ドンガラさんのいた山地を出発して
2日が経った。
さすが周辺で暮らしているアーゴの中で
最速の泳ぎを誇るということもあって
休みながら進んでいても
山や森、町などをどんどん越えていく。
この速さは思っていた以上だなぁ。
ドンガラさんのいた山地を出発して
2日が経った。
さすが周辺で暮らしているアーゴの中で
最速の泳ぎを誇るということもあって
休みながら進んでいても
山や森、町などをどんどん越えていく。
この速さは思っていた以上だなぁ。
ヒャーハッハ!
体が軽くて
どんどんスピードが
出せるぜー!
あんまり調子に
乗らないでよ?
痛みが出て
泳げなくなったら
私たちが困るんだから。
分かってますよ、姉御。
元気に返事をするドンガラさん。
その感じだと分かってないような
気がするんだけどなぁ……。
ちょっと良くなると羽目を外しちゃう
患者さんっているからなぁ。
意識して僕たちが観察して、
無理させないようにしないとな。
さて――。
ソニアさん、
このペースだと
目的地までは何日くらい
かかりそうですか?
そぉねぇ。
今より多少ペースが
落ちたとしても
5日くらいあれば
着くんじゃない。
そうですか。
まだまだ遠いんですね。
でもこのスピードで5日ということは
この世界のゲートから
かなり離れた位置に
敵の本拠地があるってことになるな。
もし普通のアーゴだったら
何日かかっていただろう?
トーヤ殿、
どうしますか?
急ぎますか?
いえ、ドンガラさんに
無理させるわけには
いきませんから
このままのペースで
行きましょう。
そうよね。
医師としては
その意見に賛成よ。
私も。むしろ
もう少し遅くても
いいくらいだわ。
トーヤくんたちが
そう言うなら
それが一番ですね、
きっと。
ですねぇ。
皆様、お優しくて
あっし泣けてきやす!
と、僕たちが話していると
ソニアさんだけが不満そうな顔をする。
なんか嫌な予感が……。
ホントにいいの?
この魚類に
ムチ打って急がせれば
所要時間を半分くらいに
短縮できるんじゃない?
んだと、このアマぁ!
たたき落とすぞ、ゴルァ!
え? 何か言った?
タタキにしてほしいって?
んなわけあるかぁっ!
じゃ、どうしてほしいの?
焼き魚、煮魚、蒸し魚、
練り物、干物、お吸い物。
好きなの選んで。
っっっっっ!
途端にドンガラさんの血液が
沸騰していく。
あちこちに血管が浮かび上がって
体も怒りに打ち震えてるもんなぁ。
でもなんとか止めないと。
血圧が上がるのはいいことがないし――
って、違うか……。
ドンガラさん、
素直に謝った方が
いいですよ?
ソニアさん、
本気でやりかねない人
ですから。
その実力もありますし。
僕がヒソヒソ声で
ドンガラさんに話しかけていると
なんだか背後に殺気が……。
振り向くとそこではソニアさんが
ニコニコしながら僕を見つめていた。
ただ、その瞳は氷のように冷たい。
だから自然と寒気が……。
トーヤぁ?
失礼なことばかり
言ってると、
さすがにお姉さん、
怒っちゃうわよ?
あっ!
いや……その……
ごめんなさい。
きゃーん♪
そのウルウルした顔
かーわいい。
素直な子は大好きよぉ。
うん、許しちゃう。
ソニアさんは僕に抱きついて
頭に頬ずりしてきた。
引き離そうとしても力が強くて
僕にはどうにも出来ない。
そして今度は別の方向から
新たな殺気が……。
ちょっとソニアさん!
トーヤに
ベタベタしすぎです!
今度は私が怒りますよっ!
怒ればぁ?
ソニアさんは全く意に介さず
あらためて僕に頬ずりする。
まずいまずいまずいまずいっ!
カレンの目が鬼みたいに吊り上がって
頭から湯気が立ち上ってる!
しかも何かの魔法の詠唱を始めてるし!
掲げた両腕の先、
手の上には爆炎を纏った光球が生まれて
あっという間にクジラほどの
大きさに成長していくッ!
完全に我を失ってるっ!!!
っっっ!
カレン殿っ、
落ち着いてっ!
こんな狭い場所で
しかも至近距離で
攻撃魔法なんてっ!
ビセットさんの言葉は
全く聞こえていないみたい。
止めようとしてももう間に合わない。
エクスプロージョン!
カレンは爆発魔法を
ソニアさんに向かって放った。
っていうか、僕はソニアさんに
抱きつかれたままだから
このままだと僕まで爆発に
巻き込まれてしまう。
いやいやいやいや!
僕たちだけじゃなくて
下にいるドンガラさんはもちろん、
魔法行使者の結界で守られる
カレン以外の全員が
爆発のダメージを受ける。
次回へ続く!