認証試練を終えてから一度家に帰った敬介と美咲は、少しだけ眠った後に、秋野実神社に来ていた。

やっぱり、ここに来ると落ち着くね。

そうだね。

雪先輩達は大丈夫かな?

仁からは、3人で蓮の家に行ってみるって連絡をもらったよ。
でも、友達が死ぬなんて考えられないな……。

2人は神社の中をぶらぶらしながら、認証試練の話をしていたのだが、それと同時にカラウを待っている。

仁たちは、敬介の話していた通り、蓮の家へと来ていた。

家の引き戸を叩くが、呼びかけても応答がない。

そして、庭に入り探索してみるも、家には誰一人として残っていない。

こりゃあ、どういうことだ!!

俺の目でも痕跡が見当たらないっす。

どうして、誰もいないの。

まるで、そこには最初から誰も住んでいなかったのかと思うくらいに、寂れているようにも見えたのだ。

おっさんいないな。

仁からカラウについて言われた、「シャドーを光術士にしようとした男」という言葉が引っ掛かっていた。

認証試練が終わったら、このことについて聞いてみようと思っていたのだ。

いないね。
光一さんも連絡が取れないし、何かあったのかな。

お前ら、認証試練は無事に終わったんだな。

敬介と美咲の様子から、認証試練で光術士として認められたことを、聞かずとも分かった。

いつも遅いんだよ!!

待て。
それは後だ。
今マズイことになっていてな。

マズイこと?

いつもならふざけて話すカラウだが、姿を見せて早々に神妙な面持ちで佇んでいる。

なんだよ。

矢島と刑事が、六門の一つである「愁いの沼(うれいのぬま)」に向かったが、何者かに捕まったようだ。

光一さんと島本さんが?

敬介はカラウへ駆け寄る。

捕まったってどういうことだよ。
シャドーか?

真夜中に、矢島から緊急事態をを知らせる光の矢が来ていたのだが、襲った奴の正体が人間のようなんだ。

人間って。
どうしてそんなことに。

それは分からん。
ただ、お前達には愁いの沼へ向かってもらう。
矢島と刑事を救出しろ。
光術士としての最初の仕事だ。

…………。

…………。

2人にとって矢島は、師匠であり、頼れる兄のような存在であった。

その矢島が、人間に捕まるなんてことは信じられない。

その思いから、すぐに言葉を返すことができなかった。

刑事である島本にも、かつて倒した三幻僧らの目的の調査を依頼していた。

志願してきたとはいえ、自分たちが巻き込んでしまったことに責任を感じてしまう。

頼むぞ。
敬介!
美咲!

分かった。
天野さん、準備して愁いの沼へ行こう。

うん。
大宮君にも協力してもらおう。

敬介は美咲の提案にうなずくと、スマホを取り出して剛へ電話をした。

剛もすぐに合流すると言って電話を切った。

ここは愁いの沼。

六門の一つであり、光術士にとっては重要な場所。

世間的には、不慮の事故が多発する場所として、心霊スポットとして認知されている。

やはり空気が重たいな、ここは。

うん。
体も重たく感じる。

それだけヤバい場所ってことなんだな。

敬介は右拳を強く握りしめ、矢島と島本の救出を誓う。

光術士としてだけじゃない。
仲間として2人を助けるぞ!!

ああ。

うん。

第3章--認証試練編-- END

第3章--認証試練編--(96話)-新たな光術士たちよ-

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