理の数々が
並んでいた。


とても1人でなど
食べきれない量に
太郎さんは目を瞬かせる。

さあ、どんどん召し上がれ

凄い! 凄いよ!!
こんな美味いもん食ったことねぇ!


太郎さんの横で乙姫様は
甲斐甲斐しく世話を焼く。


カメの私にはできないことだ。
少し羨ましい。

ほほほ。さあ、太郎様。お酒もどうぞ。蔵出しの美酒にございます

夢みたいだ!!


太郎さんの前に
さっ、と踊り子たちが立ち並び
腰をくねらせて舞う。


元は全て魚だが、そこは乙姫様の妖力。
太郎さんには
美女の集団に見えているのだろう。


その妖艶な舞に
太郎さんの目は釘づけになっていた。








取り巻くのは全て選りすぐりの美女。

しかも乙姫様御自らが
お酌をしてくれる。






貧しい漁師には
一生汗水流して働いたところで
手に入ることなどない
夢のような世界がそこにはあった。


ありがとな、カメ

い、いえ

太郎さんは大喜びだった。
私も嬉しかった。











しがないカメの私は
料理も作れないし舞いも舞えない。

お酌など、できるはずもない。







できることなら私も
美女に見えればよかったのだけれども
それは過ぎた贅沢というもの。


嬉しそうにしている太郎さんを
眺めているだけで




私は幸せだった。














ただひとつ、

乙姫様に取られちゃわないようにね

魔女の言葉が
胸に引っかかったまま。
































楽しい時はあっという間に過ぎるもの。

気がつけば太郎さんをお連れしてから
数年の月日が過ぎていた。













奥座敷から太郎さんの笑い声が聞こえる。
乙姫様や踊り子たちの嬌声も聞こえる。

……


これでいいのだろうか。



そんな疑問が
私の中で日に日に膨らんでいた。







A.乙姫に太郎を帰すべきだと進言する。

B.太郎に帰ろうと言う。

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