集落以外の場所にいるアーゴについて、
エグゾセさんには
心当たりがあるようだった。
もっとも、何か事情がありそうな
雰囲気だけど。
集落以外の場所にいるアーゴについて、
エグゾセさんには
心当たりがあるようだった。
もっとも、何か事情がありそうな
雰囲気だけど。
教えてください、
エグゾセさん。
お願いします。
僕たちは何としても
急いで北へ向かわなければならない。
多少の障害があったとしても
それを乗り越えて。
僕は真っ直ぐにエグゾセさんを見つめる。
すると彼は小さく息をついてから
重い口を開く。
確かにまだ北へ
旅立っていないであろう
アーゴに
心当たりはあります。
それは?
はぐれアーゴの
ドンガラです。
彼は近くの岩山に
ひとりで住んでいます。
でも管理人さんの
その反応だと
ドンガラに何か問題が
あるんですよね?
僕の問いかけに
エグゾセさんは静かに首を縦に振った。
ご明察です。
彼は群れることを好まず
しかも乱暴者。
さらに頑固で偏屈です。
タック殿のような
かたなんですねぇ。
タックさんは
そんな人じゃ
ないですよ……。
彼には義理堅い面も
あるにはあるんですが
余程気に入られないと
乗せてくれない
でしょうね。
ちなみにですけど
なんでドンガラさんは
旅立ってないんです?
ほかのアーゴが
旅立ったあとなら
この付近のエサを
独占できますからね。
でもそれなら
さっさと旅立った方が
北にあるエサを
選び放題、食べ放題
なんじゃないですか?
確かにサララの言う通りだ。
今までみんながここにいたわけだから
この周辺のエサを独占できるにしても
絶対数は限られる。
それならエサが豊富にある場所へ
移動した方がいいよなぁ。
単独で居ると天敵に襲われる
危険性だって高まるわけだし。
ドンガラは
アーゴの中でも最速の
スピードを誇ります。
最後まで留まっていても
ほかのアーゴを追い抜いて
北の土地へ
先行できるのですよ。
そのギリギリの
タイミングまで
残っているというわけですか。
なるほど、この地の
エサを独占した上、
北でも先にエサに
ありつけるわけね。
スピードは武器ですね。
でもこれは私たちにとって
好都合じゃないですか。
ドンガラさんに
乗せてもらえれば
早く北へ行けますし。
乗せてもらえるかが
問題だけどね。
シンディさんの言葉に
サララは呆然とする。
そうなんだよなぁ。
どれだけ早く移動できるとしても
僕たちを乗せてくれなかったら
意味がないんだよねぇ。
大丈夫よ。
万が一の時は
力尽くで従わせれば
いいんだから。
ソニアさん……。
それは無理でしょう。
ドンガラの性格を考えると
気に食わない者を
乗せるくらいなら
死を選ぶでしょうね。
別に腕力による
脅しじゃなくても
従わせる方法なら
いくらでもあるわよ?
魔法、薬物、呪い、
催眠、洗脳、拷問、
アンデッド化、改造、
ほかにも色々。
…………。
その場の空気が凍り付いた。
――怖いよ、ソニアさん。
真顔でしれっと言うからなおさらだし。
ほらほらぁ、みんな黙っちゃったよ……。
い、いずれにしても
ドンガラ殿に会って
みませんか?
そうですよね。
話をしてみて
考えましょう。
分かりました。
ではドンガラの住み処を
お教えします。
くれぐれも
お気を付けて。
こうして僕たちは
ドンガラさんのところへ
行ってみることにした。
ドンガラさんと平和的に話が付いたら
いいんだけどな。
さすがにソニアさんに任せるのは
避けたいもんなぁ……。
次回へ続く!