ぱちぱちというキーボードを叩く音と、ペンタブにペンをこすりつける僅かな音、壁に掛けられた時計の針の音だけが世界の全てだった。
十二月の事を陰暦で師走と言う。
師が走り回る程忙しいから師走、という語源の正誤は兎も角、一年の締めくくりという事で、企業としても、神城一族の当主としてもすべき事が山のようにあった。
と言っても、殆どの企業としての仕事は七篠に振ってあり、学校内での仕事は雪柳に振っていて、僕が直接でなくてはならない会議は夜に回してもらっている。
放課後に出来る事はメールチェックくらいだ。メールチェックにしたってせいぜい一日千通程度。大した数ではない。