シンディさんが指差した方向。
そちらを見てみると、
そこでは驚きの光景が広がっていた。



なんと海底山脈の山頂付近から
白い煙が勢いよく噴き上がっていたのだ。

しかもそれはひとつの山だけじゃない。
目の前に連なっている山脈の
あちこちが同じ状態になっている。


だから避けて通るにしても
山脈全体を迂回しないと
いけないだろうな。
そうなるとかなりの時間のロスだ。

そういえば、
臭いだけじゃなくて辺りの水温も
今までより高いような……。
 
 

トーヤ

もしかしてこれは
火山の噴火!?

ビセット

少なくとも活動が
活発になっているのは
間違いないでしょう。

ソニア

魚類、迂回せずに
ここへ来たということと
さっきの驚いた反応――。
つまりこの火山活動は
イレギュラーね?

ドンガラ

おっしゃる通りで。
さすがソニア様。

 
 
そうか、もしこの地域で火山活動が
活発になっていると
事前に知っているなら
こんな危険な場所を
通ろうとはしないはずだもんね。


タイミングが悪いなぁ……。
 
 

ドンガラ

でもなんで急に……。
こんなこと初めてでサァ。

ソニア

最後に活動が
活発だったのはいつ?

ドンガラ

さぁ?
あっしらアーゴの
長老でさえ
そんな話をしてた覚えが
ないんで百年以上は
沈黙してたんじゃ
ないですかね。

ソニア

なるほどね。
そういうことか。

トーヤ

ソニアさん、
心当たりでもあるのかな?

ビセット

もしかしてこれは
世界のバランスが
崩れている影響とか?

カレン

そうかもですね。
地の世界でも地震が
相次いでいましたから。

トーヤ

あっ!
確かにそうだね。

 
 
カレンの言う通りだ。
地の世界でも地の欠片の影響で
異変が起きていた。

そうか、それは『地の欠片』だから
地震が起きたというワケじゃなくて、
世界そのもののバランスが崩れてるのが
原因だったんだ。



そうなるとほかの世界でも
似たような現象が起きているんだろうな。
 
 

ソニア

魚類、
この山脈を迂回するには
どれくらいかかる?

ドンガラ

『この山脈』というのは
どの範囲を差すんで?

ソニア

連なってる山の果て。
きっと山脈の全体が
この状態だろうから。

ドンガラ

迂回するんですかい!?
そんな無茶な!
この世界の3分の1くらい
距離がありますよっ!

ドンガラ

あっしのスピードでも
数か月はかかると
思いやす。

サララ

あのあの、
どこか通り抜けられそうな
地域はないですか?

ビセット

そうですね。
火山の切れ目というか
活動の弱い地域とか。

ビセット

それなら全体を
迂回するより
時間はかかりませんね。

シンディ

私もそれに賛成。
ドンガラに
スピードアップの
補助魔法をかけて
一気に抜けましょう。

カレン

で、私たちは
結界魔法か防御魔法で
万が一に備える、と。

ソニア

……却下。

トーヤ

ソニアさん……。

 
 
ソニアさんはみんなの意見に対して
即座に冷たい態度で突っぱねた。

今回は天の邪鬼とか
へそ曲がりで言っている感じじゃない。
何か思うところがあるんだろうな。

そもそも僕もみんなの意見には――。
 
 

ソニア

ビセットもシンディも
考えは理解できるわ。
でもリスクが高すぎる。

ビセット

そうですかね?
私は多少のリスクは
仕方ないと
思うんですけど。

ソニア

トーヤはどう思う?
リーダーとしての
考えを聞かせて。

 
 
みんなの視線が一斉に僕に集まる。

僕の考えは……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第356幕 進むか? 迂回するか?

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