鳥肌立ってきちゃった。

目の前に飛んでいる奇妙な蝶の群れに、美咲は一瞬身体を震わせた。

それと同時に、洞穴内に微かな風が吹いていることも感じ取った。

影力を纏っているから、油断はできないな。
俺達に気付いてから動きが変だ。

大宮の一言もあり、蝶の動きをよく見ると、羽を激しく動かしているものと、ゆっくり動かしているもの、さらには円を描くように飛んでいるものなど様々であった。

たしかに変な動き。
でも、全然攻撃してくるようには見えないね。

すると、それぞれの蝶の羽から微量に鱗粉がバラまかれ始める。

その鱗粉は、たちまち2人の視界を遮る。

目隠しか。
この粉を吸ってもやばいな。

うん。
そしたら、私の翼で吹き飛ばしてみる。

そっちにお返しするわ。

光の翼を羽ばたかせ、鱗粉を吹き飛ばしていく。

これでどう?

鱗粉は風によって吹き飛ばされたが、蝶は奇妙な舞を続けている。

少し様子をうかがっている間に、再び鱗粉をまき散らし始めた。

今度は緑色の鱗粉。

うん。
でも、また吹き飛ばしてみるよ!

あれ?

どうした?

再度鱗粉を吹き飛ばそうと翼を動かそうとしたが、うまく動かすことができない。

身体が痺れてるような感じで、全然翼を動かせない。

ちっ。
俺も少しピリついてる。
痺れ粉か。

うん。
もしかしたら、さっきの紫色の鱗粉のせいだと思う。

そうなると、この緑色の鱗粉も迂闊に吹き飛ばさない方がいいな。
微量でも空気の流れで影響があるのかもしれない。

手を出すのが難しい状況となってしまったが、鱗粉がいつ洞穴内の風で勢いを増してこちらに迫ってくるか分からない。

とりあえず、痺れが取れるまではそこにいろ。

ごめんね。

動けない美咲を気遣うと、大宮は蝶の群れへ視線を移す。

すると、鱗粉の向こう側から、何者かが近付いてくる。

誰だ!!

どうかね?
私の美しい蝶達は。
素晴らしい舞だろ。

鱗粉を浴びながら眼鏡をかけた男が現れた。

そして、不気味に笑いながら蝶の群れを褒め称える。

第4章--愁いの沼編--(106話)-蝶の舞①-

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