我を失ったカレンは
ソニアさんに向かって爆発魔法を唱えた。
このままだとソニアさんだけじゃなくて、
みんながとばっちりを受ける。
迫る爆炎の塊。
白く眩い光が瞬時に大きく視界に広がる。
そうか、水の中では炎系の魔法は
効果が薄いから
爆発系の魔法にしたのか。
カレン、我を失ってる割に冷静じゃん!
これが戦闘センスってヤツなのかっ!?
でもその直後――
我を失ったカレンは
ソニアさんに向かって爆発魔法を唱えた。
このままだとソニアさんだけじゃなくて、
みんながとばっちりを受ける。
迫る爆炎の塊。
白く眩い光が瞬時に大きく視界に広がる。
そうか、水の中では炎系の魔法は
効果が薄いから
爆発系の魔法にしたのか。
カレン、我を失ってる割に冷静じゃん!
これが戦闘センスってヤツなのかっ!?
でもその直後――
よっと!
ソニアさんは涼しい顔をして
爆炎の塊を軽く払い除けた。
まるで飛んできた羽虫を
払うかのような仕草でしれっと。
するとその爆炎の塊は
ソニアさんの手に叩かれて放物線を描き
遠くの丘へと打ち返されたのだった。
直後、その丘は粉々に吹っ飛び、
ワンテンポ遅れて爆音が響いてくる。
絶句する僕たち。
呆然とその様子を眺め続ける。
…………。
わわっ、すごいですね!
丘が吹っ飛びましたよ!
やがて興奮気味にサララが叫んだ。
瞳にはキラキラとした星が浮かび
実に楽しそうだ。
それでようやく僕たちも我を取り戻す。
怒りのパワーで
いつもより威力が
増しているようですね……。
もぅ、カレンったら
そんなに怒らないでよ。
トーヤならほら、
返すわよぉ……。
わっ……と……。
僕はソニアさんに背中を押され、
カレンの方へ向かってよろめいた。
すると即座にカレンが僕に近寄って
包み込むように抱きしめてくる。
わふっ……。
カレンの匂いがする。
それに温かくて
なんだか照れる……。
まったく!
油断も隙も
ないんだから!
…………。
ナイフみたいな鋭い目付きで
ソニアさんを睨み付けるカレン。
まるで呪い殺そうとしているような
勢いだな……。
でも僕を抱きしめている腕はギュッと
力が入っているけど痛くはなくて
なんというか優しさが感じられる。
大丈夫だよ。
僕はカレン以外に
惹かれることは
ないから。
なっ!?
……う、うん。
最初はビックリしていたみたいだけど
すぐに頬を赤く染めて微笑んでくれた。
どうやらカレンは
機嫌を直してくれたみたいだ。
でもこれは僕の本当の気持ちだから
喜んでくれて嬉しいな。
そしてそんな僕たちを
ニタニタ見ていたソニアさんは
ふと視線をドンガラさんへと向けた。
その瞬間、穏やかだった笑みは
どこか寒気を感じる笑みへと変化する。
それに対し、
ドンガラさんは体をビクッと震わせ、
直後にサーッと血の気が引いていく。
で、魚類。
忘れるところだったけど
さっき何か言った?
手始めにヒレの1本くらい
折ってあげよっか?
は……ははは……
お嬢様、
わたくしは何も
言っておりませんよ。
お嬢様に楯突くわけ
ないじゃないですか。
そうよねぇ。
わー、
ドンガラさんが
素直になってますー!
わたくしは
生まれた瞬間から
素直ですけど何か?
ソニアさんは
素直な子が
大好きらしいですから
それならドンガラさんも
安心ですね。
おっしゃる通りで。
はっはっは。
ドンガラさんはソニアさんの実力を
目の当たりにして、
彼女に対する認識が変わったようだ。
ま、まぁ、ソニアさんは
悪い人じゃないと思うんだけどね。
たまに暴走するけど、
きっとふざけてやってるんだろうし……。
――っ!
そんな感じでドンガラさんが
和やかに笑っていた時のことだった。
不意に彼はシリアスな顔になって
急ブレーキをかけた。
僕たちは慣性で
前のめりになりそうになるけど、
みんなで体を支え合って
それになんとか耐える。
程なくドンガラさんは完全に
その場で止まってしまったのだった。
どうしたの?
急にスピードを
落としちゃって。
これはもしや……。
臭うわね……。
誰ですかっ?
オナラしたのはっ?
確かに鼻をひくつかせてみると
辺りには硫黄臭のようなものが
漂っているような気がする。
水の中でもしっかり臭うんだね。
サララ、
責めちゃダメだよ。
オナラは我慢すると
体に良くないんだよ?
それに生理現象だから
恥ずかしいことじゃない。
配慮は必要かもだけど。
あ……
ごめんなさいです。
犯人はトーヤくん
だったんですねぇ。
ぼ、僕じゃないよ!
オナラじゃないわよ。
前を見てみなさい。
犯人はアレよ。
シンディさんは
少し呆れたような顔をしつつ
前方を指差した。
するとそこには――。
次回へ続く!