ふふふ。

ダメだ。
2度も気絶するわけにはいかない。

宙に浮いているその不気味な女性は、小さく笑いながら敬介を見下ろしている。

ここでビビったらダメだ。
逆によく見てやる。

呪ってやる。

恐怖心を取り払うため、その女性を凝視する。

すると、何かに気付いた。

ん?

あらら。

その女性からは、かすかに光力が漏れていた。

まさか……、人間か?
嘆きの巫女じゃない?

よく分かったわね。
嘆きの巫女?
なんのこと?

ふぅ~。

幽霊にしか思えなかったのだが、目の前にいるのが人間だと分かりホッとした。

人間なのか……。
なんで、そんな紛らわしい格好で驚かせてきたんだよ。

紛らわしい?
何を言ってるの?

ん?
いや、その格好だと幽霊みたいじゃん。

私は幽霊よ。
もう死んでるから。

そうか、幽霊か。
なら、おかしくないな。

え?

女性は、驚く敬介を気にせず話し始める。

生きていた時程じゃないけど、多少の光力が使えるわ。

頭がぐちゃぐちゃになってきた。
幽霊なのに、なんでこんなことを?
そんな奴に会ったことも聞いたこともない。

あなたを少し試そうと思っただけよ。
それに、会ったことあるじゃない。
この姿じゃないけど。

会ったことがあると告げた直後、光力で体が包まれ始め、白く輝く球体に変わった。

その球体はユラユラと動き、敬介の背後の木の枝にいたカラスの体に入り込んだ。

カラスに吸い込まれた?

そのカラスは翼を広げると、敬介の顔の前あたりまで飛んできた。

認証試練の招待状について、忠告したじゃない。

あの時のしゃべるカラス!!

やっと思い出した?
私は、自身を光力に変化させて、別の対象の身体を操ることができるの……。

私は操(みさお)。
カラウから聞いてない?

初耳だよ!
それに、おっさんのこと知ってるのか?

その様子じゃ、きちんと話してないようね。
まぁ、詳しくはカラウに聞いてちょうだい。

なんかよく分かんねぇな。

操がカラウとの関係をはっきりと説明しないのと、この状況がよく分からなかった。

それより、ここへは仲間を助けに来たんでしょ?

そうだ!!
金髪の男性と中年の髭を生やしたおじさんを見なかった?

見たわ。
沼の下に続く洞穴に入って行ったわよ。

洞穴?

第4章--愁いの沼編--(100話)-不気味な森②-

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