ドンガラさんとの勝負は
僕たちに分の悪いものだった。

勝ったあとのことも色々と考えて
戦わなければならないからだ。
 
 

シンディ

そうなるとどうしても
こちらは全力で
戦えないわよね。

カレン

一方、ドンガラさんは
遠慮なく全力で
戦ってくる。
確かに不利ですね。

トーヤ

でもソニアさんなら
手を抜いても
楽に勝てるんじゃ
ないですか?

 
 
いくらハンデがあっても
ソニアさんの実力なら
そうそう負けないはずだ。

ただ、そんな僕の意見など
想定済みだとでも言わんばかりに
シンディさんは静かに言い放つ。
 
 

シンディ

……ドンガラの
プライドはボロ雑巾に
なるかもね。

シンディ

自分から勝負を
仕掛けておいて
大負けしたんじゃ
面子も丸つぶれ。

トーヤ

…………。

 
 
僕はぐうの音も出ない。
もはや八方ふさがりだ。

どうすれば
ベストな形で勝てるんだろう?
 
 

ソニア

しょうがない。
力は互角って感じで
演技して
戦ってあげるわよ。

ソニア

――と思ったけど、
メンドくなってきた。

トーヤ

……え?

ソニア

もう、洗脳とか
無理矢理に
従わせちゃいましょうよ。

トーヤ

だ、だめですよ……。

 
 
でも最終的にはそういう判断も
必要になっちゃうのかな……。

全く気は進まないけど。



と、僕が葛藤していると
シンディさんはフッと頬を緩めて
大きく息をつく。
 
 

シンディ

ソニア、
少しは反省してね。
今回は私がなんとか
してみるから。

ソニア

えっ?

トーヤ

シンディさんがっ?

シンディ

……なに? 不服なの?

トーヤ

い、いえ……。
シンディさんには
バトルするって印象が
ないものですから。

シンディ

これでもライカよりは
戦闘の実力が上だと
思うんだけど?

トーヤ

ライカさんよりもっ!?

 
 
ライカさんは光系の魔法を中心に使える
かなりの実力者だった。
当時のメンバーの中では間違いなく主力。

その彼女よりも強いのなら心強い。
 
 

シンディ

まぁ、見てなさい。
みんな、今回は私が
代表として戦うってことで
いいわよね?

 
 
僕たちは一様に首を縦に振った。

ソニアさんだけは
不服そうな顔をしていたけど
最終的には納得したみたい。



ま、彼女の場合は単に
遊び相手を取られたって感じだろうけど。

こうして僕たちの代表として
戦うことになったシンディさんが
ドンガラさんの前へと歩み出た。
 
 

シンディ

お待たせしたわね。
私が戦うわ。

ドンガラ

へぇ、ねぇちゃんが?
俺は構わないが
痛い目を見ても
文句を言うなよ?

シンディ

そのセリフ、
そっくりそのまま
お返しするわ。

 
 
不敵な笑みを浮かべるシンディさん。

これは戦闘の実力が云々
ということよりも
何か考えがあるというような雰囲気だ。



僕としては全てを含めて、
今後の参考にさせてもらおう。

シンディさんが戦う姿を見るのは
初めてだから、
戦い方や思考パターンを
頭に焼き付けておかないとね。
 
 

ビセット

では、勝負を
始めてください。

 
 
そのビセットさんの掛け声と同時に
ドンガラさんが動いた。

彼は想定していた以上にすばやい動きで
シンディさんに突進していく。
 
 
 
 
 
 
 
 

  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
――速いっ!

力強い尾びれの動きは
僕の目では捉えきれないほど
激しいピッチ。
強く空中――じゃなくて、
水をかいて推進力へと変えている。


異世界からやってきた僕たちの目には
空を飛んでいるように見えるけど。
 
 

ドンガラ

おっしゃあ!
タマ(命)取ったるぅ!

 
 
ドンガラさんは瞬時に間合いを詰め、
その尖った頭を
シンディさんの華奢な体へ
衝突させようとしている。


まずい、あんな勢いでぶつけられたら
シンディさんの全身の骨は
粉々に砕けてしまう。



そうなったら……おそらく即死……。



でもシンディさんには避ける素振りはなく
その場に棒立ちとなっている。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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