認証試練を終え、正式な光術士として認められた敬介、美咲、大宮の3人は「愁いの沼」へと訪れていた。

試練は六門の一つである「夕暮れ灯台」にて行われたが、そことは違う異様さがあることを3人は感じている。

ここへ来た理由は、仲間である矢島と協力者である刑事の島本が、この場所で人間に襲われたとカラウから聞いたためだ。

3人は何か手がかりがないか、到着後すぐに周辺の調査を始めていた。

湿気も交じってるし、日の光も入ったり入らなかったり、異様な雰囲気だな。

じめっとして気持ち悪いけど、なんか吸い込まれそうになる沼だね。

沼自体には、変わった様子はないな。
カエルもおとなしい。

おとなしいって。

敬介は、大宮が見ていたカエルの方へゆっくり近づく。

逃げた……。

敬介が手を伸ばすと、カエルは沼へ飛び込んだ。

2人とも、何やってるの?

少し遊んでいるように見えてしまった美咲は声をかける。

それを聞いて、敬介と大宮は再び辺りを探し始めた。

こんな時、修太の能力だったら、矢島さんの光力を感知しやすかったんじゃないか。

俺達にもある程度は見えてるが、奴ほど正確には見えていない。
こういう任務にはもってこいだろうな。

修太は、同じ認証試練に参加していた敬介と美咲の高校の後輩である1年生。

他者の光力の量の分析や捕縛等、第三試練での葉栗陽平の暴走を止めるのに貢献した。

色々話をしながら調査していると、道の先から老婆が歩いてきて、声をかけてきた。

珍しいねぇ。
こんなところに若い人が来るんなんて。
何か用事かい?

こんにちは。
ちょっと人を探していて。

ほぉ。
人探しかい。

はい。
おばあちゃんは、よくここに来るんですか?

そうだとも。
毎日のように、山菜を取りにきててな。

そしたら、昨日見慣れない2人組の男性がいませんでしたか?

昨日ねぇ……。
3人組の男達なら見かけたような。

3人組かぁ……。
その人達が何をしていたか分かりますか?

緑色の頭をした男が笑っていて、顎髭の男と金髪の男がひどく怒っていたねぇ。
その後、笑っていた男が突然走って向こうに行っちまった。
他の2人も、追っかけて行ったねぇ。

おばあさんは、緑色の頭をした男が走り去った方を指差した。

もしかしたら、私達の探してる人達かも。
おばあちゃん、色々ありがとう。

よしっ!
これで、手がかりゲットだな。

行ってみるか。

行ってはならん!!

うわっ!!

敬介は突然の老婆の大声に驚き、その場に尻餅をついてしまった。

え?

そっちには、この沼の守り神を祀った社がある。
そこには立ち入っちゃいかん。

どういうことだ?

消えてなくなってしまう。

消える?
何が?

人がじゃよ。

「嘆きの巫女」の神隠しじゃ。

第4章--愁いの沼編--(97話)-調査開始-

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