ドンガラさんの攻撃もブレスも
シンディさんには効かなかった。
しかも攻撃魔法も使えないとなると、
ドンガラさんに勝ち目はない。
そして本人もそれを痛感したのか、
ドンガラさんは地面に座り込んで
腕組みをしながら
そっぽを向いてしまった。
うーん、
これはヘソを曲げちゃったかな……。
ドンガラさんの攻撃もブレスも
シンディさんには効かなかった。
しかも攻撃魔法も使えないとなると、
ドンガラさんに勝ち目はない。
そして本人もそれを痛感したのか、
ドンガラさんは地面に座り込んで
腕組みをしながら
そっぽを向いてしまった。
うーん、
これはヘソを曲げちゃったかな……。
くそ……。
こうなったら
さっさと俺を倒せぃ!
逃げも隠れもしねぇ!
お断りね。
へっ?
このまま戦いは
続けさせてもらうわ。
でも攻撃はしない。
なんだそりゃ?
それじゃ、
いつまで経っても決着が
つかないじゃねーか。
そうなるわね。
別にいいじゃない。
私の魔法力が尽きたら
あなたにもワンチャン
あるかもよ?
あ、でも魔法力が
ゼロになる前に
魔法力回復薬を
使わせてもらうけどね。
それじゃワンチャンも
ねーじゃねーかっ!
ドンガラさんは即座にツッコミを入れた。
それに対してシンディさんは
クスッと微笑むだけ。
でもシンディさんは
ホントにどうするつもりなんだろう?
埒があかないと思うんだけど?
おいっ、
どういうつもりだ?
さぁね?
別に私たちは1か月くらい
移動が遅れても
そんなに困らないからね。
ちょっ!?
シンディさ――。
僕が叫ぼうとすると
ソニアさんが指で僕の口を押さえた。
そしてウインクをしてくる。
えっと、これは黙って見ておけという
ことなのかな?
1か月だとっ!?
バカヤロー!
それじゃ俺が困る――。
はっ!?
……私の言ってる意味、
理解した?
あ、さっき
逃げも隠れもしないって
言ったわよね?
まさか嘘をつくわけ
ないわよね?
うぐ……。
もしそんなことをしたら
ドンガラは大嘘つきだって
あちこちで言いふらして
やるんだから。
う……く……。
愕然とするドンガラさんと
満面の笑みを浮かべるシンディさん。
実に対照的だ。
そしてようやく僕にも
シンディさんの意図が分かった。
なるほど、
そういうことか……。
どういうことです?
1か月も移動が遅れたら
ほかのアーゴに先行して
北の地へ
辿り着けないってことよ。
エサの食べ放題が
なくなっちゃうって
ワケだよ。
あーっ!
そういうことですかぁ。
さすがシンディさん
ですねぇ。
なるほど、これならお互いに傷付かずに
決着をつけることが出来る。
ドンガラさんは負けを
認めざるをえないだろうな。
ただ、それでもやっぱり
彼がヘソを曲げてしまう可能性は
あるんじゃないなぁ……。
分かった!
俺の負けだっ!
負けを認めるっ!
ククク、これで決着だな。
え? 何か言った?
聞こえなーい。
早く戦いを
続けましょう。
んなっ!? 嘘つけっ!
聞こえてるだろっ!
っ?
ほら、
かかってきなさい。
シンディさんはドンガラさんの声が
聞こえないふりをしている。
例えドンガラさんが負けを認めても
シンディさんに
それが伝わっていなければ
戦いは終わらないってことか。
……なんかズルイ。
ちょっとドンガラさんが
可哀想に思えてきた。
一方、ドンガラさんは焦りながら
僕たちの方を向いて叫ぶ。
おい、お前ら!
俺が負けを認めたって
分かってるだろっ?
え? 何か言った?
もっと大声で
言ってくれないと
聞こえないんだけど?
はて?
そもそもドンガラ殿は
何か言ったのですか?
さ、さぁ?
私、知ーらなーいっ♪
えとえとぉ、
ドンガラさんは――。
サララが何かを言おうとした時、
すかさずソニアさんがポケットの中から
何かを取り出した。
それをサララの目の前に出す。
サララ、
アメちゃんあげるから
舐めてなさーい。
コンブやエイヒレ、
鮭とばもあるわよ?
うわっ!
ありがとですー!
じゃ、鮭とばを!
もぐもぐ……。
サララはソニアさんから
『鮭とば』を受け取ると
それを口に入れて食べ始めた。
あれは適度な硬さがあるから
しばらく噛み続けないと飲み込めない。
噛めば噛むほど味が出て
美味しさを感じられるけどね。
――っていうか、
ソニアさんはなんでそんなものを
携帯してるんだろう?
それどころかお酒も持ってそうだ。
……うん、それはツッコミを入れちゃ
いけないところだね、きっと。
じっくり味わってね。
しばらく喋らなくて
いいから。
もぐもぐ……。
さすがソニアさん。
くっ、汚ねぇ……。
僕たちの反応を見て
歯ぎしりをするドンガラさん。
なんというか……ご愁傷様です……。
次回へ続く!