翌朝、ジョセフとポテトは「女神の湯」に向かって歩いていた。ポテトは興奮気味に話し始めた

それにしても先輩、やっぱりすごいです!シャーマンがユイちゃんの母親だったとは~

ふっ、これが大都会
キャットタウンで培った
警察の勘よ

でも、温泉の有毒ガスのトリックをよくわかりましたね

はは、村の地下の秘密と温泉でピンときたんだ。俺の目はごまかせないさ

ではあのシャーマンが宙に浮いたとか、何匹にも見えるっていうトリックは?

ふっ、あの小屋の近くは夜になると濃度の濃い有毒ガスが出始める

それを知ってるユイかシャーマンが誘導して、幻覚を見せたんだ
自分たちは安全な場所にいたんだろう

初日にこの辺りで迷ったオレは、骸骨の幻覚をみた、それもガスのせいかもしれない

ポテトはさらに尊敬のまなざしを
ジョセフに向けた

さすが鷹の目を持つ猫ですね!

ふっ、また一つ大きな事件を解決してしまったな...

先輩...

実は、白骨遺体が発見されたとき、ジョセフはすでに鑑識の猫から重要な情報を得ていたのだ。

鑑識の猫

カズオさんの死因はガス中毒ですね

鑑識の猫

今回の白骨遺体はまだ分かりませんが、状態からみると10年ほど経っているようです

カズオはガス中毒だったのか

外からガスを小屋に流し込んだということか?

鑑識の猫

いいえ、白骨遺体が隠されていた穴を見てください。

鑑識の猫

ここにパイプがあるでしょう。温泉は流れてないけど、ガスだけは流れているようですね

温泉のパイプにガスが?

鑑識の猫

ええ、硫化水素ですね。あまり濃くなると中毒死しますから。

しかし、ここの小屋はじいさんが使っている小屋だぞ。そんなガスが出てたら、じいさんも危ないだろう?

鑑識の猫

カズオさんの場合はドアが閉めきられた状態ということ、あと
これは推測ですが...

鑑識の猫

天然のガスの濃度が一時的に濃くなる可能性があるんです

鑑識の猫

例えば、その濃くなる時間帯にここにいたら、中毒死するかもしれません。

例えば、そのガスによって幻覚を見たりすることはあるのか?

鑑識の猫

猫によっては、あるかもしれませんね

ジョセフ

なるほどではあのシャーマンが浮いて見えたり、複数見えたのもこれが原因か

そこで、ジョセフはユイの部屋から持ち出した
一枚の写真を取り出し
鑑識に見せた。

この写真のメス猫と、白骨遺体が持っていた写真のメス猫は同じ猫だと思うか?

鑑識は写真をじっと見つめ、
少し迷うように答えた

鑑識の猫

さすがにそこまでは断言できませんが、骨格や毛並みの感じが似ているような気がします

ジョセフの中でパズルが
カチッとハマった瞬間だった

ありがとう、もう充分さ

ジョセフは全てを知っていたうえで、
さも自分が考えたかのように
振る舞ったのだった。

ポテトはその事実を知らず、
ジョセフをますます尊敬するばかりだった。

ジョセフは内心微笑みながら、
ポテトの純粋な尊敬のまなざしを
受け入れていた。

つづく

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