ここから少し行った所に洞穴の入り口があるわ。

操は洞穴があると思われる方向を指差し、説明し始める。

もう日が落ちそうだけど、中は真っ暗でまともに見えないから気を付けなさい。
常に光力を使うわけにはいかないでしょ。

ああ。

なら、さっさと行くことね。
蛇とかも出るから。

お、脅かすなよ!!

けっこう臆病ね。

うるせぇ!!

じゃあ、もう行くよ。
ありがとう!!

敬介は操に手を振り、洞穴のある方向へ走って行った。

前にも思ったけど、驚いた時のアホ面、昔のカラウそっくりね。

頼まれた通り助言はしたけど、あの子なら色々と大丈夫そうね。

敬介の姿が遠くに行くのを見送ると、操は再び光力の球体に姿を変え、森の奥へと消え去った。

矢島と刑事の島本は、沼の下にある洞穴内にいた。

そこには影力でできた檻があり、その中へ閉じ込められている。

うっ!

矢島君、すまない。
俺が一緒に来たばっかりに。

気にしないでください。

責任を感じる島本に対し、矢島は傷だらけの身体を庇うように座っている。

島本は岩壁に背中を付けて立っており、再度頭を下げた。

少し考えたが、あいつ人間だよな?
正直、人間とは思えない禍々しさを感じちまった。

僕もです。
信じたくないが、もしかすると奴は……。

光術士ってことか。

島本の得た情報もあり、矢島と一緒に愁いの沼へとやってきたのだが、目的の緑色の髪の男と接触した後に、返り討ちにあってしまったのだ。

え?

奴が何かした時に、一瞬だけ君達が使う力と同じ様なものを感じたんだ。
気のせいだと思うが。

島本さん。
もしかして、光力が見えてるんですか?

いや。
なんとなく、悪寒のような異変があってな。

そうですか。
もし、何か異変を感じたら教えてください。

わかった。

ここか?

敬介は、洞穴の入り口と思われる箇所へ到着していた。

そこは大きな大木の根が地面にも出ており、その隙間に地下へと繋がっているような入り口が見える。

美咲と大宮にも連絡しようとスマホを見るが、やはり圏外であった。

残念そうな表情で洞穴の入り口を見つめる。

ダメかぁ……。

このまま、2人と合流してたら、時間が経ち過ぎちまう。
でも、この急な坂を見ると、一度入ったら出られなさそうだからな……。

このまま一人で行くのは危険だが、一刻も早く矢島と島本を救出したい心境であった。

ただ、闇雲な判断は命取りになると判断し、一度引き返すことにした。

よし!
急いで2人と合流して、ここへ戻ろう。

うわぁぁぁ!!

突然現れた蛇に驚いた敬介は、後ろに倒れ込んでしまい、そのまま入り口と思われる場所へ転げ落ちていった。

第4章--愁いの沼編--(101話)-沼の洞穴へ-

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