シンディさんは物理攻撃を
ほぼ無効化する防御魔法を使って
ドンガラさんの攻撃を受け流していた。

あとは魔法による攻撃で無双すれば
勝ちは確実――と、みんなは言ってる。




でもそれだとドンガラさんの
機嫌を損ねる勝ち方にしか
ならないと思うんだよね……。

果たしてシンディさんは
次にどんな一手を打つんだろう?
 
 

ドンガラ

ちくしょう!
俺の攻撃が
全く通用しねぇ!

シンディ

ふふ、そういう
魔法だもの。
魔法による攻撃なら
ダメージを
与えられるわよ?

ドンガラ

それは俺が魔法を
使えねぇのを分かってて
言ってるのか?
バカにしやがって!

シンディ

あら?
魔法が使えないの?
それは初耳ね。
悪気はなかったの、
許してちょうだい。

ドンガラ

……待てよ、
そうか魔法攻撃なら
通用するのか。
だったら俺の奥の手だ!

 
 
ドンガラさんはニタリと笑うと、
シンディさんと間合いを取り
大きく息を吸い込んだ。

心なしか周囲の水が振動し、
ひんやりとしたような気がする。
 
 

ドンガラ

食らえやっ!

 
 
 
 
 

 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そう叫ぶと、
ドンガラさんは口から何かを吐き出した。


周囲の水を巻き込みながら
空間に白い煙のようなものをたて、
シンディさんへ真っ直ぐに向かっていく。

煙の中にある細かな粒が
光を反射して輝いている。
 
 

トーヤ

あれは氷のブレス!?

ビセット

中位くらいの
氷系魔法に相当する威力が
ありそうですねぇ。

ソニア

でもね……。

 
 
ソニアさんはにべもない感じに呟いた。
まるで無駄だとでも言いたげなような。

つまりこれは脅威には
ならないってこと?



事実、ブレスが収まったそこには
無傷のままのシンディさんが
佇んでいたのだった。
 
 

ドンガラ

なっ!?

シンディ

魔法攻撃以外は
通用しないって
理解できなかったの?

 
 
 
 
 

トーヤ

あのっ、ブレスも
魔法のようなもの
ですよね? それでも
通じないんですか?

ソニア

えぇ、
似て非なるものだから。
発現の理が違うのよ。

ソニア

ブレスは魔法に似ていても
厳密には物理攻撃の一種。
つまりダメージは
与えられない。

ソニア

魔法は魔法、
物理は物理。
融通が利かないのよね。
誰かの性格にそっくり。

トーヤ

ははは……。

 
 
それはドンガラさんのことを
指しているのかな?
まさか僕のことじゃないよね?

むしろそれはソニアさん自身の方が――。
 
 

ソニア

トーヤ、
またまた失礼なことを
考えてない?

トーヤ

考えてませんよっ!

ソニア

ホントかなぁ?
言っておくけど、
私だってそのうち
本気で怒るかもよ?

トーヤ

う……。

ソニア

ま、抱きつかせてくれたら
チャラにしてあげても
いいけど?

トーヤ

えっと……。

 
 
抱きつかせるくらいで
命の危機が去るんだったら
それはそれでいいのかも。

ちょっと我慢すれば済むんだし。


するとその時、
カレンが間に割って入ってくる。
 
 

カレン

トーヤにセクハラは
やめてください!

 
 
 

ソニア

あらっ?
カレンに怒られちゃった♪
冗談よぉ。
私がトーヤに危害を
加えるわけないじゃーん。

カレン

まったく……。
油断も隙もないんだから。

カレン

トーヤも『イヤだ』って
即答しないとダメよ?

トーヤ

てはは……。

 
 
でも別に抱きつかれるのが
イヤってわけではないんだけどね。

ソニアさん、肌が綺麗で柔らかいし、
いい匂いがするし。
なんというか心も体も温かい。



まぁ、カレンの怒りが爆発しちゃうから
そんなことは
口が裂けても言えないけどね。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第350幕 ドンガラの奥の手

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