地の欠片の力を行使し
火山地帯を無事に通過した僕たち。
おかげでほとんどタイムロスが無く
進めている。

ただ、
またいつ何が起きるか分からないから
慎重に進んでいかないと。
 
 

トーヤ

ん?

 
 
後方からかすかに爆発音が聞こえてくる。
きっと活動を再開した火山が
噴火しているのだろう。

地の欠片の力では一時的にしか
火山を制御できないもんね。
 
 

ドンガラ

皆様方っ、
ちょいと止まって
様子を見させて
もらいますぜ。

トーヤ

えっ?

 
 
ドンガラさんは
急にスピードと高度を落とし
周囲を見回しながら
近くの適当な岩陰へと着陸した。

そして険しい表情で水の流れを
ヒレで感じ取っている。
 
 

トーヤ

どうしたんです?

ドンガラ

水の流れが
おかしいんでさぁ。
いつもと何か違う……。

トーヤ

流れ……ですか……。

カレン

それで警戒して
地面に降りたんですね?

ドンガラ

えぇ、まぁ……。

 
 
この付近のことに関しては
きっとこの場にいる誰よりも
ドンガラさんが詳しい。

それに水中での異変を感じ取る器官だって
僕たちより発達しているだろうし。


事実、直後にドンガラさんは
水の流れ以外にも
気が付いたことがあるようで――。
 
 

ドンガラ

水のニオイも
温度も圧力も。
何もかもが異質だ。
こりゃどういうことだ?

ソニア

魚類、
この先には進めそう?
危険レベルは高そう?

ドンガラ

今のところ
注意して徐行すれば
ある程度は
進めると思いやす。

ドンガラ

ただ、この異変の
原因が分からねぇんで
不測の事態が起きる
可能性はありやすね。

ソニア

そう……。

 
 
ソニアさんは目を瞑り、黙ってしまった。
何か考えているのかな?

こういう時は邪魔しない方がいいよね。
 
 

シンディ

トーヤはどう思う?

トーヤ

情報が少なすぎて
判断が難しいですね。
もう少し何か
手がかりがあれば……。

ビセット

……あの、ちょっと
よろしいですか?

 
 
その時、
ビセットさんが僕に声をかけてくる。

今はいつもと違って真面目モード。
ということは、
何か気が付いたことでもあるのかな?
 
 

トーヤ

どうしたんです、
ビセットさん?

ビセット

私は海と深く関わって
生活していたので
ドンガラ殿の話や
現在の状況から
なんとなく推測が
つきまして。

トーヤ

と、言いますと?

ビセット

先ほど私たちは
活発になった火山帯を
通過してきましたよね?

トーヤ

はい。

ビセット

噴火による堆積物や
地殻変動、地形の変化が
見られました。
それも広範囲で。

トーヤ

ですね。

ビセット

おそらく水温も
同様に広い範囲で変化が
起きているでしょう。

トーヤ

そうかもしれませんね。

ビセット

だとすると、
それらの影響で
海流だか潮流だかに、
影響が出ているのでは
ないでしょうか?

トーヤ

あっ! なるほど!

 
 
確かにビセットさんの言う通りかも。

あれだけ広範囲で地形の変化や
温度変化があるなら
水の流れがいつもと変わっていたとしても
おかしくない。


そしてビセットさんの話を聞いて
シンディさんやカレンもハッと
小さく息を呑む。

そしてソニアさんも目を開け、
ポンと手を叩いたのだった。
 
 

ソニア

ビセット、
たまには役に立つのね?

ビセット

“たまには”は
余計ですよ……。

ソニア

魚類、
ビセットの話を聞いて
どう思った?

ドンガラ

えぇ、その可能性は
あり得ると思いやす。
そうか、海流の変化か。

カレン

海流の動きが変われば
ドンガラさんが感じた
色々な変化も
納得いきますね。

ビセット

海流は地面の下の動きや
地形、水温なんかが
複雑に影響し合って
発生していますからねぃ。

シンディ

世界にこれだけ大規模な
変化が起きているなら
海流に影響が出ても
おかしくないわね。

サララ

よく分からないですけど
みんなの意見が
同じ方向っぽいので
当たりだと思います。

シンディ

はいはい……。

トーヤ

てはは……。

 
 
サララは相変わらずだなぁ……。

でも海に詳しいビセットさんや
ドンガラさんの意見が一致したみたいだし
僕も海流の動きが変わったというのが
当たりのような気がするなぁ。

ま、問題はそれが僕たちの行く手に
どういう影響が出るかだな。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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