アーゴの集落をあとにした僕たちは
そこからさらに進んだ先にある
岩山へとやってきた。
はぐれアーゴのドンガラさんは
ここにひとりで住んでいるらしい。
ほかにもアーゴの特徴や色々な情報を
エグゾセさんに教えてもらったから
目の前に現れれば
見間違えることはないと思う。
アーゴの集落をあとにした僕たちは
そこからさらに進んだ先にある
岩山へとやってきた。
はぐれアーゴのドンガラさんは
ここにひとりで住んでいるらしい。
ほかにもアーゴの特徴や色々な情報を
エグゾセさんに教えてもらったから
目の前に現れれば
見間違えることはないと思う。
さて、ドンガラさんは
どの辺にいるのかな?
すぐに
見つかるんじゃない?
エグゾセさんの話だと
体長10メートルくらい
あるらしいから。
でも食事に
出かけていたら
戻ってくるまで
待っていないと
いけませんよね。
みんなの心配は
いらないみたいよ。
ほら、あそこ。
シンディさんが指差した先――
小屋くらいの大岩の向こう側には
そこからはみ出す大きさの巨体が
寝転がっていた。
見た目は単なる大きな魚だけど、
特徴的なのは背中に付いている翼だ。
半透明で膜状の翼が折りたたまれていて
広げたら体長を超えそうなくらいの
大きさだ。
流線型の体やしなやかで屈強なその翼は
確かに速く泳げそうな感じがする。
あのぉ、すみません。
んあ?
ドンガラさんですよね?
エグゾセさんから
話を聞いて
やってきたのですが。
僕は旅をしている
トーヤと申します。
続けて僕はみんなのことも
簡単に紹介した。
相手が誰だか分からないと
どうしても身構えちゃうもんね。
ただ、旅の目的とか
どこからやってきたのかとか
そういうことは伏せたままにしている。
突飛で信じてもらえないかもだし、
あらぬ不安を与えてしまうかも
しれないからね。
ふーん、
どうやら怪しい輩って
ワケではなさそうだな。
見た瞬間は
旅芸人一座かと思ったぜ。
女形俳優に
ツンデレ女優、
高飛車ワガママ女優、
インテリ高慢女優、
ロリ天然女優、
下働き兼ショタ俳優。
…………。
誰がツンデレよっ!
この魚類、
ぶん殴っていい?
まぁまぁ……。
まったく、
問題を増やさないでほしいなぁ。
僕としては普段から苦労が絶え――
と、みんなに対して
失礼なことを
考えてしまった……。
イカじゃないが、
いかにも俺が
アーゴのドンガラだ。
…………。
ぷっ……
あははははっ!
面白いですねぇ!
おっ、このギャグが
分かるなんてお嬢ちゃんは
センスあるねぇ。
いえいえ~。
で、俺に何の用なんだ?
手短に頼むぜ。
実は――。
僕は北へ行きたいということや
背に乗せてほしいということなどを
ドンガラさんに伝えた。
すでに集落のアーゴたちが
旅立ってしまって
ほかに頼れる人がいないということなど
僕たちが置かれている状況も話した。
情に厚い性格ということは
聞いているので
困っていると知ったら
助けてくれるかもしれないから。
そして僕の説明を聞いたドンガラさんは
目を瞑りながら静かに頷く。
ふーん、
そういうことか。
俺に乗って北へねぇ。
お願い出来ませんか?
――お断りだね。
どこの馬の骨とも
分からない連中を
背中に乗せるなんて。
でもでもぉ、
私たちはさっき
知り合い同士に
なりましたよぉ?
その程度の縁じゃ
乗せるまでには
心が動かねぇな。
背中に乗せるってのは
命を預けるに等しいんだ。
今の段階じゃ
あんたら全員を
そこまで信用できねぇな。
そっか、確かに考えて見れば
背中は無防備状態だもんね。
何かをされそうになっても見えづらいし。
では、おカネを払って
ドンガラ殿を
雇わせていただく
というのはいかがです?
バカヤロー!
俺はカネじゃ動かねー!
そういう無粋なことは
でーっきれぇだ!
どんだけカネを積まれても
お断りだぜ!
逆に言えば、もし乗せるなら
カネなんかとらねぇよ!
メンド臭いヤツね。
うるせー! それに
あんたらの目的が曖昧だ。
単なる旅なら
歩いていけば
いいじゃねーか。
そ、それは……。
どうやら僕たちはドンガラさんを
完全に怒らせてしまったようだ。
逆鱗に触れたという感じ。
ソニアさんも火に油を注ぐようなことを
言っちゃって……。
言えねぇ事情が
あるのかもしれねぇが、
それを話せねぇってことは
俺を信用してない
ってことだ。
なおさらあんたらを
乗せられねーな。
痛いところを
突きますねぇ……。
そんなに急いでいるなら
魔法を使うなり
アーゴ以外に頼むなり
すればいい。
…………。
僕は頭の中が真っ白になって
言葉を失ってしまった。
これからどうすればいいのか、
何も考えつかなくて呆然としてしまう。
やっぱり地道に歩いていくしか
ないのかな……。
どれくらい時間がかかるか
分からないけど。
――が、俺も鬼じゃねぇ。
情けくらいはある。
え?
そうだな、
俺とサシで戦って
勝てたら乗せてやるよ。
ほ、本当ですかっ!?
ただし、一発勝負だ。
あんたらの中から
俺と戦うヤツを選びな。
そしてもし俺が勝ったら
キッパリ諦めな。
相手が負けを認めるか
戦闘不能になったら
勝負ありだ。
死んでも文句言うなよ?
やむを得ないわね。
――っていうか、
むしろ好都合っ♪
私が負けるわけないもん。
じゃ、この勝負、
受けるんだな?
モチのロンよ~!
あっ!
よし、決まりだ。
俺と戦うヤツを
相談して決めな!
なぜかビセットさんが
不意に焦ったような声をあげたけど、
話はソニアさんと
ドンガラさんの間で進み
勝負する流れとなってしまっていた。
何か気がかりなことでもあるのかな?
次回へ続く!