亀の恩返し
13.魚があらわれた。
太郎さんを背に乗せて
海を泳いでいると
前に魚影が見えた。
あ~ら、カメじゃないの
現れたのは「海の魔女」。
魔法を使うかどうかは知らないが
海の底に沈む沈没船を
ねぐらにして
いろいろな薬を作っている。
魚のくせに竜宮城に勤めない
変わり者だ。
噂では
昔は乙姫様と並ぶほどの
美しい人魚だったそうだが
人間の姿に嫌気がさして
今では魚として
生きているのだと言う。
……それが例の太郎さん?
彼女に
かつての面影はない。
足も
美貌も
そこにはない。
なかなかいい男じゃないの
魔女は、太郎さんをじろじろと
品定めするように見ると
にやりと笑った。
……気をつけなさいよ~?
乙姫様に取られちゃわないようにね
乙姫様はそんな方じゃありません!
あら、有名な話よ?
それに乙姫様にその気がなくたってあの美貌ですもの。
男のほうがコロッといっちゃうわ
太郎さんもそんな人じゃありません!!
彼女は乙姫様と仲が悪いらしい。
何故、仲が悪いのかは知らない。
きっと、こうやって
不安にさせるようなことばかり
言うからではないかと思う。
そ・こ・で!
いいものがあるのよぉ~
ものすご~くいいものだから、そうねぇ……カメの齢と引き換えでなら譲ってあ・げ・る
魔女は小さな小瓶を取り出すと
ひらひらと見せびらかすように
振って見せた。
私は、
A.小瓶について聞く。
B.立ち去る。