アーゴの集落へ向かって進んでいくと
やがて僕たちの目の前に
複数のテントや牧場の柵のような
人工物が遠くに見えるようになってくる。
どうやらもうすぐ目的地に
到着するようだ。
アーゴの集落へ向かって進んでいくと
やがて僕たちの目の前に
複数のテントや牧場の柵のような
人工物が遠くに見えるようになってくる。
どうやらもうすぐ目的地に
到着するようだ。
やっと着いたみたいね。
ですね。でもやっぱり
誰もいませんね。
いえ、そうでも
ないようですよ。
わずかですが
気配がしますので。
そうなんですか?
僕には全く分からないけど、
ビセットさんは
武術の心得がある人だから
そういうのを感じ取るのが得意なのかも。
――あ!
そういえば、アーゴではない種族の
管理人さんみたいな人が居るって
商人ギルドの受付さんが
言ってたっけ。
その人の気配なのかな?
こちらです。
ついてきてください。
そうしましょう。
何かあった時は
ビセットを盾にすれば
いいわけだから。
……さすがに
怒りますよ?
まぁまぁ……。
やれやれ、先が思いやられるなぁ。
でも一方で、
僕もこのやり取りに
少しずつ慣れてきたような気もする。
そういえば、ティアナさんの時も
最初は戸惑ったけど、
いつの間にか
ほとんど気にならなくなってたなぁ。
うーん、慣れって怖い。
その後、
僕たちは集落の中を進んでいって
一軒の家へと辿り着いた。
周りにある簡素な建造物と比べると
ここだけはしっかりとした作りに
なってるなぁ。
ということは、
一年を通じてここに暮らしているという
管理人さんが住んでいる家なのかな?
この家ですね。
ではでは、
訪ねてみましょう。
あっ――。
僕が制止する間もなく、
サララはドアを叩いてしまった。
まだ中にいるのが
誰かなのも分からないし、
もう少し慎重に行動しないと
まずい気がするんだけどなぁ。
――今さら遅いけど。
こんにちはぁ!
はーい。
お!
サララが声をかけると、
すぐに中から誰かの返事がした。
そしてドアを開けて出てくる。
どちら様でしょうか?
僕はトーヤと申します。
旅をしている者です。
実はお訊ねしたいことが
ありまして。
アビーの町の
商人ギルドで
アーゴの集落について
聞いてきたんです。
そうしたらここには
管理人さんのような方が
一年を通じて
いらっしゃるとのことで。
そうでしたか。
立ち話もなんですから
中へどうぞ。
僕たちは家の中へ通され、
家主のエグゾセさんに
話を聞いてもらえることになった。
エグゾセさんはやはり
この集落の管理人をしているらしい。
――というわけなんです。
僕はここに来た経緯を
エグゾセさんに説明した。
そして出されたお茶を一口すする。
ちなみにテーブルの上には
ビセットさんが持ってきた手土産の
お菓子が一緒に出されている。
サララやソニアさんは
あっという間に食べちゃって
すでにお皿がカラになっているけど……。
ギルドの方が
おっしゃったように
確かにアーゴの皆様は
すでに北へ旅立って
しまっていますね。
それは全員ですか?
はい、ここの集落で
暮らしている者は
全員です。
そんな……。
あと一週間ほど早く
いらっしゃれば
最後の一団の旅立ちに
間に合ったのですが。
そっか、本当にタッチの差だったんだな。
どうしようもないことだけど。
そうなると別の移動手段を
考えるしかないのかなぁ。
本当に誰も
いないんですか?
近くに住んでいる
アーゴに心当たりとか
ありませんか?
……っ……。
ん?
今の反応は……?
別の集落とか
ないんですか?
隣のアーゴの集落は
ここから歩いて
数日かかる距離ですし
そちらもこの集落と
同じ状況だと思いますよ。
すでに旅立ったあと
ということですか。
あの、エグゾセさん。
なんでしょう?
アーゴの集落ではなくて
近くの町とか
そういう場所に
住んでいるアーゴに
心当たりはありませんか?
そ……それは……。
急にエグゾセさんの表情が曇った。
やはりさっきの反応は
まだ旅立っていないアーゴに
心当たりがあるからだったんだ。
ただ、それをすぐに言えないような、
何か事情がありそうな感じでは
あるみたいだけど……。
次回へ続く!