僕は地の欠片を握りしめ、
火山活動が沈静化するよう
念じてみることにした。

ソニアさんの話だと、
これで地の欠片の力が行使できるという。
 
 

トーヤ

地の欠片よ、
僕の想いに応え
その力を解放せよ!

トーヤ

火山よ、静まれ!
落ち着け!

 
 
僕が念じると、
地の欠片は淡い光を発し始めた。

次第にそれは強くなっていき、
同時に内側から力が吹き出すような
流れを感じるようになってくる。

その力の一部は握った手を介して
僕の体にも入り込んでくる。




力強いけど温かくて優しい。
苦しいとか痛いとか、
僕の体や精神に悪影響を及ぼすような
そういう感覚は全くない。

むしろ癒され浄化されていくような
心地よさがある。
 
 

トーヤ

いや、これは本当に
僕の体が
癒されていってるんだ。

 
 
地の欠片の力を行使したことによる
副次的な効果なのか、
僕の体力が回復していく。
疲労も取れていく。

もしかしたら怪我や病気、
状態異常なども回復するのかもしれない。



まぁ、僕には状態異常無効化の
能力があるから
もしその副次的な効果があったとしても
意味ないんだけど。

ただ、地の欠片に
そういう効果があるのだとしたら
ありがたいことだ。
だってカレンやソニアさん、
地の属性のみんなにとっては有益だもん。





それにしてもテムートは
こんなチートなアイテムを使ってたのか。
今にして思えば、なんだかズルイ……。
こうして使ってみて
なおさらそれを強く感じる。

地の欠片の力で石化能力とか
ハイブリッドモンスターを
操ってたわけだからね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

トーヤ

ふぅ……。

 
 
地の欠片の光が強くなり出して
しばらく経った時のこと、
ようやく光も力の奔流も落ち着いて
安定し始めた。

ただ、僕の髪は逆立っているというか、
依然としてなびいたまま。
全身もエメラルドグリーンの光に
包まれている。
 
 

ソニア

どうやら力を
制御できているみたいね。
火山活動も
収まりつつあるわ。

トーヤ

そうみたいですね。

 
 
見てみると、
目の前にある火山はすでに活動が
沈静化している。

噴煙は完全に収まり、
マグマは落ち着きを取り戻したのか
沈黙している。
熱水や地震も止まったようだ。


そしてきっと周りの火山も
僕たちのいる位置に近いほど
同様になっていることだろう。
 
 

ソニア

今の状態、
欠片の真の力を
引き出している証拠よ。

トーヤ

と言いますと?

ソニア

力に魅了され、
心に曇りがあると
全身を覆う光は
発生しないの。

ソニア

それに精神も肉体も
徐々に蝕まれていく。
本人はその異変に
気付かないけどね。

 
 
やっぱりどんなものにも
メリットとデメリットがあるようだ。

心に戒めておかないとな……。
 
 

ソニア

その状態だと
欠片の力を
半分も行使できないわ。

トーヤ

そうなんですか。

トーヤ

つまりテムートは
使いこなしていなかった
ってことですか?

ソニア

そうなるわね。

トーヤ

あれで力の
半分以下……。

 
 
あらためて僕は地の欠片の力が
恐ろしくなった。
だってあんなに苦戦したのに
真の力を発揮していなかったなんて。

だからこそ悪人に
欠片の力を使わせちゃいけないって
僕は強く想う。
 
 

ソニア

今、心地良い
感覚でしょ?

トーヤ

はい。体が
癒されていく感じです。

ソニア

ただ、何事も
使いすぎは良くない。
必ず反動があるわ。
様子を見ながら
使っていきましょう。

トーヤ

はい。

ソニア

よし、魚類。
念のため慎重に
火山地帯を
通過するわよ。

ドンガラ

お任せをっ!

 
 
こうして僕たちは
沈静化した火山地帯を無事に通過した。

そして噴石の届かないであろう位置まで
辿り着いたところで
地の欠片の力を行使するのを
やめたのだった。



ちなみに火山はその直後に
再び活動を活発化させ始める。

やっぱり根本的に事態を解決するには
世界のバランスを崩している原因を
排除しないといけないってことなんだね。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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