僕たちの前方から
向かってくる海流に対しては
ドンガラさんの泳ぎに加え、
後方へ水や風の魔法を放った際の
反作用を利用して進むことになった。

これなら減速したドンガラさんの泳ぎを
補助することが出来る。


当初の予定と比べても
そんなにペースを落とさずに
進めるんじゃないかな。
 
 

ソニア

では、出発!

ドンガラ

あいあいさー。

 
 
ドンガラさんは再び泳ぎ始めた。
そしてしばらくは向かってくる海流も
そんなに速くなくて、
今までと変わらないペースで進んでいく。


でも次第に水の流れは
強く僕たちに
ぶつかってくるようになって
ドンガラさんの動きも鈍り始める。

それになんとなく
周囲が寒くなったような。
これも海流の影響かな?
 
 

ビセット

最初は私が
補助動力担当を
務めさせて
いただきましょう。

ソニア

よろ~☆

 
 
ビセットさんは振り落とされないように
注意しながら最後尾へと移動すると
魔法の詠唱を始めた。

それにしても水の魔法が得意な人が
たくさんいて助かるなぁ。
 
 
 
 
 

ビセット

アクアツイスト!

 
 
 
 
 
ビセットさんが魔法を行使すると
ドンガラさんの泳ぐスピードが
大幅に上がった。



――と、言っても、
今までのスピードに
戻ったに過ぎないけど。

もちろん、乗っている僕たちが
前方から受ける水流は増している。
振り落とされないように注意しないと。
 
 

ビセット

またスピードが
大きく落ちてきたら
魔法を使いましょう。

サララ

なんで魔法を
使っていなくても
すぐにスピードが
落ちないんですかね?

トーヤ

それは慣性だよ。
一定方向に加えられた力は
外力の影響がなければ
同じ方向に
作用しようとするからね。

サララ

じゃ、このまま
ずっと進むんですか?

トーヤ

ううん、
僕たちには水流が
ぶつかってきているから
そのうち止まっちゃうよ。

サララ

そうなんですかぁ。
難しいですねぇ。

 
 
まぁ、理論的に考えるのは難しいかもね。

目の前で起きている事象を
そのまま捉えて
『こうするとこうなる』って
直感的に捉えるだけで
いいような気もする。

僕たちは学者さんじゃないんだしね。
 
 

シンディ

ドンガラ、調子はどう?

ドンガラ

大丈夫でさぁ。
この程度の水流なら
余裕で抜けられます。

ドンガラ

それにこの流れ、
おそらく元々は
南北巡回海流だと
思うんですがね。

カレン

南北巡回海流?

ドンガラ

世界の南北を
縦断する海流でして
この付近は北から南へ
流れてる寒流なんですよ。

トーヤ

そっか、
だから今までと比べて
寒くなったんですね。

ドンガラ

だとすると
もう少し直進すると海流が
蛇行するエリアに入って
流れから抜けるんで
今よりは穏やかに
なるんじゃないかと
思いやす。

シンディ

ま、海流に異変が
起きてるから
蛇行がないことも
ありえそうだけど。

ドンガラ

えぇ、その可能性も
否定できませんけどね。

 
 
そうだよね、これだけ大規模に
変化が起きているなら
海流の動きが変わっていても
おかしくないよね。

蛇行が大きくなっているかもだし、
逆に寒流が広範囲に広がっていることも
考えられる。
 
 

ソニア

魚類、
少しでも流れが穏やかに
なっていそうなエリアを
進んでみて。

ソニア

ニオイとか雰囲気で
ある程度の推測は
付くでしょう?

カレン

ただ、あまりにも
進路を外れるなら、
多少流れがきつくても
そのまま進んだ方が
良い場合もありますよね。

ソニア

そうね。
そのバランスは
魚類に任せるわ。

ドンガラ

分かりやした。
そういう方針で
進路を選んでみやす。

 
 
この先の状況や海流の動きが
事前に分かるような道具があれば
便利なんだけどなぁ。

セーラさんなら作ってくれそうだけど。


もしそういう道具が普及したら
もっと安全に
移動できるんだろうけどなぁ。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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