ドンガラさんはその巨体からは
想像もつかないようなスピードで
シンディさんへ突進していった。

あんな勢いで体当たりを食らえば即死だ。
でもシンディさんに避ける素振りはない。
 
 

トーヤ

……ん?

 
 
シンディさんは棒立ちになっているけど
わずかに手振りで何かの印を
結んでいるみたいだった。

つまり何かの魔法を
使おうとしているんだろう。

そうだ、きっとそうだ。
だって表情には余裕が見られるもん。
 
 

シンディ

……フフ。

ドンガラ

死ねゃ、ゴルァ~!

 
 
 
 
 

 
 
 

 
 
ドンガラさんの全速力での体当たりが
シンディさんにヒットした。

その勢いと激しさに
辺りの砂が舞い上がり
煙幕のようになって
僕たちの視界が閉ざされる。






ど、どうなったんだッ?

やがて砂は沈静化してきて
再び視界がクリアになっていく。

そしてそこに広がっていたのは
驚くべき光景だった。
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

シンディ

……何かした?

ドンガラ

なっ!?
かすり傷ひとつ
ついてねぇ……。

 
 
ニヤリと微笑むシンディさんと
目を丸くして怯んでいるドンガラさん。

まるで攻撃した側とされた側が
逆だったみたいな反応だ。



でもこれはどういうことなんだろう?

僕が戸惑っていると、
ほかのみんなは
何が起きたのか理解しているような顔で
口を開く。
 
 

カレン

あれは防御魔法!

ソニア

へぇ、シンディ、
大きな口を叩くだけは
あるじゃない。

サララ

しかもあれは
衝撃を無効化する
高等防御魔法ですねぇ。

 
 
よく見てみると、
確かにシンディさんの全身を覆うように
淡い緑色の光が灯っている。

あれが防御魔法か……。
結界魔法とも少し違うんだね。
 
 

トーヤ

あの……
シンディさんは
ダメージを受けて
いないんでしょうか?

ソニア

見た感じ、
ミューリエやノーサス
くらいの攻撃力がないと
ダメージを与えられ
ないんじゃない?

トーヤ

そんなにですかっ!?

 
 
もしそれが本当だとしたら
ほぼ完璧に攻撃を
無力化していることになる。

だってそのふたりは魔界の中でも
トップクラスの攻撃力を持っているから。
どちらも元・魔王だもんね。



あれはそんなに強力な魔法
だったのか……。
 
 

ビセット

ただし、あの防御魔法は
魔法による攻撃を
全く防げませんけどね。

ビセット

それと防御魔法を
行使している間は
自分も物理攻撃が
出来なくなります。

ソニア

防御魔法をかけて
相手に体当たりするとか
相手の自滅を待つなどの
戦略は使えないってことね。

トーヤ

そうなんですかぁ。

ビセット

まぁ、問題ないでしょう。
ドンガラ殿には
魔法力を感じないので
おそらく物理攻撃しか
してこないでしょうし。
いい判断です。

ソニア

あとはシンディが
ドンガラに魔法攻撃すれば
無双して終わり
ってことね。

 
 
なるほど、そういう戦略なのか。

これは力の弱い魔術師が
屈強な戦士と戦うという場合には
有効な戦い方だなぁ。

あ、でも……。
 
 

トーヤ

でもそれだと
ドンガラさんの機嫌が
悪くなるだけじゃ
ないですか?

カレン

そうよね。
シンディさんはそのことを
指摘してたわけだから
ほかに何か意図が
ありそうよね。

ビセット

いずれにしても
さすがに現時点では
何を考えているのか
分かりませんねぇ。

ソニア

次にシンディが
どんな一手を打つのか、
見守りましょう。
それで分かるんじゃない?

トーヤ

えぇ……。

 
 
さて、シンディさんはこのあと
ドンガラさんに対してどんな攻撃を
仕掛けるのか。

僕たちは固唾を呑んで見守る……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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