もしここが地の世界だったら
エルムがいてくれて、
多少は離れた場所にいても
テレパシーで意思疎通が出来た。

彼は僕の使い魔だから
そういう能力がある。
もちろん、ロンメルでもいいけど
彼の属性はまだ判明してないからなぁ。

そしてそういう状況だったら
このピンチも
脱しやすかったかもしれない。




ただ、僕は地の世界のことを思い出して、
とある方法を思いついたのだった。
 
 

トーヤ

シンディさん、
僕、思いついたことが
あるんですけどね。

シンディ

ん? 何?

トーヤ

ここから町まで
トンネルを造って
地下を移動するというのは
どうですか?

トーヤ

実は僕、
地の世界で――。

 
 
僕は地の世界において、
法外な通行料をとるブロッコの町での
出来事を話した。

あの時は僕とソニアさんが町に入って
内部から外へ地下通路を造ったんだよね。

おかげでふたり分の通行料で
全員が町の中へ侵入できた。



あの時はソニアさんの魔法に頼ったけど
今の僕には地の欠片があるから
その力を使えばきっと僕でも
地下に通路を造ることが出来るはず。

トンネルの距離はあの時と
比べものにならないほど長いけど
地の欠片なら
大丈夫……だと……思う……。
 
 

シンディ

なるほど、
それはいいアイデアね。
やってみる価値は
ありそうな気がする。

ドンガラ

あっしも賛成です。
ある程度の深さのある
地下ならヤツらに
気付かれずに
逃げられやすよ。

トーヤ

うん、じゃ、
やってみます。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
僕は地の欠片を握りしめ、
そこへ意識を集中させた。

地の欠片よ、どうか僕に力を。
僕らが通れる大きさのトンネルを
地面に作り出してくれ……。
 
 

シンディ

あっ……。

ドンガラ

地面に穴が
出来ていきやすね。

シンディ

しかもご丁寧に
降りやすいように
階段まで。
トーヤの優しい性格が
反映されてるのかしらね。

 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
やがて僕の手のひらの感触が変化した。
動きが落ち着いたというか、
力の行使が止まった感じ。
それが直感的というか本能的に分かる。

きっとある程度の深さまで
トンネルが完成したんだろうな。


あとはトンネルを進むのに合わせて
新たに通路が
広がっていくような気がする。
 
 

トーヤ

では、進みましょう。
ただ、僕は地の欠片の力を
使い続けているので
シンディさんは
ライティングの魔法で
内部を照らしながら
進んでもらえますか?

シンディ

分かったわ。

シンディ

…………。

 
 
 
 
 

シンディ

ライティング……。

 
 
 
 
 
シンディさんはライティングの魔法で
手の中に光球を作り出した。

淡い光が周囲を照らし、
それをトンネルの奥へとかざすと
入口付近がハッキリ見えている。

そしてその状態でシンディさんが
先頭を切ってトンネルを降りていき、
次に僕が地の欠片の力を使いながら進んだ。

最後にドンガラさんが続く。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
トンネルの内部は
僕たちの足音くらいしかしない。

外部の音はすでに届いてこない。

それだけトンネルの奥深くまで
進んだということなのか、
外が静かなのか。
あるいはその両方なのか。

いずれにしても無事にトンネルを
進むことが出来ている。




さすが地の欠片で造り出した
トンネルということもあって
強度や歩きやすさは問題ない。

壁も地面も石膏を塗ったような
滑らかな表面になっている。


そして僕が進むスピードに合わせて
トンネルは前方へ
拡張していっているようだ。

しかもトンネルは自然と町の方向へ
向いているのが地の欠片を通じて
伝わってくる。
 
 

ドンガラ

それにしても
火山の時といい
地の欠片ってやつは
スゲェ代物でさぁね。

トーヤ

だからこそ使いすぎたり
悪用されたりしないように
気をつけないと
いけないんだよ。

シンディ

そうね。
大きな力は諸刃の剣。
使い方次第で
幸せにも不幸にもする。

シンディ

ま、トーヤなら
きっと大丈夫だと
思うけど。
私はそう思う。

トーヤ

いやぁ……。

 
 
その後、僕たちは町の反対側、
岩礁地帯からは死角になる位置まで
トンネルを進むと、
そこから地上への階段を作って
外へと出た。

そして町へと無事に戻ることが出来て
みんなと合流したのだった。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第367幕 起死回生の奇策!

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