町に戻った僕たちは
ほかのみんなと合流し
岩礁地帯で起きたことを説明した。

するとみんなは一様に驚いていたけど
無事に合流できたことに
安堵してくれている。
 
 

ソニア

トーヤもだいぶ
頼りになるように
なってきたわね。

トーヤ

いえ、まだまだですよ。

ソニア

ところで魚類。
聞きたいことが
あるんだけど?

ドンガラ

なんです?

ソニア

アンタ、町の外に
そんなモンスターがいて
危険なことを知ってて
岩礁地帯で過ごそうと
してたわけ?

ソニア

……まさか裏切り?
トーヤに万が一のことが
あったら
許さないかんね?

カレン

私も! ミンチにして
つみれ汁やカマボコに
してやるんだから!

 
 
ソニアさんとカレンから
睨み付けられているドンガラさん。

威圧感と冷徹さに満ちたその空気に
ドンガラさんはガタガタと口を震わせ
狼狽しながら激しく首を横に振る。
 
 

ドンガラ

う、裏切るわけ
ないじゃないですか!
あっしだって命の危険を
感じてたんですから!

ソニア

分からないわよ?
自暴自棄になって
心中しようとしてた
可能性だって――。

ドンガラ

ンなバカな!

シンディ

まったく、からかうのは
それくらいに
しておきなさい。

シンディ

ドンガラが私の
使い魔である以上、
それは不可能だから。

ドンガラ

ですよね、姉御ぉ~。

 
 
呆れ返ってカレンたちを
見ているシンディさんに
ドンガラさんは泣きついて喜んだ。

ドンガラさんにとっては
シンディさんが仏様のように
見えているに違いない。


――地獄に仏とはまさにこのことかな。
 
 

カレン

あ、そっか。
疑ってゴメンね、
ドンガラさん。

カレン

でもトーヤに
危害を加えたら
許さないのは本当だからね?

ソニア

ちょっとシンディ。
つまんな~い。
もう少し遊ばせて
ほしかったのにぃ。

ドンガラ

あんたは鬼だ!
地獄の帝王だ!

ソニア

てへっ♪

トーヤ

てはは……。

 
 
相変わらずだなぁ、ソニアさんは。
でもこうやってふざけていられる状況に
戻れたのだと実感できてホッとする。

さて、問題はこれからどうするかだな。
 
 

ソニア

冗談はさておき、魚類。
アンタがサカマタンの
存在を気にせずに
過ごそうとしていた
ということは、ヤツらが
この付近に現れるのは
イレギュラーなこと
なのね?

ドンガラ

おっしゃる通りで。
ヤツらの生息域は南の
もっと温暖なところ。
こんな冷たい海では
活動できない連中
なんでさぁ。

サララ

ましてや今は寒流の
流れが変わって
この地域はいつもより
寒いはずですもんね。

トーヤ

あ、そうだね。
そういえばそうだ。

 
 
サララはたまに鋭い時があるんだよな。
『たまに』なんて言ったら
怒られるかもだけど。

だとするとサカマタンたちが
この地域にいるというのは
何か裏があるってことなんだろうな。
 
 

ソニア

これはチャンスよ。
ヤツらを締め上げて
情報を聞き出しましょう。
何か分かるかもしれない。

トーヤ

そういえば、
ビセットさんたちは
何か有益そうな情報を
仕入れられましたか?

ビセット

残念ながら
めぼしいものは何も。
ただ、今も話に出た
温度のことなんですが。

トーヤ

この地域がいつもよりも
寒いってことですか?

ビセット

えぇ。その寒さが
尋常じゃない
らしいんです。

ビセット

寒さに耐えかねて
南へ引っ越す人も
続出しているとか。

トーヤ

そんなにですかっ!?

ソニア

ドンガラはどうなの?
寒い?

ドンガラ

あっしは寒さに強いんで
あまり気にならなかった
感じですね。

ソニア

そっか。んじゃとりあえず
サカマタンをはんご――
じゃなくて、遊んであげて
話を聞きましょう。

トーヤ

地下道を通れば最短距離で
サカマタンのいる場所へ
行けますよ。

ソニア

あ、トーヤ。
その地下道だけど、
進みながら埋めて
元に戻していきなさいよ?

トーヤ

え?

ソニア

原状回復は
大事なことだから。
やりっぱなしはダメ。
忘れないようにね?

トーヤ

は、はい……。

 
 
やけに真面目なことを言うソニアさん。
無茶苦茶な時もあれば
真面目な時もあって
本当に掴み所のない人だなぁ。

でも確かに僕たちがいなくなったあと、
誰かに悪用されたら大変だもんね。
 
 

 
 
次回へ続く!
 

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