ドンガラさんの攻撃もブレスも
シンディさんには効かなかった。

当然、ドンガラさんは
勝ち目がないことを悟って
負けを認めている。


でもシンディさんはそれを認めず
戦いを続けようとしている。
きっと何か意図があるんだろう。

だから僕たちは黙って見守り続ける。
 
 

シンディ

さぁ、どうする?

ドンガラ

……逆にどうすれば
勝負を終わらせて
くれるんだよ?

シンディ

そうねぇ。
キミ、私の使い魔に
なりなさい。

ドンガラ

使い魔だとっ?

シンディ

使い魔なら
私の命令には
絶対に逆らえない。

シンディ

わざと泳ぐのを
サボるなんてことは
出来ないからね。
私たちは確実に
移動できるってワケ。

ドンガラ

くっ……。

 
 
うーん、シンディさんの方が
一枚も二枚も上手のようだ。



そうか、これを狙って
今まで布石を打ち続けてきたわけだね。

ドンガラさんの逃げ道は
すでに塞がれてしまっているし、
これは受け入れざるを得ないかな。
 
 

シンディ

安心して。
北へ着いたら
使い魔の契約を
解除してあげるから。

ドンガラ

……分かった。
俺も男だ、
その条件でいい。
背中に乗せてやる。

シンディ

では、使い魔の契約を
してもらいましょう。

ドンガラ

――その前にっ!
そっちの女!

 
 
 
 
 

 
 
 

 
 
ドンガラさんはビシッと
ソニアさんに向かって
指(ヒレ?)を差した。


どうしたんだろう?
何か物申したいことでもあるのかな?

でもそれならソニアさんだけじゃなくて
僕たち全員に対してでも
おかしくないだろうに……。
 
 

ソニア

私のこと?

ドンガラ

そうだ!

ソニア

何か用?

ドンガラ

俺にそっちの余ってる
エイヒレをくれ!

ソニア

いいわよ~♪

トーヤ

…………。

 
 
あ……うん……そういうことか……。

おいしいもんね、エイヒレ。
ドンガラさんも好物なんだね、きっと。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その後、ドンガラさんは
エイヒレを食べつつ
旅立ちの準備をした。

今日の旅立ちとなると
例年よりも北への出発が
数日ほど早いらしい。



ま、早ければ早いほど
僕たちは助かるけどね。
  
 

ドンガラ

さて、それじゃ
北へ向けて出発するぜ。

シンディ

それは明日にしましょう。
ドンガラは戦いで
疲れているでしょうから。

シンディ

それとドンガラ、
ちょっと
こっちに来なさい。

ドンガラ

あ……うむ……。

 
 
ドンガラは言われるまま、
シンディさんの横へ歩み寄った。

するとシンディさんは
手のひらをドンガラさんの額に当てて
神経を集中させる。


その手は徐々に淡い光を放ち、
光はやがてドンガラさんの体を駆け巡る。
 
 
 

 
 
 
 
 

カレン

これは診察魔法?

トーヤ

シンディさんも
使えたんですね。

 
 
診察魔法は高度な魔法で
先天的な能力がないと使えない。

カレンが得意な魔法なんだよね。



ただ、使い手としての才能があっても
全員が医師や薬草師になるとは
限らないから、
こうして実際に診察魔法を
お目にかかれることは少ない。

僕の場合はカレンが使っているのを
よく見ているから、
あまり珍しさは感じないけど。
 
 

シンディ

やっぱり……。
ドンガラ、背骨に
長年のダメージが
蓄積してる。

シンディ

無理な泳ぎ方を
してきたのね。
負担がかかりすぎ。
たまに痛みや痺れが
あるんじゃない?

ドンガラ

なぜそれを……?

トーヤ

診察魔法というのは
身体の異常を調べられる
魔法なんですよ。

ドンガラ

そうなのか……。

シンディ

みんな、悪いけど
ドンガラに全速力を
出させるわけには
いかないわ。

シンディ

そうね、この状態だと
70%の力で泳がせるのが
限度ね。

カレン

分かりました。
シンディさんが
そうおっしゃるのなら。

シンディ

とりあえず、
応急処置として
治癒の魔法を
かけておくわ。

シンディ

使い魔のケアも
ご主人様の務めだからね。

 
 
 

トーヤ

…………。

トーヤ

使い魔か……。
ロンメルとエルムは
元気でいるかな……。

 
 
今は離れた場所で過ごしている
ふたりのことを思い出して、
僕は懐かしさというか寂しさを感じた。

早く世界が落ち着いて、
ずっと一緒にいられたらな……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第352幕 決着! シンディの意図

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