シンディさんはビセットさんのことを
このメンバーの中で
最も警戒すべき相手だって言ってるけど
果たしてそうなのかなぁ?

僕にはそうは思えない。

そしてさらにシンディさんは
ソニアさんにも厳しい視線を向ける。
 
 

シンディ

ま、警戒していても
万が一の時は私なんか
一瞬で殺される
でしょうけどね。

ソニア

ふーん、
さすがシンディ。
それだけの実力差が
あるってことは
分かってるんだ?

シンディ

嫌な物言いね。
事実ではあるんだけど。
ま、とはいえソニアは
いきなり私たちに
危害を加えることは
ないでしょう。

シンディ

だからビセットと比べて
警戒度が低いわけだけど。

ソニア

そかそか~。

 
 
なぜか上機嫌なソニアさん。

酷いことを言われているようにも
聞こえるのに
どうして楽しげなのか、
僕にはその感覚が理解できないなぁ……。
 
 

シンディ

ビセットはいきなり
私たちを
裏切りかねないからね。

ビセット

おやおや……。
そんなことしませんよ。

シンディ

どうかしら?

トーヤ

大丈夫ですよ。
僕とアレスくんは
友達ですから。

シンディ

トーヤ……。

ビセット

…………。

トーヤ

アレスくんが僕に
酷いことはしないだろうし
もしそんなことになったら
その時は僕がアレスくんを
説得したり止めたり
してみせます。

トーヤ

ソニアさんだって絶対に
悪人じゃないですよ。
いつも僕たちのことを
考えてくれてるし。

ソニア

きゃーん♪
トーヤ、かわいー!
うん、大丈夫だよぉ。
こんな可愛い子に
酷いことなんて
しないからっ♪

 
 
ソニアさんは急に抱きついてきて
僕の頭に頬ずりしている。
そしてそれを羨ましそうに
眺めているビセットさん。

――もちろん、僕に対して
羨ましがっているのではなくて、
ソニアさんに対してだろうな。

彼はきっと僕に抱きつきたいって
思っているに違いない。
 
 

トーヤ

うぅ……。
それを考えたら
寒気がしてきた。
ソニアさんに抱きつかれて
暖かいはずなのに。

 
 
もしかしたらこのふたり、
性格が似通っているのかも。

シンディさんが危惧しているのとは
別の方向性で……。
 
 

カレン

ちょっとソニアさん!
あんまりトーヤに
くっつかないでください!

ビセット

そうですよっ!
どさくさに紛れて
ズルイですよっ!

シンディ

あんたたちねぇ……。

サララ

あはは、みんな
仲良しさんですね。

シンディ

でもこのメンバーは
意外にバランスが
とれているのかもね。

 
 
さっきまでとは一転して
シンディさんの表情には
柔らかさが戻っていた。

まるで幼い弟や妹たちを見守る
お姉さんのような。

ギスギスとした空気や
緊張感みたいなものは感じられない。
 
 

トーヤ

っ?
どういうことですか?

シンディ

私やビセット、
ソニア、そしてカレンは
色々と考えすぎる
タイプだから。
それにどこか
冷めてる面があるのよ。

シンディ

一方、純粋で熱いトーヤと
天然なサララ。
場が和むというか
時として行動を起こさせる
原動力にもなるというか。

シンディ

メンバー編成としては
絶妙でしょ?

サララ

わーい、褒められたっ!

トーヤ

ほ、褒めてないと
思うけど……。

シンディ

ほらね?

ビセット

確かにそうですねぇ。
損得よりも
想いで動くという点で
トーヤ殿とアレス様は
似ていると思います。

カレン

そうかもですね。

ソニア

シンディも少しは
トーヤを見習ったら?

シンディ

その言葉、
そっくりそのまま
お返ししますっ♪

ソニア

あらっ?
お返しされてばかりね。
たまには気持ちを
自分の言葉で言ったら?

ソニア

それにヘラヘラして、
そういう
嫌みったらしい顔に
なっちゃうよ?

ソニア

あはははっ♪

シンディ

うふふっ♪

 
 
 

 
 
 
なんだろう、このピリピリとした空気。
笑っているのに笑ってない感じ。

ソニアさんとシンディさん、
ぶつけ合う視線から
明らかに火花が散ってるよ……。


せっかく和やかな雰囲気になって
安心してたのになぁ……。
 
 

トーヤ

と、とにかく今は
アーゴの集落へ
急ぎましょう。

 
 
僕は強引に話を切り替え、
アーゴの集落へ向かって
ひたすら先頭を歩いていくのだった。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第343幕 パーティのバランス

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